「付加価値があれば確実に買っていただける」――ドコモに聞くdメニュー/dマーケット:移行ではなく発展(2/2 ページ)
11月18日に開始された「dメニュー」と「dマーケット」は、iモードをスマートフォンに移行させる取り組みの集大成ともいえるが、ドコモの前田氏は「移行ではなく発展」と言う。スマートフォンにおけるコンテンツビジネスの狙いを聞いた。
「Hulu」「2Dfacto」との棲み分け
―― スマートフォンではどんなジャンルのコンテンツが人気になりそうでしょうか。
前田氏 大きな傾向がどこまで変わっていくかは予想できない部分はありますが、フィーチャーフォンと比べると、リッチさゆえにブレイクするジャンルはいくつかあると思います。動画はその1つです。電子書籍は、コミックはもちろん、文芸や雑誌も、バーチャルに本を読んでいる体験を提供できれば、市場が拡大する大きなジャンルになると思います。
―― 電子書籍は「2Dfacto」を提供し、動画は「Hulu」とも提携しています。これら2つのサービスとdマーケットとの棲み分けはどう考えていますか?
前田氏 HuluはXiタブレットを展開するタイミングで取り組みを始めました。中身は海外コンテンツで、映画よりもドラマが多いです。Xiを体験してもらえるよう3カ月無料のキャンペーンを実施するという、ある種のマーケティング施策です。一方、動画サービスを発展的にとらえて本格的に展開するのがVIDEOストアです。5000タイトルをそろえ、月額525円で見放題。洋画やドラマなどHuluとかぶるものはありますが、邦画や日本ドラマもあるのでジャンルは広いですね。より幅広いお客様に動画サービスを手軽に楽しんでいただける環境を作りつつ、動画ビジネスを発展させることが狙いです。もちろん、Huluもサポートしていきます。
渡辺氏 2Dfactoはリアル書店と連携した“ハイブリッド書店”として、電子書籍全体の市場を盛り上げていく取り組みを、大日本印刷さんとやっています。BOOKストアはリアル書店というよりも、商品、UI(ユーザーインタフェース)、ビュワーなどをモバイル向けに特化しています。2Dfactoはドコモと大日本印刷のシナジーを使ったものですが、BOOKストアはオープンなスタンスで、出版社とダイレクトにやり取りできることが違いです。
前田氏 BOOKストアのスタンスは柔軟です。出版社さんも、さまざまな作品をお出しいただける環境になっています。
渡辺氏 特にコミックのラインアップが非常に多く、事実上日本でナンバーワンでしょう。3万タイトルのうち、半分がコミックです。
前田氏 コミックも動画もそうですが、数があればいいというものではありません。品ぞろえがよくても、読みたいタイトルがなければ意味がありません。タイトル数を増やすことも重要ですが、皆さんに支持されているコンテンツがそろっているかを重視しています。
―― BOOKストアには、dマーケットにしかないタイトルも多いのでしょうか。
渡辺氏 集英社さん、講談社さん、小学館さんなどがドコモだけに出していただくコンテンツも増えています。時間の問題で他のサービス向けにも提供されるでしょうが、先行していただけています。オープンなスタンスで出版社の意思をくみ取っていることが大きいのだと思います。
―― どんな意思をくみ取っているのでしょうか。
渡辺氏 (出版社と配信側の間に)取次があると、そこの論理が入って配信スケジュールが遅れたりしますが、ドコモと出版社が直接やり取りするBOOKストアでは、そういったことはありません。出版社側は売りたいものを売れるわけです。
前田氏 分かりやすいところで言うと、ブックサーフィン、XMDF、EPUB、ドットブックなど、電子書籍のフォーマットはすべてサポートします、ということです。簡単なことではありませんが(笑)。
渡辺氏 出版社側の要望も反映して、ドコモ側で(コミックの)コマの動きや拡大の比率などを加工しています。
―― 端末ごとの動作確認も大変そうですね。OSのバージョンアップもありますし。
渡辺氏 自社端末なのでテストできる環境は整っていますし、端末はしっかり対応させていきます。
コンテンツの引き継ぎが課題
―― iモード向けのドコモマーケットにもMUSICストアとBOOKストアがありますが、内容はdマーケットと共通なのでしょうか。
渡辺氏 ほぼ共通ですが、スマートフォンに向けた準備もしていただいています。BOOKストアの場合、iモードでは(コミックは)1話のみの販売でしたが、スマートフォンでは1話と1巻を併売できます(1巻は単行本と同じボリューム)。なので電子書籍のタイトルは3万ですが、ファイル数は膨大です。
―― お試しで1話だけ買って、気に入ったら単行本を買えるのはいいですね。iモード向けドコモマーケットで購入したコンテンツはスマートフォンに引き継げるのでしょうか。
渡辺氏 本当はやりたいのですが、電子書籍はライセンスの問題があって難しいですね。
前田氏 音楽については、一定の再ダウンロード期間が終わるとダウンロードできなくなっています。要望は申し上げているのですが。microSD経由では移行できる場合とできない場合があります。
―― スマートフォン間の移行はどうでしょう?
前田氏 microSD経由ならできます。今後は、何台までなら同じアカウント(電話番号)で利用できるといった方向を実現できるといいですね。
また、11月時点では間に合っていませんが、2012年3月からWi-Fi環境でも、dメニューのマイメニュー登録とdマーケットでのコンテンツ購入時の決済ができるようになります。今はWi-Fiでの決済はできないので、3GかXiに切り替えていただく必要があります。なお、Wi-Fi環境で決済するには、PC向けのdocomoIDとパスワードを取得いただく必要があります。
dメニュートップの工夫、海外展開も視野に
―― dメニューについて、トップ画面をいかに見やすく、各コンテンツへいかに誘導をかけるかも重要だと思います。UIで工夫したところはありますか?
前田氏 フルタッチパネルに合わせた使いやすさや、操作ミスがないようこだわりました。dメニューは“オープンなインターネット環境”の色彩が濃くなるので、他のポータルとの競争環境に置かれます。メニューリスト、マイメニュー、カスタマーサポートはもちろんしっかり提供しますが、滞在して使っていただけるコンテンツも増やしています。ページが長すぎるのはどうかと思いますが、ボタンだらけになるとあまり使われません。iモードの経験を生かし、面白そうなコンテンツを分かりやすく出していきたいですね。
検索機能はGoogleと協力して提供していますが、単純なGoogle検索だけでなく、(dメニューとdマーケットを混在させた)コンテンツの横断検索もやります。
―― 過去の購入履歴からコンテンツを勧めるレコメンド機能はありますか?
前田氏 11月時点ではありませんが、なるべく早期にやろうと準備を進めています。これはdメニューとdマーケット全体で行う必要があると思っています。我々の戦略の1つに“パーソナル化”があります。その代表がiコンシェルです。1人1人に合わせたサービスを追求していますし、それはスマートフォンでも変わりません。iコンシェルと連動した形もあるでしょう。
―― iモード向けドコモマーケットのように、ドコモポイントを利用してコンテンツを購入することはできますか?
前田氏 MUSICとBOOKストアではポイントを使えます。iモードでは最大500ポイント/月ですが、dマーケットでは1000ポイント/月まで使えます。さらに、2012年2月末までは2000ポイント/月まで使えるキャンペーンも実施します。
―― iモードのように、海外の通信事業者にdメニューの技術やコンテンツを提供する考えはありますか?
前田氏 これからだと思いますが、これまで海外展開していく上で難しかったのは、日本と海外端末の仕様が違うことです。一方、スマートフォンは世界共通の仕様なので、海外のユーザーに対してコンテンツを提供しやすく、やりやすい環境になっています。サードパーティや通信事業者との連携は、積極的に考えていきたいと思っています。
―― スマートフォンに移行してパケット定額の上限が上がり、なるべくコストを抑えたいという人も多いと思います。そんな方々にdメニュー/dマーケットを使っていただけるようなメッセージをお願いします。
前田氏 お金を取らない限り使えないコンテンツはいくらでもあります。満足いただく対価としてお金をお支払いいただければ、新たに見えてくるコンテンツの世界があります。Android マーケット上にある全世界の無料コンテンツを楽しむことも、スマートフォンの醍醐味ですが、dメニューやdマーケットを通じて、新しいスマートフォンライフを楽しんでいただきたいと思います。ぜひご期待ください。
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