ITにまつわる15の俗説・都市伝説を斬る(3/4 ページ)

» 2004年08月11日 16時06分 公開
[IDG Japan]
IDG

その8:ハッカーは他人のコンピュータのハードディスク内のデータを破壊できる

 「MyDoom.Fワームは、ウイルスが実際にデータを攻撃する時代に後戻りした」と話すのはMcAfee Securityの上級マネジャー、ブライソン・ゴードン氏。ファイルを攻撃するウイルスやワームは比較的珍しいが、インターネットに接続するすべての人にとってナンバーワンの災厄だ。

 MyDoom.Fは、感染したPCからWord、Excel、グラフィックスファイルを探し出し、その一部をランダムに削除するなどの有害な活動を行う。感染したユーザーのうち40%はWordファイルを、60%はExcelファイルを失っている。

 昨今のハッカーはシステムを破壊するのではなく、乗っ取ろうとする。ウイルスやワームはデータを削除するよりも、無傷のPCをスパム送信やWebサイトの攻撃に利用する。「生物学的なウイルスと同じで、繁殖する前に宿主を殺してしまったら、コンピュータウイルスは感染を広げられない」と米国土安全保障省の傘下にあるUS-CERTのネットセキュリティアナリスト、アレン・ハウスホルダー氏は語る。

その9:節電のために毎日PCの電源を切ると、PCの寿命が縮む

 この問題は議論を呼んでいる。一方の陣営は「PCのオン・オフは部品にストレスをかける」と主張し、もう一方は「毎日電源を切るのはいいことだ。優れたプログラムやOSだって、時々シャットダウンしないとぐずることがあるんだから」と言う。

 この問題にはっきりした答えはないが、ほとんどの専門家は、電源をオフにするのは害になるよりもむしろ益になる――しかも電気の節約になる――という考えに傾いている。Microprocessor Reportの編集長ケビン・クレウェル氏は、こちら側の意見を支持している。「プロセッサの寿命は通常10年」で、電源のオン・オフがCPUに影響を与える前に、PCがデッドウェイトになるだろうと同氏は話す。

その10:政府は皆の電子メールを読んでいる

 この俗説は(ケネディ大統領を撃ったとされる)芝生の丘の狙撃者、秘密結社イルミナティ、エリア51(米軍秘密基地)を吹聴したのと同じ陰謀論者が生み出したものだ、というのがわれわれの考えだ。つまるところ、実際に政府職員にそんなことをする暇がどれだけあるだろうか?

 「これは明らかに作り事だ」とジョージタウン大学の法学教授で、電子プライバシー情報センター(EPIC)のエグゼクティブディレクターを務めるマーク・ロッテンバーグ氏は言う。プライバシー問題の監視団体が信じないのなら、誰も信じないはずだ――が、そうでもない。

 「今、政府は皆の電子メールを読んでいないかもしれない。しかし、だからといって政府が将来(メールの傍受に)興味を持たないとは限らない。2〜3年後には、皆の電子メールが政府に見られているかもしれない」と同氏は付け加えた。幸いなことに、われわれ米国民には合衆国憲法修正第4条(不当な捜索の禁止)がある。政府機関――連邦捜査局(FBI)、中央情報局(CIA)、国家安全保障局(NSA)――は相当の理由なしに国民の電子メールを読むことはできない。ただし、スパイ行為に関連した特殊な状況の場合は例外だ。

 米反テロ法(Patriot Act)では、政府機関が容疑者および容疑者の通信相手すべてのメールを読むことが認められている。ただロッテンバーグ氏のようなプライバシー擁護団体のメンバーでも、政府がすべての人のメールに目を通しているとは主張していない。

 結局、陰謀論者は自分が正しいと立証されたと思うかもしれない。「大量のメールを分類して、不審なキーワードを探すプログラムは存在する」と民主主義とテクノロジーセンターのアリ・シュワルツ氏は語る。同氏は、諜報機関はこうしたソフトを使っているかどうかを公表していないため、政府が国民のメールを調べている可能性は排除できないとしている。

 不安に感じるのなら、PGP Freewareなどの暗号化ユーティリティをダウンロードするといい。

その11:サダム・フセインはイラクの兵器計画に利用するためにPlayStation 2(PS2)を購入した

 2000年の国連の制裁措置により、フセインがコンピュータハードを入手することは禁じられている。WorldNetDaily.comの報道によると、フセインは弾道ミサイルデータの計算や核兵器の開発、無人戦闘機の制御に使う簡単なスーパーコンピュータを構築するために、4000台以上のPS2を購入したという。

 この話は、政府の流出文書、匿名の軍の情報筋、実在する告発者など、都市伝説の特徴をすべて備えている。理論的に言えば、フセインがPS2を買いあさったために、PS2不足が起きたことになる。

 われわれがこの俗説に唯一信ぴょう性を感じたのが、国防省諜報庁(DIA)に電話で取材した際に、代表者が慎重に言葉を選んだことだ。「確かに、さまざまな機関がこの件を調査した」とこの人物は認めたが、調査結果を明かすことは控えた。「もしもあらゆる技術が軍事応用可能だとしたら、PS2はわれわれにとって興味深いものとなるだろう」。「もしも」という言葉に注目だ。

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