――QUICPay、スマートプラス/VISA TOUCHの動きはどう予想されますか?
神尾 QUICPayはトヨタファイナンスというブースターのおかげで何とか離陸(参照記事)しましたが、ここから先が課題でしょうね。利用促進をどうするのかが、まだ見えない。
吉岡 提携カードで対応するものがものすごく増えれば、状況は変わるかもしれないですね。iDと違って、QUICPayとスマートプラス/VISA TOUCHは3キャリアに対応しているので、対応カードがものすごく増えれば、おサイフケータイをたくさん使いたいユーザーは使えるようになる。
神尾 提携カードで、ということなら、もっとJCBが頑張らないといけないんですけどねぇ。
吉岡 QUICPayの方は、提携カードで対応するものもちらほら出ていますし、対応カードを発行している会社もだいぶ増えてきてはいるんですが、JCBブランドの提携カードの数に比べたら全然、ですね。
神尾 JCBブランドの提携カードで、特に利用活性化しやすそうなものはQUICPayに対応して欲しいですよね。
吉岡 あとはさっきの話に戻りますが、クレジットカードの新しい使い方というか、文化を作れるか、アピールできるか、ではないかと思います。
神尾 あと、すごく本末転倒なんですけど、ポストペイ方式にも、プリペイド的もしくはデビット的な機能があってもいい気がしています。
吉岡 使いすぎ防止の意味で? それとも分かりやすさの点で?
神尾 つまり、毎月一定額の利用分を“切り分けて”バリューにしておいて、ここから利用時に減算していく機能です。
吉岡 リボの変形みたいですね。
神尾 それよりも電子マネーに近いかな。要は“プリペイド電子マネー+オートチャージ”にファイアウォールをくっつけた感じです。
吉岡 ああ、PiTaPaでICOCA分をチャージする感じですか。
神尾 そうそう。ユーザーが意識的に使う分を用意しておくようなもので。
吉岡 うーん、それはかえって分かりにくくならないかなあ。まあ、電子マネーをクレジットカードからチャージしている人は、似たようなことをしているわけですが。
神尾 その電子マネー的な領域へのチャージに、手動か少額オートチャージが選べるようなものですね。要は、“お金を使うこと”を常に意識できるようにした方が、やはりいいのではないかと思うんです。後払いであることは問題ではないはず。
吉岡 電子マネーをクレジットカードからチャージ、だと別の決済方式になってしまうから、それを自社内で、ということですね。
神尾 そうそう。“銀行口座からお金をおろす”を比喩的に実現することが必要なのかなと。
この方式のもう1つのメリットは、何らかの特典を先付けできるところにもあります。つまり、「○○を買ったから500ポイント(実質500円分)進呈」よりも、「○○を買ったから300円の電子マネーを進呈」の方が、ユーザーも加盟店もうれしいということですね。後払いで支払額が減るより、先に“お金”をもらった方がうれしいでしょ。
吉岡 確かに。そういえば“ポイント”も今年らしい話題ですよね。去年まではFeliCa決済が単体で扱われていたのに、今年はポイントとからめて語られることが増えました。
神尾 さっきの話じゃないけど、今のポストペイFeliCa決済って、何から何までクレジットカードそのまんまなんです。そうじゃなくて、もっとサービスで工夫があっていいのでは? と思うわけです。
吉岡 分かります。
神尾 PiTaPaなどの交通系でポストペイとプリペイドの複合型ができるんだから、FeliCa決済でやってもいいのではないかと。
吉岡 ポストペイFeliCaのサービスの方向性として、それはアリですよね。
神尾 iDの上に、ポストペイ(クレジット)としてのiDと、電子マネーとしてのiDがあるようなものですね。プリペイドなら明細書レスもできますし、プリペイド領域はCRMでも使いやすいわけですし。
――2008年に向けたFeliCaサービスの期待などをお聞かせください。
神尾 FeliCa/おサイフケータイでいえば、面展開や規模の部分で今年はずいぶん充実したので、来年は利用促進やサービスレベルの競争に期待したいですね。
吉岡 来年は、利用率がどれくらい向上するかが注目かと思います。誠では毎月、FeliCa決済の最新利用状況を各事業者に聞いてまとめているんですが、PiTaPaのスルッとKANSAI以外のポストペイFeliCa(クレジット)事業者とWAONを展開しているイオンは、月間利用件数を公表していないんですよ。2008年からは是非、利用件数も明らかにしてほしいと思います。
神尾 今年からの動きですけど、交通、FeliCa決済(プリペイド・ポストペイ)、クレジットカード、ポイント・マイルなどの絡み合いというか、連携・融合領域がどんどん増えてきていて、その傾向は2008年も続きそうです。つまり、すべてが地続きになってきている。例えば、ガソリン価格が高騰したせいで、今、バスの乗車率が急増しているんですよ。これは東京圏もそうですし、(北九州の)西鉄取材でも同様の傾向が見られました。そうなると、バスの適時運行ニーズが高くなり、バスロケやIC対応が急務になっていたりするんです。Edyの例でみれば、クレジットカード業界のビジネス環境変化が大きな影響を及ぼしていますしね(参照記事)。
吉岡 お金って、今までも現金という形で見えるのはごく一部で、世の中を流通しているお金は実はほとんどが“データ”なわけですが、電子マネーが身近になったことで、消費者の感覚でもそれが感じられるようになった、という一面なのかなと思いますね。
神尾 そうですね。だから、この「すべてが地続き」が、いかに様々な分野、企業を横断するビジネスになっていくかを、個人的に特に注目していきたい。あと、今回はまったく触れられなかったですけれど、原油高も、実はFeliCaにとっては遠回りな追い風になっていますよね。
吉岡 公共交通の利用促進や、タクシーのサービス差別化(参照記事)で活用されるということですね。
神尾 公共交通を見直す動きや、脱・クルマ依存社会、輸送費高騰は、流通小売業の店舗・顧客のデータの把握・分析ニーズの拡大に繋がっていますし。
――まさしく「すべてが地続き」ですね。
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