6月18日に予約受付を開始し、あっという間に品切れになってしまったソニー・インタラクティブエンタテインメント(SIE)のプレイステーション 4(PS4)用VRシステム「PlayStation VR」(PS VR)。出荷台数が非公表のため、反響の実態は分からないが、感度の高いゲーマーたちの間で今最も熱い話題の1つであることは間違いないだろう。
しかし、PS VRは大迫力のスクリーンで映画鑑賞を楽しめる「シネマティックモード」を搭載する他、PS4向けDLNAメディアプレーヤーがVRモードに対応するなど、ゲーム以外にも注目すべき機能がある。見方によっては、“5万円前後で買える大画面”とも考えられるが、ゲーマーだけでなく、オーディオ・ビジュアルファンの心もつかめる魅力はあるのだろうか。
SIEが「2.5m離れた距離から最大226インチ相当の大画面を見ているような体験」と表現するシネマティックモードを実際に体験してみた。視聴したのは、ソニー・ピクチャーズ エンタテインメントのBlu-ray Disc「ザ・ウォーク」。1974年当時、世界一の高さを誇った高さ411mのワールド・トレード・センターを命綱なしで綱渡りした男の物語だ。
画面サイズは小(117型相当)/中(163型相当)/大(226型相当)から選べ、初期状態では「中」になっている。体感的には、「小」は200席規模の映画館での10〜11列目、「中」は6〜7列目、「大」は2〜3列目といったところだ。「大」だと左右が見切れてしまうので、画面の端に縦に字幕を流すような作品には向かない。首を左右に振ると見切れたスクリーンを確認できる。スクリーン以外の部分は真っ暗になっている。
また、映画館での3Dメガネと同じく、長時間の使用は疲れが生じる。重量は約610g(ケーブル除く)と見た目より軽量で、目に触れるゴム素材もフィット感が高く快適だが、尺が2〜3時間程ある映画だと、人によっては休憩が必要かもしれない。目に触れる部分は、フィットさせすぎると熱がこもってレンズがくもってしまうこともあるが、隙間を空けすぎると光が差し込んで没入間が損なわれてしまう。ユーザーによって装着時の最適なバランスは変わってくるだろう。
その他、シネマティックモードはNETFLIXやHuluなどの動画サービス、VR非対応のPS4のゲームにも対応する。
スペック面では、視野角約100度、120Hz/90Hzのリフレッシュレートを実現する、1920×1080ピクセルの5.7型有機ELディスプレイの搭載や、表示の遅延を18ms未満に抑える技術の採用などが特徴だ。左右のレンズにそれぞれ960×1080ピクセルの映像を表示している。
PS4向けDLNAメディアプレーヤーがVR(virtual reality)モードに対応したことで、ユーザー自身が撮影した全天全周の動画・静止画もPS VR上で再生できる。メディア向けの体験会では、リコーのTHETAで撮影した南国のビーチや山頂の絶景などを閲覧したが、その場にいるかのような体験を味わえた。旅行や各種イベントの思い出を振り返る際、そのときの記憶がより鮮明によみがえってきそうな印象だ。データは、USBメモリーやDLNAサーバー経由で取り込める。
AV機器としてのPS VRにも十分魅力があるが、今や4K画質を大型テレビで楽しむAVユーザーがVRで映像を楽しむ意義はどこにあるのだろうか。先述したように、「お手頃価格で大画面を手に入れる」という需要もあれば、「家族にバレずに1人だけでコンテンツを楽しみたい」という人もいるだろう。他にも、好きなアーティストやキャラクターをより近い距離感で楽しみたい人にとっても気になるアイテムとなる。
しかし、ヘッドフォンの装着や据え置きスピーカーの設置など、音響面の整備はユーザーに委ねられる。体験会では小型ヘッドフォンを装着したが、音質を重視して大型ヘッドフォンを装着すると、かなり窮屈になるだろう。PS4本体がなければPS VRが動作しないことや有線ケーブルの存在なども、人によっては気がかりなところだ。
また、PS4はDLNAサーバーに対応しているが、DTCP-IPは非対応のため、レコーダーで録画したテレビ番組をネットワーク経由で視聴することもできない。アップデート等で対応することがあれば、AV機器としてのPS VRの可能性はますます広がっていくだろう。
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