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» 2012年07月17日 19時54分 公開

レーザーを使う液晶テレビ、三菱「REAL LASERVUE」が描き出した「地獄門」の“総天然色”山本浩司の「アレを見るなら是非コレで!」(2/2 ページ)

[山本浩司,ITmedia]
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「地獄門〜デジタル復元版」の鮮やかな色彩

「地獄門〜デジタル復元版」は、4700円で販売中。発売/販売元は角川書店 (c)1953 角川映画

 とくにその色再現に興奮したのが、この春発売されたBlu-ray Disc「地獄門〜デジタル復元版」(角川書店)だった。これは1953年に公開された、大映初の総天然色映画のレストア(修復)版BD ROMである。初めてのイーストマン・カラー映画ということで当時の大映の意気込みもすごいものだったらしく、撮影前に監督とスタッフはアメリカに2カ月にも及ぶ技術研修を行なったという。この映画で色彩指導とクレジットされているのが、日本画家の大家である和田三造氏。彼の美学を全面的に押し出さし、日本の様式美、古色に徹底的にこだわった映画なのである。

 このBDのデジタル復元の過程も興味深い。この映画の撮影助手をされた森田富士郎カメラマンを色彩修復の監修者に迎え、現存する3色分解フィルムをデジタルデータ化、それぞれのレジストレーション調整を丹念に行い、1カットずつ当時の色彩を取り戻す作業に当たったのだという。

 本機LCD-55LSR3で観るこの映画BDの鮮やかな色彩は、息をのむほど美しい。とくに主演女優・京マチ子が着る着物のつややかさといったらない。紅色、緋色、あかね色など深い赤の違いを本機はみごとに描きわけ、間然するところがないのだ。他社の液晶テレビでは絶対に味わえない絢爛(けんらん)豪華な色彩が堪能できるのである。

 筆者は最近歌舞伎見物にハマって、平成中村座や新橋演舞場、明治座、京都南座などに出かけ、歌舞伎の舞台、衣裳の斬新な色彩設計に驚かされているところだが、この映画BDを観ると、そのむかし、世界でいちばん豊かな色彩感覚を持っていたのは日本人かもしれないなどと思う。

 再生時のポイントは、照度環境をほの暗く整え(50ルクスの間接照明が目安)、映像モードを「シネマ」に設定すること。そして「プロ調整」 内の「色補正」がデフォルトの「モード1」になっているかどうかを確認することだ。これはHDTVの国際標準規格BT.709で定められた色域を完全にカバーしながら、赤の再現範囲をより広げたモードで、スキントーンもみごとに整えられている印象だ。また、色温度設定もデフォルトの“赤味がかった白”=6500ケルビン相当になっているかどうかも確認しておきたい。

 ちなみに、本機のハイブリッド光源はサイドエッジ配置で、画面を16分割したローカルディミングと縦に8分割したエリアを順次点灯するバックライトスキャニングの手法が採られている。液晶テレビの弱点である暗所コントラストの向上と残像感の低減が図られているわけだ。

十数年ぶりのリアルな音

 それからもう1つ、本機をチェックして驚かされたのが、その音のよさ。この十数年、テレビは薄型化とともにスピーカーをないがしろにし、その音質は悪化の一途をたどってきたが、真っ当な帯域バランスを指向した本機の音に触れ、一陣の涼風に出会ったような、さわやかな気分を味わった。

NCVは、カーボンナノチューブに数種類の樹脂を配合した素材を振動板に使用する。チタンに匹敵する高速伝搬性と、紙と同程度の内部損失という“スピーカーの理想”に近い特性を持っている

 三菱電機は、われわれ40〜50歳台のオヤジ世代には馴染み深い「DIATONE」(ダイヤトーン)というスピーカー・ブランドを持っているが、その歴史と伝統が本機内蔵スピーカーに活かされている。使われているユニットの振動板は、独自開発のNCV(Nano Carbonized high Velocity)と呼ばれるもので、金属のチタンよりも硬くて軽く(=高域特性がよい)、紙よりも内部損失が大きい(=固有音が少ない)という理想的な素材が採用されている。その振動板を使った4センチ口径のフルレンジユニットがセンター用として4基、L/R用にそれぞれ2基使われ、6 ×12センチの楕円(だえん)形ウーファー×2基を組み合わせた2Wayシステムが構成され、画面下に配置されている。

 まずよいと思ったのは、声が飛び切り生々しいこと。映画でもニュース番組でも、画面下から声が聴こえる違和感こそあるが、その音色で、画面に映し出されている人物がしゃべっているというリアリティーを感じさせるのである。そんなテレビ、この十数年存在していなかったので、ただそれだけでちょっとした感動を味わった。

BDドライブは画面下。前向きに付いているところは使いやすい

 BDレコーダーを内蔵した本機は、とうぜん音楽CDの再生も可能だ。試しに何枚か再生してみたが、ユニット配置の問題もあってステレオの広がり感こそいまひとつながら、音楽的バランスを保った心地よい音を聴かせてくれることが分かった。これで指向性さえ改善できれば、このテレビをお茶の間のオーディオコンポとして機能させられるのではないか、とすら思った。

 チープでアグレッシブな本機のデザインは、インテリアにこだわったリビングルームに置くにはまったくもってふさわしくないが、コモディティ化した安物液晶テレビの弱点「色と音」に果敢に攻め込んだ三菱電機の意欲はおおいに買いたいと思う。ぜひこの路線を追求し、AVファン誰もがあこがれる高級テレビに育てていただきたいと切に願う。

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