このあたりになると、生徒ひとりひとりのアプローチにも個性が出てくる。あまり考えずに動かしてみる行動派の生徒もいれば、じっくりと設定を考えなかなかトライしない慎重派の生徒もいる。先生や近くのスタッフにどうすればいいか尋ねる生徒もいれば、逆に「答を言わないで!」と言わんばかりに、なんとか自分で解決しようとチャレンジを続ける生徒もいた。人間も実は男女に関係なく、「Romo」というロボットと接することで、それぞれの性格がいろいろと違うことが分かる。
さて、そんな最後のゲームもいよいよ授業終了の時間を迎える。福石先生が終了の合図と片付けの号令をかける。通常の授業とは違い、生徒たちにとってはあっという間の45分だったようだ。生徒たちにとってはもはや“プログラムを学んでいる”という意識はない。「Romo」というロボットをゲーム感覚で動かしているだけだった。その証拠に、生徒たちに授業後に感想を聴いてみると、
「自分の指示通りに動かせておもしろかった」
「難しかったけど、とてもおもしろかった」
「おもしろかったからお年玉で欲しい」
「クリスマスプレゼントに買ってもらおうかなー」
など、好意的な意見ばかりが並んでいた。それは、本来学校の授業に関する感想としては異例のものであると、この授業を受け持った福石先生も話していた。ちなみにこの後、4時間目には高学年の5年生〜6年生の21人が同じような授業を、少し課題を高度な形にして受けた。生徒たちは単なる動きに一喜一憂するというより、できた達成感に喜ぶする子が増えた印象はあったものの、概ね授業に対する感想や反応などは変わらなかった。
でも、やっていることは間違いなく単なる遊びではない。ロボットをどのように操るかを自分で考え、プログラミングで指令を出し、指示通りにロボットが動いているかを判断する。プログラマーや技術者たちがトライ&エラーを繰り返しながら、さまざまな機械を動かしたり、技術開発をしているのとなんら変わらない。興味本位で遊んでいるうちに、勉強しているつもりはないのに自然と学べてしまう……これがエデュケーショナルロボット「Romo」を授業に取り入れた効果なのだろうか?
この授業を計画した岩崎正彦校長先生は、「ある程度は夢中になってやってくれるだろうとは思いましたが、ここまで目をキラキラさせて、みんなが楽しそうに授業を受けてくれるのは、予想以上の反応でしたね。子どもたちは先生が指示しなくても、直感的に『Romo』の動かし方を理解し、自分でトライ&エラーを繰り返している姿をみて、あらためてこの授業を計画して良かったと思います」と話す。
同校の場合、1年生から「コンピューター教室」で、パソコンに触れさせ、ローマ字入力でキーボードを叩いたりしているそうだ。しかし、実際のモノに指示を出し、狙い通りに動くという体験はできていなかった。それを可能にしたのが「Romo」だったという。
「大人たちが、楽しんでプログラミングを学ぶ機会を子どもたちに作ってあげることで、子どもたちはどんどんその分野に興味を持ち、学ぶというより感覚的に身につけて行く。やがてはそれを研究し、生業としていく子も出てくるかもしれません。プログラミングもモノ作りの一貫ですから、日本のモノ作りの水準を高めるためにも、今後は必須なものとなっていくでしょう。願わくば、こういう楽しんで学ぶところから、あっと驚くようなひらめきなどが生まれて、遠い将来、ノーベル賞を受賞するような子が誕生したらいいですね」(岩崎校長)。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
Special
PR