集え、間取り図好き!――「間取り図ナイト3」に行ってきた大出裕之の「まちと住まいにまつわるコラム」(2/2 ページ)

» 2008年10月03日 22時06分 公開
[大出裕之,Business Media 誠]
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 2本目のバトルは購入物件。電車の乗り換えなしで新宿に近い場所、4500万以下、3LDK、75平方メートル以上という条件だ。新築だと相場と大きく離れていて厳しい。

 京王沿線の下高井戸、あるいは桜上水あたりの物件が話題に上ったが、「HOME'S新築分譲マンション」や住宅情報ナビでは探すことができなかった。「HOME'S不動産売買」には中古物件があったが、来場者から「理想を言えば新築」というコメントがあり3社とも難航。そこで、話題は「通常とは変わった物件の探し方」に移った。

 ネクストは、マンション口コミサイト「マンション100%」を紹介。さまざまなグラフィックを使って理想の部屋を設定すると、理想に近い部屋の情報などが配信される「自分で探さない」機能が来場者に好評だった。

マンション100%の「自分で探さない」機能

 リクルートは、マンション口コミ情報サイト「スマッチ!」で対抗。豊富なブログコンテンツや地図検索などで知られるサイトだ。カヤックは「ニフティ不動産」のように、多くの会社から物件情報が集まるポータルサイトでの探し方もあると紹介した。

 2本目のバトルは、進行の森岡氏が武蔵境で3150万円の物件を発見したことで決着がつく。「皆さんは検索サイトのプロデューサーですが、検索テクニックは私が一番上のようです」と笑いをとった。

 最後の3本目は、鎌倉で金額無制限、広い居間、多少ボロでもいい、小さな庭、猫あり、そして良き隣人、というなかなか難しい条件。

 ここでは鎌倉に会社があるカヤックが、東京R不動産に出ている鎌倉の円覚寺の物件や、「湘南の家探し ひがわりさん」などを紹介するなどして、独壇場となった。

間取り図ナイトが語りかけた住まい意識の変容

 間取り図がこれだけエンターテインメントの題材となる、という事実はあなどれない。「間取り図ナイト」は2007年10月に第1回、2008年2月に第2回、2008年9月に第3回が開催され、さらに第4回についても期待の声が上がっているという。TOKYO CULTURE CULTUREのシンスケ横山店長によると、「間取り図は興味を持てる人のレンジが広いため、人気が高いのでは」とのことだ。

 また驚いたのは、業界紙『住宅新報』が記者を派遣してきたことだ。業界向けのオピニオンをリードする新聞が、“間取り図大好き!”な人々を取材しているわけだ。

左から大山顕氏、大塚幸代氏、森岡友樹氏、そして取材に来た『住宅新報』の鹿島香子氏

 たかが間取り図、されど間取り図。間取り図は、住まいを探す上で欠かすわけにはいかない要素。しかし、それがサブカルチャーとしてウケるということは、日本人の“間取り図リテラシー”(そんなものがあるかは分からないが……)が向上してきたことを示しているように感じた。

 間取り図だけでなく、日本人の住まい探しについての総合的なリテラシー向上が時代の流れと並行しているのは確かだろう。そもそも森岡氏が間取りについて気になりだしたのは1990年代の半ばごろだという。「Webではまだ紙媒体から転載したようなデータばかりで、重いサイトが多かった。しかし、徐々にネット専業サイトが出てきてどんどん良くなってきた」(森岡氏)。

 今回のスペシャル企画である検索バトルを通じて、いろいろな立ち位置のサイトがあり、また検索手法もさまざまあることを参加者たちは知っただろう。ショッピングサイトなどと比較しても、不動産系サイトは検索の多様性を競い合っているという点で、ネットの中でも進化している分野と言える。

 ニーズがあるからサイトが進化する。サイトが進化するからニーズが生まれる。住まい探しの意識向上の歩みと、不動産系サイトの進化の歩みは連動していると信じたいし、おそらくほかの分野でも同様なのではないかと思う。

 まあ、そんな小難しいことを考えなくても、物件種別やら沿線別やら地域別、はたまた追い炊き機能やらで、純粋に物件検索で遊んでみてはいかがだろうか。間取り図の森の中をさまよううちに引越ししたくなってしまったとしても、あしからず。

 →Business Media 誠 住まい情報局

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