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薄型テレビ購入ガイド、4K液晶とプラズマの“境界線”本田雅一のTV Style

» 2013年07月19日 19時38分 公開
[本田雅一,ITmedia]

 さて、先週のコラムから少しこぼれてしまった話題を継いでいくことにしよう。

 先に簡単におさらいをすると、4Kパネルを採用したテレビがシャープ、ソニー、東芝から登場し、それぞれに自社の超解像技術を駆使して従来よりも広いキャンバスに、フルHDよりも良い映像を描き始めたというのが、この夏の状況。もちろん、メーカーごとに異なる超解像技術、調整ポリシーで作られているので、映像品位のレベルは多様だ。

相次いで登場した4Kテレビ。左からソニー「KDL-65X9200A」、東芝「65Z8X」、シャープ「LC-70UD1」

 しかしメガトレンド、すなわち大まかなトレンドでみたときには、フルHDをフルHDで表示するのではなく、“フルHDを4Kで表示する方が美しくなる”というレベルに技術的なステップを踏んだということが、意味合いとしては大きい。

 そして超解像技術が成熟してくると、今度は映像ソースの質が問われるようになってきた。例えば放送よりも高画質であることが多いBlu-ray Discも、”容れ物”として優れていることは間違いないが、その中身(コンテンツ)の質までを保証しているわけではない。大まかには、HDカメラやHDテレシネレベルのフルHD映像と、4Kカメラや大判フィルムのスキャンなど、本来フルHD画素では表現しきれないほどの情報量を持つ映像ソースに分類できる。

 どちらもBDに入れば「フルHD」と表記されるが、その中の映像が持っている周波数特性(精細度)は異なる。4K超解像をもっと良いものにするには、この2つをどう判別し、高精細映像の場合にはより積極的に高域を伸ばす設定が必要だ。と、ここまでが先週のまとめだ。

プラズマの魅力

 このトレンドの中で埋もれてしまっている製品がある。それがパナソニックのビエラ「VT60シリーズ」だ。VT60シリーズはフルHDプラズマであり、4Kパネルのトレンドにのった製品ではない。そのため、「4Kじゃないんだよね」ということで影に隠れてしまっているが、総合的な動画画質としては捨てがたい魅力がある。

ビエラ「VT60シリーズ」。赤色蛍光体材料を変更し、デジタルシネマの色域を98%カバー。階調表現を滑らかにするサブフィールド駆動の進化、動画表示性能の向上など画質面の進化が著しいプラズマ最高画質モデルだ

 プラズマというと、どうも”負けた技術”という印象が強いだろうが、画質、とくに暗室で観る映画やコンサート映像などに関しては液晶よりも優れた面が多い。技術トレンドではなくとも、製品として良ければいいわけだが、VT60シリーズはすぐれた階調表現と安定した絵作り。筆者は自宅でパイオニアの“KURO”「PDP-6010HD」を使っているが、当時の贅を尽くした60インチPDPと比べても、優れた面が多く感じられる。

 もし、あなたが映画やコンサートなどのプレミアム映像を、より高い品位のプラズマで楽しみたいと考えているなら、4Kパネル採用機とともにVT60シリーズも評価すべきだ。海外で販売されている「ZTシリーズ」が国内投入されていないことに不満を持つ層もあるようだが、残念ながら今年、ZTシリーズの投入はないと聞いている。

海外で販売されている「ZTシリーズ」の65V型「TC-P65ZT60」。専用パネルは「Studio Master Panel」と呼ばれている

 ZTシリーズとの違いは、ダイレクトに前面フィルターを貼り付けたPDP製造プロセスを使ったパネルか、それとも後から前面フィルターを取り付けるかの違いとのことで、確かに内面反射による微細領域の見え方が異なるが、VT60シリーズでも充分な高画質を実現している(ZTシリーズに使われているパネル生産枚数が限られているため高価)。

 つまり、65インチまでは好みによってプラズマと4K液晶パネルを選び分ければいいと思うが、これを超えたサイズになってくると4Kパネルの優位性が高まってくる。例えば70インチ以上のフルHDとなれば、近くで見ると画素そのものが肉眼でも見えてしまう。

 どのぐらいのサイズから4Kパネルの良さが生きてくるかといえば、50インチを超えたところから効果はあるが、上記のプラズマ最高画質モデルと比べての評価となると判断は微妙になってくる。動画解像度という面ではプラズマに分があるからだ。

 いずれにせよ、こうしたプレミアム製品の場合、量販店の店頭ではなく、専門店の店頭で確認する。あるいは量販店でもきちんと視聴できるようお願いしてみるなど、自分自身で見慣れたコンテンツを持ち込んでの”お試し”をオススメしたい。

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