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ウォークマン「NW-F885」を使って分かった“ハイレゾ対応プレーヤー購入時のポイント”(3/3 ページ)

» 2014年01月31日 20時54分 公開
[久木史郎,ITmedia]
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購入前に検討すべきこと――自分のリスニングスタイルを考える

 このようにFシリーズは、NW-ZX1を購入するほどの「本気のこだわり」はないものの、「可能な範囲で高音質再生環境を確保しておきたい」という大多数のユーザのニーズに応えられる製品に仕上がっている。しかし同時に、各々の使い方によって、いくつか注意しておくべき点が存在することも確かだ。最後にこれらをまとめておこう。

Fシリーズ。メモリ容量によってカラーバリエーションが異なる点にも注意したい。64Gバイトの「NW-F887」はブラックとホワイトのみ。ビビッドピンクやブルーが欲しければ、32Gバイト以下のモデルになる

 まず、この製品を購入する典型的な目的の1つとして、「今後、徐々に音源をハイレゾオーディオに変えておくつもりなので、機器側も対応させておきたい」というものがあるだろう。この場合、容量面が問題になりうるという点は留意すべきだ。ウォークマンでは(iPodと同様に)micro SD、メモリースティックといった外部メモリ追加には対応していない。しかしハイレゾオーディオでは、FLAC(可逆圧縮)でもアルバム1枚あたり概ね1Gバイト以上(無圧縮WAVなどでは2Gバイト以上)の容量が必要となる。

 ローエンドモデルの「NW-F885」の場合、16Gバイトの容量となっているが、ユーザー使用可能領域は約12Gバイトになるため、ほぼアルバム12枚分ということになる。これを十分と見るか、不足と見るかは人によるだろうが、たいていの場合はデータを適宜入れ替えつつ運用することになるだろう。しかも、12Gバイトをそっくり入れ替える場合、新たなデータを転送するのにだいたい20〜30分程度の時間がかかる。割り切って上記のような使い方をするにせよ、3000円という値段差を鑑みると、少なくとも32Gバイト搭載の「NW-F886」を選ぶべきだろう。本当は64Gバイト搭載の「NW-F887」を検討すべきだが、そうなると「もう少し無理をしてZX1」という考えが頭をよぎるのが悩ましいところだ。

 また、もう1つの使い方としては、「手持ちの音源は圧縮音源が中心で、今後もハイレゾオーディオに手を出すつもりはないが、DSEE HXによる高音質化を活用したい」というパターン。これは現状としては、なかなか利にかなった使い方にも思えるし、容量不足の問題も生じにくいといえるが、実はバッテリー持続時間がネックになる可能性がある。なぜなら、DSEE HXをオンにすると、通常の再生時と比較して、バッテリー持続時間が半分になってしまうからだ。ただ、実はこれは前述のとおり、ハイレゾオーディオ再生時と同様のことではあるし、DSEE HXのオン/オフは任意に行えるので、うまく使い分ければいいだけかもしれない。

「DSEE HX」の効果。ソニーのアップスケーリングは、さまざまなジャンルのハイレゾ音源とそのCDなどを解析し、差分を“予測モデル”としてデータベース化しているのが特長だ

 Fシリーズを購入しても、少し中途半端な印象になってしまう可能性があるのは、「手持ちの音源は以前からロスレスで、現時点ではハイレゾオーディオの購入にはそれほど積極的ではない」というユーザーだろうか。ロスレス音源でもDSEE HXによる高音質化は有効だが、高圧縮音源ほどの劇的な変化ではない。また、ロスレスの場合にはCD音質でもアルバム1枚あたり約250Mバイトの容量となるため、容量面でも少し不安は残る。だったら、(パーツから高音質にこだわったNW-ZX1ならともかく)何もFシリーズを買うことはなく、音質がまともな部類のAndroidスマートフォンに安価な64Gバイト micro SDと高音質なヘッドフォンを組み合わせるだけでも十分という考え方もあるだろう。

 いずれにせよ、iPod touchとほぼ同じ価格でハイレゾオーディオ対応を果たしたFシリーズは、より多くの人がハイレゾオーディオを楽しめるようにしてくれる製品であることは間違いない。ただ、それだけですぐに食いつくのではなく、上記のように、自分がどのような音源を用いたいのか、ポータブルオーディオをどのように活用したいのかを押さえたうえで、場合によってはNW-ZX1、あるいはそのほかの製品も視野に入れつつ選んだほうがいい。自分の目的としっかりと合致しさえすれば、非常に良好なポータブルオーディオ体験を提供してくれることは確実なのだから。

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