670万台から2億台へ〜Symbianのスマートフォン戦略

» 2004年10月07日 18時44分 公開
[末岡洋子,ITmedia]

 携帯電話向けにOSをライセンスする英Symbianの年次イベント「Symbian Expo 2004」が、ロンドンで開幕した。CEOのデビッド・レビン氏は記者発表会を行い、携帯電話市場の現状と今後の戦略について話した。

 デビッド・レビンCEO。スピーチ中、富士通の「らくらくホン」を絶賛

 NokiaやMotorola(その後撤退)ら端末ベンダーが集まり、携帯電話向けOSの開発・ライセンス供与を行うSymbianを設立したのが1998年。それから6年、Symbian OSを搭載した端末は、モバイル業界の成長に合わせて増え続けている。

 Symbian OSの採用状況

 2004年9月末の時点で、6メーカー27機種のSymbian OS搭載端末が市場に投入され、200のオペレータネットワーク上で稼働。現在も10メーカー40機種が開発中だ。ライセンシー13社の中には、富士通や三菱電気などの日本メーカーも含まれている。「F900iC」など3G端末6機種を提供している富士通は、Symbianの成功事例としてよく引用されている

 Symbianが優位点として挙げるのが、豊富なアプリケーション群だ。商用提供されているSymbian向けアプリケーションは、現在3254本。アプリケーションプロバイダのHandangoによれば、Symbian向けアプリケーションの売り上げは倍増ペースの伸びを示し、SymbianユーザーはほかのOSベースの携帯電話ユーザーに比べて、18%多くアプリケーションをダウンロードしているという。

 ただし全体の市場から見れば、Symbianをはじめとするスマートフォンは、まだ少数派だ。米IDCによると、2003年の携帯電話総出荷台数は約5億3340万台。うち、スマートフォンは960万台にすぎない。前年比では181.6%増となっているが、普及に至るまでの道のりは長い。「技術ではなく、どうやってビジネスモデルや仕組みを構築し、ユーザーに価値をもたらすかが課題」(レビン氏)。

 Symbianが狙うのは、同社が「中間層」と呼ぶマス市場。2003年に出荷されたSymbian OS搭載端末は670万台で、市場の主流を占めるのはメーカー独自のOSを持つ携帯電話だ。Symbianは4〜5年後の潜在市場を2億台と設定した上で、それに向けた取り組みを話した。

 レビン氏がフォーカスするのは、「使いやすさ」「アプリケーションの認定プロセス」「コスト」の3つだ。中でもコストは、Symbian OS搭載端末の最低開発コストの予想値を引用し、「2003年には132ドルだった最低開発コスト(無線通信ライセンスを除く)が、ムーアの法則や市場規模の拡大により、2008年には78ドルまで下がる」(レビン氏)と説明。開発コストが下がれば、販売価格も下げられるため、高機能な端末を比較的安価で販売できるようになるとしている。

 また、ユーザーの啓蒙やエンタープライズ市場の取り込みも急務だとレビン氏。エンタープライズ市場へのアプローチは、IBMのミドルウェア技術を活用したエンタープライズソリューションの開発というこれまでの取り組みに加え、新たにIntelとの提携によるSeries 60ベースの3Gレファレンスプラットフォームを提供することも発表した(10月6日の記事参照)。「端末メーカーは市場投入までの期間を短縮でき、差別化に注力できるようになる」(レビン氏)

 Symbianベースの3G端末

 3Gについては、Symbianベースの3G端末が11機種出ている日本が市場の中心。欧州市場では、主流の通信オペレータが今年からサービスを始めたばかりで、本格的な普及は来年以降という見方だ。また、NTTドコモやVodafoneらが端末プラットフォーム技術の検討を行うために設立したコンソーシアム「OMTP」(Open Mobile Terminal Platform)については「サポータとして署名した。できる範囲で支援する」と述べた。

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