米国債の債務不履行が世界恐慌を招きかねない理由藤田正美の時事日想(2/2 ページ)

» 2013年10月09日 07時00分 公開
[藤田正美,Business Media 誠]
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共和党が“人質”にしたのは、米国版国民皆保険制度

ホワイトハウス ホワイトハウスのWebサイトにアクセスすると「議会が予算審議を通せなかったので、情報のアップデートができない」という警告が表示される

 いかに頑迷な共和党(というより党内「派閥」のティーパーティー運動と言ったほうがいいかもしれないが)でも、世界を再び金融不安に陥れたという「汚名」は受け入れがたいだろう。しかも、そもそも共和党が2014年度予算や債務上限額引き上げで突っ張っているのはいわゆる「オバマケア」(医療保険改革法)なのだが、この実施を延期しようというのには正当性がない。

 医療保険改革は、4000万人とも言われる「無保険者」をなくして、事実上の国民皆保険を実現しようとするものだ。国民に補助金を出したり、罰則を科して医療保険に入らせようとするこの法律は、個人の自由を侵害するとして違憲とする判例もあったが、結局は連邦最高裁で違憲ではないとの判断が下った。議会で賛成多数で成立し、大統領も署名し、連邦最高裁で違憲ではないという決定が下った法律を実行するのは当然の話だ。

 これを連邦議会下院で多数派を握る共和党が1年実施を遅らせるために、連邦予算や政府の債務上限引き上げを「人質」に取ったという形である。もしこうしたことが許されるなら、上院ないし下院で野党が過半数を握れば、重要法案を人質にして自分たちの意思を押し通すことが可能になるということだ。日本でも、参院で予算関連法案の通過を妨害して首相の首を取った政党があった。取られても当然と思える首相ではあったが、あのやり方はフェアではない。同じように、米共和党のやり方はフェアではない。

 オバマ大統領が誕生して、これまで2回の国政選挙があった。2010年の中間選挙、そして2012年の大統領選挙である。確かにオバマ大統領はこの間、支持率を落としてきた。それでも大統領として再選されたし、共和党も上院は過半数を握ることができなかった。多数派が横暴になるのは避けられないところもあるが、少数派が横暴になるのは、民主主義を殺すことでもある。

 速やかに2014年予算案を通し、債務上限を引き上げる。それが大統領継承権第3位の下院議長ジョン・ベイナー氏の責務である。

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