訪問企業は年間約200社、書籍『日本でいちばん大切にしたい会社』の著者で、法政大学大学院政策創造研究科の坂本光司教授が提唱する“ぶれない会社”の法則的特徴とは?
10月5日、企業支援を通じて日本再生を目指す有志団体「東京経営塾」は、企業の経営者ら約150人を招いた特別セミナーを実施した。坂本教授は、中小企業経営の研究者としてこれまで約6600社の訪問調査や支援を行っている。その経験を通じて見えてきた、企業経営者のあるべき姿、正しい経営について講演した。
坂本教授は、景気と業績の関係で示せる企業の型を次の3つに分類している。
この3つを現在の日本企業に当てはめると、実に「2:2:6」の割合で示せるという。問題は、20年前にはこの割合が、2:6:2だったこと。「景気連動型企業がここ20年で減少し、好況不況に関係なく社会の評価を得られない企業が増えてしまった。これは大変悩ましいことだ」と坂本教授は話す。
つまり現在の日本は、景気連動型企業と限界型企業が大多数を占めている。坂本教授はこの現状について「元気を取り戻さない限り、たとえ消費税率が20%、30%に引き上がったとしても景気は回復はできない」と断言する。
上記の「元気がない企業」に共通すること。それは(1)景気(2)業種(3)企業規模(4)立地条件(5)大企業の存在、の5つに対する誤解や錯覚、甘えを持っていることだ。
裏を返せば、上位2割の景気創造型企業は5つに挙げられるような条件があったとしても、営業利益を出し続けている。
例として坂本教授は、3000円から高ければ3万円もする手作りの木製ハンガーを販売し、世界中から注文が殺到している企業や、自らも注文し、顧客の99%がリピーターになっている北海道の名刺会社や、少子化が叫ばれている島根県に立地しているにもかかわらず生徒数が国内一位の自動車教習所などを挙げた。
「元気がある企業は、上記5つを言い訳になどしない。もしそれを口にしているとしたら、根本的に経営者失格だ」(坂本教授)
では元気がない企業、景気連動型企業と限界型企業に分類される企業が生き残るには具体的にどうすればいいのか。それは景気創造型企業に学ぶことに他ならない、と坂本教授は言う。教授は訪問してきた企業の中でこれまで営業利益率が一度も10%以下になったことのない企業の経営者に共通することとして、以下10点のキーワードを挙げながら次のように話した。
「元気がある企業の共通項をあえて挙げるなら、上記10点のキーワードで示せる。かいつまんで紹介すると、まずは従業員を大切にした経営を貫くこと。希望退職を貫くのは、正しい判断ではない。内部崩壊を引き起こすだけだ」
昨今名だたる企業が希望退職者を募っているが、教授はそうした企業の労働組合に会うときに必ずある問題提起をする。「なぜ仲間の命と生活を守らなかったのか。喜びも悲しみも一緒に分かち合うことが企業であり、自分たちの給料を下げてでも、なぜ従業員を守らなかったのか」――すると、多くの労働組合の人々が涙した。
そして、これも見落とされがちだが「経営者は価格競争から1日も早く決別しないといけない」。価格競争は他社もできることで、高くてもその会社しか作ってない、やっていないことをすることの方が重要だとする。
一方で、売れているからといって、1つの商品にこだわっていてもいけない。さらに自分で作り、いいと思っているものは自分で売る。研究と直販機能を一体化することも重要だとしていた。
その他、社会貢献経営として、障害者と健常者がともに行き、手を差し伸べること。坂本教授は「障害者雇用をしていない企業には、血税をつかうなと」口をすっぱくして言っている。
最後に坂本教授は、「この会社に学べ」とする具体的な企業名として、フレンチレストランを経営する「アンシェーヌ 藍」や、リハビリ用シューズなどを製造販売する「徳武産業」、「つまんでご卵」の銘柄の卵を手がける「緑の農園」などを紹介した。
なお坂本教授の公演後には、東京経営塾を紹介する場も設けられ、田中渉塾長は「本プロジェクトを通じて、ITコーディネータや経営コンサルタント、税理士、社労士などの専門家による情報共有の支援、および中小企業の事業発展をサポートしていきたい。日本の活性化につながる活動になれば」としていた。
東京経営塾では今後も、中小企業経営者向け研修やセミナー、中小企業経営者と講師・コンサルタントとの交流会の開催、無料経営相談、経営効率化を実現する情報配信をしていくという。
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