3Gならでは──を生かせるコンテンツの1つが、電子書籍配信。まとまったボリュームの書籍データを配信可能になることから、読み物だけでなく雑誌コンテンツやコミックの配信も始まるなど、変化の波が訪れている(8月27日の記事参照)。
mobidecの講演には、バックグラウンドの異なる2つのコンテンツプロバイダが登場した。電子書籍の1フォーマットであるXMDFを開発し、対応端末やコンテンツ、配信インフラまでを手がけるシャープと、老舗出版社ながら電子書籍配信事業に積極的な新潮社だ。
シャープは、ボーダフォンとドコモ向けには電子書籍対応端末とコンテンツを提供、KDDIにはEZチャンネル向け電子書籍ビューワとコンテンツを提供している。「(電子書籍市場の拡大を目指すに当たって)一番着目しているのは携帯電話」とオンリーワン商品企画推進本部 SST推進センター所長の矢田泰規氏。「携帯は、メールを読むなど文字を読む習慣がある。また本は電車の中で読めるなど、モバイルに合致している」というのがその理由だ。
データもそれを裏付けている。KDDIのデータによると、WIN端末向けに配信を始めた昨年12月から6月の間に、電子書籍の販売は9.2倍、平均伸び率で150%を記録。EZチャンネルの総売り上げに占める電子書籍売り上げの割合も平均54%と好調だ。
KDDIには、WIN導入時にビューワソフトとコンテンツを提供、BREW対応WIN端末では共通フォーマットとして同社の電子書籍フォーマットのXMDFが採用された。「標準の電子書籍フォーマットサービスということで、(KDDIと)二人三脚で進めている」(矢田氏)。EZチャンネルではテキストベースの読み物コンテンツだけでなく、「SPA!」や「Caz」といった雑誌コンテンツを配信するなど、ジャンルも拡大している。
今後は“携帯ならでは”の部分を生かすため、「タウン情報系のコンテンツにPhone toやWeb to、Mail toタグを入れて、見ている場所から電話連絡したり予約を入れたりできるようにしたい」と、さらに機能を強化する考えだ。
矢田氏は、2003年度で14億円と推計される電子書籍市場を、2008年には220億円、2010年には1000億円市場にまで広げたいと話す。そのためは、1)電子書籍を読める対応端末を増やすこと 2)オーサリングソフトを充実させてより多くの電子書籍を開拓すること 3)販売チャネルを充実させて、ユーザーが購入可能な窓口を増やす という取り組みが重要だとし、これらをスパイラル展開することで市場の拡大を狙う。
新潮社の電子メディア事業室の村瀬拓男室長は、「コンテンツ提供側としてどういったポイントで電子メディアに対して取り組もうとしているのか」にフォーカスして話した。
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