格安衛星電話ありマス(ただし日本以外)アジアから降ってくる衛星電話「ACeS」(1/2 ページ)

» 2004年03月16日 09時25分 公開
[河野寿,ITmedia]

 ACeS(エイセス=Asia Cellular Satellite)は、フィリピン、マレーシア、インドネシア、シンガポール、インドなどのいわゆる東南アジアを中心としたエリアをカバーする衛星を使った電話システムである。

 衛星電話というとインマルサットや一度経営が破綻したイリジウムのような仰々しいシロモノを思い浮かべるかもしれないが、ACeSはそれらとは違ってきわめて手軽に導入でき、安価な通信手段として位置づけられているのが特徴である(イリジウムについては文末の関連記事参照)。

GSMとのデュアルバンド機能を持つR190。巨大なアンテナが目を引く

カバーエリアはアジア全域

 上記でも述べたように、ACeSは東南アジアを中心としたカバーエリアをもっている。具体的には、西はパキスタン・インド、東はパプアニューギニア、北は中国と日本(!)、南はインドネシアまでとなっている。

 現在使われている衛星は「Garuda-1」というインドネシアの静止衛星で、インドネシアのスラウェシ島上空(東経123°)から、多数のスポットビームで対象となるエリアに向けて電波を出している。

ACeSのカバーエリア

 対象となるエリアにいるユーザーは、アンテナを衛星に向けて通話を開始する。例えば、東京(東経139.41°、北緯35.41°)から衛星を見ると、仰角は45.333°、方位角は206.943°という値になる。

 電波は衛星を経由して、地上にあるNPS(National Service Providor)と呼ばれるゲートウェイへ到達する。NSPは現在のところ3カ国なので、それ以外の国にかける場合にはゲートウェイを経由して国際電話で世界中と通話が可能になるというしくみだ。

 ACeSのような国をまたいだ衛星電話の場合、携帯より遙かに広い範囲から電話をかけるので、発信元と通話先の関係がややこしくなる。また、ACeSではGSM電話と同様にSIMカードを替えることで他の国の番号が使用できるので、さらに複雑である。もう一つ、GSMの使える状況であればGSMのローミングを使用することもできるので(GSMが使える携帯型端末の場合)、すぐには理解不能なほど難解となる。

 例えば、あなたが日本に電話をかける場合を考えてみよう。このとき、ACeSの電話機にはインドネシアのSIMカードが入っているとする(ここではGSMのローミング機能は話がややこしくなるので無視しておこう)。

 この場合、日本への通話は、「エリアのどこか→衛星→インドネシアのNSP→日本」という経路を通る。最後のインドネシアと日本の間の通話は国際通話である。

インドネシアの番号(SIMカード)を使って日本に電話をかける

 同じような通話でも、SIMカードをフィリピンのものに替えると、「エリアのどこか→衛星→フィリピンのNSP→日本」という経路になるわけだ。

フィリピンの番号を使って日本にかける

 現状ではNSPはサービスエリアの各国すべてにあるわけではなく、インドネシア、フィリピン、タイにあるだけだ。これ以外に、台湾とインドにも設置される予定である。

 このNSPのある国にかける場合には国内通話のような扱いになるので、その国のSIMカードを使ってかけた方が安い。

 NSPのある国以外では、国際通話を使うのでずいぶんと通話料金が高くなるようなイメージがあるが、そうでもない。

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