最近はテレビや一般誌でも頻繁に取り上げられるようになった“ハイレゾ”。数年前とは比べものにならないほど広がりを見せ、ようやく“ポストCD”と受け止められ始めた雰囲気を感じる。
ハイレゾの魅力は、なんといっても音の良さだ。例えばCDを聴いている時も、思わずリズムを刻んだり、アーティストの声に感動した経験は誰にでもあるだろう。しかしハイレゾ音源を対応機器で聴けば、そんな経験をする頻度がかなり増える。聴き慣れているはずの曲でも、楽器1つ1つの音がリアルになり、それまで知らなかった小さな音にも気づく。アーティストの声は間近で聴いているかのような現実味を持ち、息づかいまで感じられる。ライブ音源なら、その臨場感に鳥肌が立つこともある。
では、従来のCDとハイレゾは何が違うのか。ハイレゾ音源では人の可聴域(〜2万Hz)を超えた音を含む点が話題になりがちだが、まずは可聴域内を含めて情報量が全く違うことに着目したい。例えばCD(44.1kHz/16bit)再生時のデータ転送量(約1411.2kps)を1とすると、ハイレゾ音源の96kHz/24bit PCMは約3.2(4608kbps)、192kHz/24bitなら6.5(9216kbps)にもなる。方式の異なるDSD(2.8MHz)でも、転送レートでいえばCDの4倍近い。同じ時間に受け取る情報量が圧倒的に多ければ、細かい部分の再現性が上がる。ハイレゾ=ハイレゾリューション(高解像度)という名称の所以だ。
例えば画質の良い大画面テレビでDVDとBlu-ray Discを見比べれば、DVDがひどく見劣りするのは分かるだろう。音楽も同じで、CDや圧縮音源と同じ楽曲、同じ環境で比較すると明らかに違う。そしてハイレゾの音に魅了されると、気になる楽曲もハイレゾ音源から探すようになる。
ただ周囲を見渡してみると、実際にハイレゾで音楽を聴いているという人は多くない。ハイレゾという言葉は知っているし、興味も持ってはいるものの、「そんなに違うの?」と信じ切れていない様子だ。また「面倒くさそう」「お高いんでしょう?」と何かしらの心理的なハードルを感じている人もいる。
確かにオーディオ機器は価格の幅が広く、上を見ればキリがない。しかし、ハイレゾは注目ジャンルだけあって新製品も数多く登場しており、手軽さやコストパフォーマンスを重視したものも増えてきた。とくにポータブル機器の分野では近年のヘッドフォン人気も手伝い、ハイレゾ対応機器の裾野が広がっている。例えばソニーの「ウォークマン」はエントリーモデルの「Aシリーズ」までハイレゾ再生に対応し、ほかの大手オーディオメーカーも軒並み、それまで手がけていなかったポータブルヘッドフォンアンプを投入している。すべてこの半年ほどで起きた変化だ。
ポータブル機器は、据置型に比べて全体的に安価で、かつネットワークオーディオのような設定作業も少ない。ハイレゾのハードルを下げるにはうってつけの視聴スタイルだろう。そこで今回の特集は、ポータブル機器を中心に手軽でコストパフォーマンスの高いハイレゾ対応製品と最新動向を紹介していきたい。
オーディオ・ビジュアルの分野では、“ディレクターズ・インテンション”という言葉がよく使われる。ディレクター(制作者)の意図を重視し、忠実に再現しようという意味だ。DVDからBDへの進化がそうであったように、コンテンツの情報量を増やすことはその近道。音楽でも、ハイレゾ音源ならお気に入りのアーティストが本当に表現したかった音に近づけるはずだ。一方、音楽を制作する現場でも、最近はハイレゾの情報量を活かした音作り、曲作りも始まっている。これを見逃していてはもったいないというものだ。
冬のボーナスシーズンも間近。今年もがんばった自分に、少しだけぜいたくなハイレゾ体験をプレゼントしてみては?
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