自己分析をする就活生に見込みはない:就職は3秒で決まる。(3/3 ページ)
自分とはいかなる人間なのか。自分に最適な仕事は何なのか。就活生が取り組む「自己分析」なる研究は本当に意味があるのだろうか。
本当の自分が分かる「自論リポート」
さて、ここからが肝心。新聞の読み比べを続けていると、おのずと自分の関心が明らかになってくる。とあるIT企業の動向が妙に気になったり、百貨店業界が伸び悩む原因を考えたり、経済を知れば知るほど自分なりの考え、つまり「自論」が頭のなかに湧いてくるはず。
そこで今度は、蓄えた情報をアウトプットする番。生まれた幾つもの自論をリポートにまとめると、より経済を理解できるようになる。これを「自論リポート」と呼ぶ。
自論リポートは特にルールがなく、自分が気になるテーマを選び、自由に書くだけでいい。とあるベンチャー企業に興味を持ったなら、その企業の未来像を予想したリポートを書いてみる。あるいは「この戦略はおかしい」と思う企業があれば、同業他社の失敗事例を引用して分析したり、新しい戦略を自分なりに考えてみる。
小学生が夏休みにやる自由研究のようなイメージで、どんどん自論リポートを作成する。1つの企業を深く追求した長文リポートでもいいし、短い業界リポートをたくさん作ってもいい。要は、自分のスタイル次第。
自論リポートのポイントは、作れば作っただけ「自分の関心」が見えてくること。リポートがIT企業に偏っていれば、その業界に関心がある証拠。戦略を立案するような内容ばかりなら、シンクタンクやマーケティングなど、企画系の仕事に興味が向いていると推測できる。自論リポートの傾向を眺めれば、そこには“素の自分”がいるではないか。これこそが、本来の「自己分析」と呼ぶに相応しい手法だろう。
自論リポート作りは同時に文章力を鍛えるため、ES(エントリーシート)の作成ですら簡単に思えるようになる。また、文章を考えるとは、自分の考えを正確に言語化すること。相手を納得させる論理的思考が身に付き、コミュニケーション力を伸ばすことにもつながる。
正しく情報をインプットし、自分なりにアウトプットする。そのためには半年間、新聞を読み比べてリポートを作成する。確かに手間はかかるが、ここまでやらなければ「本当の自分」など分かりやしないということなのだ。
そろそろバカな就活をやめようではないか
本連載の元になった書籍『就職は3秒で決まる。』は、いわゆる就活成功のためのマニュアル本とは一線を画す。マニュアル本とは、「あれをした方がいい」「これをした方がいい」と“すべきコト”を並べ、就活生を最終目的=就職まで導く。
ところが本書は、あえてその逆。「あれはしない方がいい」「これはやめた方がいい」といった具合に“すべきでないコト”を中心に解説しながら、最終目的を目指す。人が嫌いなことをすれば、嫌われるのは当たり前。それは面接も同じこと。総じて就活生は、すべきでないコトを平気でやってのけ、それを正しいと信じて疑わないため、面接官に嫌われる。ここで大きく発想を逆転させる。
すべきでないコトを、しないようにする就活。こちらの方がはるかに面接官に喜ばれるに違いない。なぜなら面接官は、似たような就活生にうんざりしているから。そんな彼らの心境を考えれば「すべきでないコトを、しないようにする」方が、よほど賢い戦略であるはず。
「今思えば、バカな就活をしていたよなあ。今なら絶対、あんなやり方はしない」。大人たちは時々、就活の苦労話に花を咲かす。あんな時代もあったねと、みんな懐かしい笑顔に戻る。
でも、何がバカだったのか。どうすればバカな就活を避けることができるのか。そもそも、バカでない就活とは……。という肝心の部分を、大人は就活生を含む子どもたちに伝えていない。その話をすれば、どれだけバカな就活を避けることができるだろう。そろそろバカな就活をやめようではないか……。
連載「就職は3秒で決まる。」について
この連載は誠ブログの人気エントリーから誕生した書籍『就職は3秒で決まる。』の一部を抜粋、編集したものです。就活の最大の問題点は「ビジネスマンが就活・仕事に関して、本音で語ってこなかったこと」。例えば、多くの面接官が採用する「3秒ルール」は、面接官が語りたがらない本音です。いわゆる面接対策本のような小手先のテクニックではなく、面接時の心構えや失敗のない仕事の選び方など、メンタル面を中心に斬新かつ大胆に提言しています。就活のプロではないからこそ書ける「リアルな本音」を綴ったのが『就職は3秒で決まる。』なのです。
目次
第1章:3秒で選別される学歴
- 何もしなくても就職できる「就活エリート3万人」の実態
- 採用の当落線上をさまよう「エリート予備軍7万人」 ほか
第2章:面接は3秒で決まる
- 面接官はみな自分の「3秒ルール」を持っている
- オーラのない就活生に用はない ほか
第3章:面接官が持つ「異なる3秒」
- 優秀な就活生ほど役員に落とされるワケ
- 人事部は「バカを再生産する部署」 ほか
第4章:「コンサル脳」で企業を探す
- 自己分析をする就活生に見込みはない
- 第1志望の企業を決めてはいけない ほか
第5章:「コンサル脳」で自分を仕込む
- モジモジしたOB訪問では成果ナシ
- 【新・会社説明会】株主総会のように参加する ほか
第6章:「コンサル脳」で面接を考察する
- 学生団体の“副会長”はもういらない
- 「自分らしさ」を出してはいけない ほか
筆者紹介:荒木亨二(あらき・こうじ)
1971年、千葉県生まれ。ビジネスコンサルタント&執筆業。荒木News Consulting代表。早稲田大学で心理学を学び、帝人株式会社に入社。半年で退職。その後PR会社で働きながら独自のマーケティング理論を確立、28歳でフリーランスとして独立。以降、マーケティングリポートの執筆、セールスプロモーションのプランニング、PRコンサル、新規事業の企画開発、農業ビジネス主宰など、業界をまたいで様々なビジネスを手掛ける。
学生時代は就職氷河期第1世代として就活を体験。独自の就活スタイルを武器に、面接の突破率は9割以上を誇る。このとき、就活にまつわる「ヒジョーシキな常識」に疑問を持ち、以降、ビジネスコンサルタント業の傍ら就活に関する取材を行う。著書『名刺は99枚しか残さない』(メディアファクトリー)
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