立場の違いで温度差〜携帯向け電子書籍の現状:mobidec 2004(2/2 ページ)

» 2004年08月27日 19時00分 公開
[後藤祥子,ITmedia]
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 同社は2002年2月、公式サイトとしては初となる読み物を中心としたサイト「新潮ケータイ文庫」を立ち上げた。電子書籍はオリジナルの新作が少ないというイメージがあるが、人気作家の新作書き下ろしを掲載するなど新しい取り組みが注目を集めている。

 「新潮ケータイ文庫は雑誌と同じ。作家の新作書き下ろしコンテンツを月曜日から金曜日までの毎日、配信する。1回の配信量は新聞の連載小説1回分くらいのボリューム。これを常時20コンテンツくらい毎日更新しつつ提供している」(村瀬氏)。

 新潮社の文芸雑誌の読者層が概ね中高年男性層に偏っている中、新潮ケータイ文庫は若年の女性層がメインユーザー。「グラビア誌でしかアプローチできなかった層に、読み物系コンテンツが届いているのは副次的な効果として面白い」(村瀬氏)。

 ただ、“新作を携帯で”という取り組みに、出版社が力を入れるかどうかは、微妙な問題だと村瀬氏は見ている。「紙の本は、発行部数が増えて一定のコストを上回ったときの利益率が極めて高い。お札を刷っているような感覚で利益が上がる。ここを浸食するような可能性がある(電子出版のような)ものに関しては消極的にならざるを得ない」(村瀬氏)

 赤い枠で囲んだ部分が、紙の出版で高い利益率を出す部分。ここを浸食する可能性があるものに対して出版社は慎重だという

 電子出版では、ビジネスモデルや別の切り口で紙のモデルと分離させるような提供方法を考えていかないと、提供側がおいしいところを多少削ってでも電子メディアの発展に貢献する筋合いは全くない、という見方もあるという。

 「新潮社は年間の売り上げがだいたい300億円くらいで、電子メディア関連の事業は全体の0.3%以下。売り上げは1億円に満たない。全体の99%が紙に依存しているモデルの中でどうやって出していくのか。その部分で納得できるような構造をきちんと提示しないと、著作権者との間でなかなかうまい合意が得られないという感じがある」(村瀬氏)

 紙の市場は出版社にとってまだまだ大きなものであり、電子書籍によって店頭や流通の現場で扱いが悪くなると、会社の命運を左右するような話になる。「今のところはまだ電子書籍は市場として立ち上がっていない。市場として立ち上がってきたら、紙の市場との調整でぎりぎりの選択をしていかなくてはならないような局面になる」(村瀬氏)。

 とはいえ、いつかは電子書籍市場が本格的に立ち上がるときが来る。その際、既存の市場との関係で困った事態にならないために事前に布石を打っている──というのが、新潮社が電子書籍に進出した1つのポイントだ。

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