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「両社は運命共同体」――船井電機の国内テレビ再参入にかけるヤマダ電機の思い

» 2017年05月17日 20時36分 公開
[芹澤隆徳ITmedia]

 船井電機とヤマダ電機は5月17日、新しい“FUNAI”ブランドの液晶テレビを披露した。昨年10月に発表した独占販売契約に基づき、6月2日から全国のヤマダ電機店舗およびECサイトで販売する。船井電機が自社ブランドの薄型テレビを国内で発売するのはおよそ10年ぶり。

FUNAIブランドの液晶テレビ。5シリーズ11製品のうち、写真の「5000」シリーズは国内向けにイチから開発したというスタイリッシュモデルだ

 10年も国内のテレビ市場から離れていた船井電機だが、北米市場ではフィリップスブランドのテレビやレコーダーを販売していた。近年は海外メーカーの低価格攻勢などに苦しんでいるが、依然として日本メーカーとしてはシェアトップだ(2015年時点)。発表会であいさつに立った船井電機の船越秀明社長は、2020年の東京オリンピックに向けたテレビ需要などを挙げ、「日本市場に再び挑戦する好機。初年度に市場シェアの5%、2020年には20%を獲得したい」と意気込みを語った。

ヤマダ電機の山田昇会長(左)と船井電機の船越秀明社長(右)
4K液晶テレビが中心。サイズは65V型〜24V型とパーソナルサイズもそろえた。店頭価格などは未発表だが、コストパフォーマンス重視だという

 日本向けのテレビは、全機種が録画機能を持ち、11機種中8機種が4K対応という市場のトレンドに沿ったラインアップだ(関連記事)。ローカルディミング機(バックライトの部分制御)が存在しないなど画質重視のユーザーには物足りない部分もあるが、秋には65V型を2機種追加する予定で、さらに2018年夏に向けて有機ELテレビも開発する計画も明らかにしている。まずはコストパフォーマンスの高い製品で認知度を上げ、徐々に高付加価値製品に拡大する戦略だ。

 ヤマダ電機の山田昇会長は、「日本メーカーとしての信頼性に加え、コストパフォーマンスにへのこだわりを重視しながら両社で企画した商品。満足のいく品ぞろえになった」と評価した。ヤマダ電機は各店舗にFUNAI製品の展示スペースを確保するほか、製品を熟知した「フナイマイスター」を全店に配置するなど販売面でも全面的に協力していく。「船井とヤマダは“運命共同体”。トップマネジメントで全社一丸となって汗を流していきたい。2020年のシェア20%という目標も達成可能だと考えている」(山田氏)

全店舗に専用の展示スペースを設ける
フナイマスターを全店に配置する

 山田会長が入れ込む背景には、国内製造業の現状がある。日本ビクター出身の山田氏は、「草創期からテレビを中心に成長してきたビクターがテレビ事業から撤退し、三洋電機がなくなり、日立製作所や三菱電機も国内市場からいなくなった。そしてシャープ(のホンハイ傘下入り)、東芝(の経営難)の現状。店頭を見れば、昔は10社近くのテレビが並んでいたのに現在は3〜4社まで減った」と嘆く。

 ただし、製造業に変化が起きても「良い物が欲しい」という一般ユーザーのニーズは変わらないという。「ニーズがあるのに大メーカーがいなくなり、その後を海外メーカーが虎視眈々と狙っている。この状況をなんとかカバーしたかった」と山田氏。海外メーカーは売れないとすぐに撤退するなど「国内メーカーの信頼性やこだわりは真似できない」と指摘する。

 「製造(船井)と販売(ヤマダ)でともに市場を作る。これは業界にとっても良いこと。市場を創造するための取り組みであり、独占だ」(山田氏)

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