MNPで通信料金、端末価格が安くなる?

» 2004年01月22日 23時21分 公開
[斎藤健二,ITmedia]

 総務省主催の番号ポータビリティ(MNP:Mobile Number Portability)導入を巡る議論も第4ラウンドに突入。1月22日の議論の中心となったのは、早稲田大学の国際情報通信研究科の三友仁志教授が発表した、日本におけるMNP便益の試算だ。

MNP導入の総便益は4728億〜6401億円

 MNP導入を巡る議論の争点は、設備投資などのコストが“高いか、安いか”という点に集中していた(2003年11月の記事参照)。その中で、「利用者のニーズを考えた場合、コストをかけずに番号通知で間に合うのではないか」といった提案が、通信キャリアを中心に出されてきたという経緯がある。

 導入コストだけを見るのではなく、MNP導入によって社会全体にもたらされる便益を考えるべきだと、話が進んだのが第3回研究会だ(2003年12月の記事参照)。

 今回三友教授から出された総便益は、4728億〜6401億円という膨大な額となった(法人ユーザーの利用率、端末買い換え頻度によって値が変化)。しかも携帯キャリアの料金収入も、“ほぼ不変”という結論だ。MNP利用ユーザーが10%時の計算である。

 こうした利益に対して、MNP導入コストは915億円〜1487億円(携帯電話事業者による最新の試算)。留守番電話サービスなどネットワーク付加サービスをすべて含むフルスペックの仕様でのコストだ。

 導入コストと総便益を比較すると、便益が圧倒的にコストを上回る。「全員に利益があって、みんな喜ぶ。この結果によるなら、反対する人はいない」(法政大学の黒川座長代理)

機種変更時の端末価格が安くなる

 三友教授が試算した便益の内訳を見ていこう。

内訳 便益学
MNP利用者 直接便益 37億〜855億円
MNP非利用者 間接便益1 1995億〜2850億円
間接便益2 2696億円
総便益 4728億〜6401億円

 MNP利用者の直接便益とは、電話番号を変更した際に通知にかかる費用を削減できることを指す。英国でOFTELが試算したMNPの経済評価手法に従い、計算を行った。MNP利用者中の法人ユーザーの割合を0〜50%の幅で仮定しており、これによって額が37億〜855億円に変動している。

 直接便益に比べて、年間1995億〜2850億円と額が大きいのがMNP非利用者の間接便益1だ。これは、MNP導入によってユーザーを囲い込む力が弱まるため、機種変更時の価格を下げようという圧力が働くことから生まれる。現在、端末の新規価格と機種変更価格は5000円ほどあり、新規のほうが安い。

※発出で「新規のほうが高い」と誤って掲載されておりました。正しくは「新規のほうが安い」です。お詫びし、訂正させていただきます

 他キャリアから顧客を奪うため、新規端末は安価に設定されているが、現在のユーザーが機種変更する端末価格は新規に比べて高い。同じ番号を使うには機種変更するしかないからだ。

 ところが、MNP導入によって他キャリアに乗り換えても同じ番号が使えるようになると、高くても機種変更してくれるユーザーは減る。また継続インセンティブ(年間割引など)の充実が見込まれる。その結果、「新規と機種変更の価格差が減るだろう」(三友教授)と想定できる。

 1995億円は、平均してユーザーが2年に1回機種変更を行った場合で、2850億円は1.4年に1回機種変更した場合の推定だ。

 最後に間接便益2は、「競争促進による料金の低減化」(三友教授)に当たる。基本料金は変化せず、通話料金が10%低下するという仮定の元だが、年間2690億円の便益(加入者一人あたり3900円)が発生する。しかも料金の低減に伴い、通話量自体は増えるため、通信キャリアの総通話料金収入は“ほぼ不変”という試算結果だった。

 総務省が「(MNPは)ユーザーの利便性という観点からニーズがあった。また(各キャリアの)競争上も効果がある。2つの面から(推進したい)」と話すように、競争促進によってユーザーが支払うコストが低下することを、今回の試算は具体的に示したものとなる。

MNP導入コストを誰が負担するのか?

 全体の“便益”で見た場合、番号通知コストがいらないだけではない。MNPによってキャリア間の競争が促進されるため、機種変更価格が低下し通話料金も低下する。これがMNPの総便益のかなりの部分を占める。

 つまり、MNP導入によってキャリアを変更した人だけでなく、すべてのユーザーがメリットを得る。これがMNPだということだ。

 ただし、“受益者負担”という原則の元では、MNP非利用者もコストを払うべきということになる。「費用をどのように消費者側に転嫁するかが問題」だと三友教授が言うように、この点は議論の余地があるようだ。

 例えば「全コストを利用者だけに乗せると、個人ベースではコストが便益を上回る。このやり方だとMNPの利用者はほとんどいないということになる」(三友教授)。

 2月に予定されている第5回の研究会では、この当たりを中心に議論が行われる予定となっている。

回数 内容
第5回 実現方式、費用負担の検討。骨子案
第6回 報告書(草案)取りまとめ
第7回 報告書の取りまとめ

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