面接官は「3秒ルール」を持っている:就職は3秒で決まる。(3/3 ページ)
就活最大の秘密にして、面接官が語りたがらない“本音のなかの本音”は「面接は3秒で決まる」こと。今回はこの“ルール”について説明しよう。
3秒には間違いがあって当然
面接官も人間、間違いがあって当然。最初から正しい判断なんて期待をしてはいけない。だって、考えてもみよう。3秒とは第一印象、個人差がある。例えばあなたがAさんに抱く第一印象と、あなたの友人がAさんに抱く第一印象は、まったく同じ結果にはならないはず。あなたがAさんに好感を持っても、友人は正反対の印象を持つかもしれない。
同じように、面接官が1万人いれば、1万通りの第一印象が存在する。職人のような判断力を持っていても、面接官によってバラツキが生じることは避けられない。ということは、就活生の面接の合否にもバラツキが生まれる。
あなたは、とある企業の面接を受けたとしよう。その日は仮に、A氏とB氏というふたりの面接官が担当で、あなたの担当はA氏。彼はあなたを見た瞬間「性格がきつそうで、使いづらい」と3秒で判断し、不合格にした。もしB氏だったなら「クセは強いが芯がしっかりしていそう」と、むしろ高い評価となり、合格だった可能性もある。
面接の合否が分かれたのは、あなたに対する第一印象が面接官によって異なったため。でも、どちらの3秒ルールも正解なので、不合格という事実は変わらない。このように、企業が合理的と考える3秒ルールは、就活生からすると「運任せ」に近く、不合理に思われるかもしれないが、こうした事態はあらゆる面接で必ず起きる。
3秒で決めた後、その判断の適否を確認する
ところで、面接は3秒で決まるはずなのに、なぜ就活生を椅子に座らせ、さまざまな質問を繰り出し、その後10分も20分も面接を続けるのだろうか。さらには、1次面接を通過したら、2〜3次から最終まで、面接は何度も繰り返される。このムダにも思えるプロセスに、実は、面接の真の意図が隠されている。
結論から言うと、3秒ルールは最終判断ではない。あくまでも「目安」に過ぎず、その後の面接において、しっかりと確認作業を行う。面接官が一目見て欲しいと思った就活生が現れたなら、そこには必ず「欲しい理由」がある。「シャープな思考を持っていそう」だったなら、本当にその能力があるのか、面接官はそこに絞って質問をしていく。それが「3秒の後の面接」。
その結果、最初の判断が正しいと確信すれば面接は通過するし、予想を裏切られたなら落とす。反対に「何も期待できなさそう」な就活生が来たとする。このような場合も同じで、本当にダメなのか、その「落とす理由」を探るために、やはり面接で確認する。いくら質問してもつまらない答えばかりだと面接官はうんざり。面接は一応続けるが、もはや就活生の話は聞いていない。不合格となる。
まれに、何も期待していない就活生に、思いもよらない一面を見つけることがある。第一印象はチャラチャラしていて最悪、ところが面接になると、理路整然とした語り口に妙に惹かれた。見た目とのギャップがかえって武骨さを強調し、面接官は「鍛えればモノになる」と直感した。うれしい誤算というものだ。こうなると3秒の判断は覆り、次の面接が用意される。
ビジネスの世界では何事も、まずは結論から入る。プレゼンでも会議でも、最初に結論を提示し、後からその正当性や妥当性を順に述べていく。この方が合理的でミスが少ない。
面接官の3秒ルールはこの手法に似ている。すなわち、第一印象=結論を先に決めておき、その判断の適否は、後から面接のなかで検証していく。ただし、確認のために面接があるとは言っても、3秒ルールの影響力は絶大。心理学でも実証されている通り、最初の判断が覆ることはほとんどない。
――次回へ続く。
連載「就職は3秒で決まる。」について
この連載は誠ブログの人気エントリーから誕生した書籍『就職は3秒で決まる。』の一部を抜粋、編集したものです。就活の最大の問題点は「ビジネスマンが就活・仕事に関して、本音で語ってこなかったこと」。例えば、多くの面接官が採用する「3秒ルール」は、面接官が語りたがらない本音です。いわゆる面接対策本のような小手先のテクニックではなく、面接時の心構えや失敗のない仕事の選び方など、メンタル面を中心に斬新かつ大胆に提言しています。就活のプロではないからこそ書ける「リアルな本音」を綴ったのが『就職は3秒で決まる。』なのです。
目次
第1章:3秒で選別される学歴
- 何もしなくても就職できる「就活エリート3万人」の実態
- 採用の当落線上をさまよう「エリート予備軍7万人」 ほか
第2章:面接は3秒で決まる
- 面接官はみな自分の「3秒ルール」を持っている
- オーラのない就活生に用はない ほか
第3章:面接官が持つ「異なる3秒」
- 優秀な就活生ほど役員に落とされるワケ
- 人事部は「バカを再生産する部署」 ほか
第4章:「コンサル脳」で企業を探す
- 自己分析をする就活生に見込みはない
- 第1志望の企業を決めてはいけない ほか
第5章:「コンサル脳」で自分を仕込む
- モジモジしたOB訪問では成果ナシ
- 【新・会社説明会】株主総会のように参加する ほか
第6章:「コンサル脳」で面接を考察する
- 学生団体の“副会長”はもういらない
- 「自分らしさ」を出してはいけない ほか
筆者紹介:荒木亨二(あらき・こうじ)
1971年、千葉県生まれ。ビジネスコンサルタント&執筆業。荒木News Consulting代表。早稲田大学で心理学を学び、帝人株式会社に入社。半年で退職。その後PR会社で働きながら独自のマーケティング理論を確立、28歳でフリーランスとして独立。以降、マーケティングリポートの執筆、セールスプロモーションのプランニング、PRコンサル、新規事業の企画開発、農業ビジネス主宰など、業界をまたいで様々なビジネスを手掛ける。
学生時代は就職氷河期第1世代として就活を体験。独自の就活スタイルを武器に、面接の突破率は9割以上を誇る。このとき、就活にまつわる「ヒジョーシキな常識」に疑問を持ち、以降、ビジネスコンサルタント業の傍ら就活に関する取材を行う。著書『名刺は99枚しか残さない』(メディアファクトリー)
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