12月1日から3日まで、東京ビッグサイトでNECが主催する「C&Cユーザーフォーラム&iEXPO 2004」が開催されている。2日の基調講演には、KDDIの小野寺正社長が登場。「ユビキタス・ネットワーク社会がもたらす新たなビジネスシーンの実現」と題し、ユビキタス社会の実現に向けて行われてきたこれまでの取り組み、今後の課題などについて、同社の例を交えて講演を行った。
小野寺氏は「ユビキタス社会とは、『いつでもどこでも誰とでもつながる』ということ。そしてそれは携帯電話が出てきたときに言われたことでもある」と定義。携帯電話の普及率はすでにかなり高いが、携帯電話市場はまだまだ伸びる、とした。また「これまでは電話なら電話といった専用のデバイスを、同じもの同士で接続するのが当たり前だったが、これからは違う種類のデバイスもつながることが当然になり、端末やネットワークといったことを意識せずにコミュニケーションができるようになる、そうならないとユビキタス社会は実現できない」と述べた。
ユビキタス社会の例として、小野寺氏は「冷蔵庫の中にあるものを知らせる」「電気の消し忘れや鍵を閉めたかどうかを外から確認」「旅先で携帯電話に観光情報を流す」といった、身近な例をあげた。
これらの例は、RFIDタグを利用するなどにより技術的には実現可能になっていたり、サービスがすでに実用化されていたりするものだ。しかしこういった使い方が実際には普及していないのは、ユーザーの求めるものと、企業の意識とがかみ合っていないから、と指摘。「どうして利用されていないのかを、(企業側は)真剣に受け止めるべき」と述べた。
ユビキタスネットワークを実現するインフラは、大きく分けてコアネットワーク(バックボーン)とアクセス系ネットワークに分けられる。コアネットワークはユーザーに見えないように提供するものだが、基地局からユーザー端末までのアクセス系ネットワークはユーザーに目に見える形で提供するものであり、アクセスするためのデバイスは、ユーザーが自分で選ぶことができる。
重量が軽く、価格も安く、いつも持ち歩いている携帯電話は、アクセス系のデバイスとして一番優れている。そして携帯電話の大きなアドバンテージは、常時電源がオンになっているところだ。自分から情報の受発信をしたいときはいいが、相手からいつでも連絡を取れるためには常に電源が入っていることが必須なためである。また、日本ではキャリアが販売コミッション(インセンティブ)を払っているため、端末の価格もPDAやノートPCに比べて安い、としながらも「携帯電話がオペレータブランド100%なのは日本くらい。携帯電話の値段は、本当は我々キャリアにとっては苦しいところ」とコメントした。
社員証やクレジットカード、プリペイドカードといったものが携帯電話に統合されていく動きや、一つの携帯電話を会社や家庭では内線電話として、外では携帯電話として使うといった利用法を紹介。同社の「OFFICE WISE(6月2日の記事参照)」や「ケータイオフィス(2003年9月30日の記事参照)」などを例に、「一つの携帯電話がいろんな場面でいろんな使い方ができ、システムをまたがっても使えるようにしていきたい」と話した。
その場合、重要な課題となるのが認証とセキュリティだ。端末の認証はすでにクリアできているが、個人認証をどうするかが問題となる。
小野寺氏が個人認証のキー技術として挙げたのが、位置情報の利用である。位置情報や、ステータスを相手に知らせてよいとユーザーが思えば、より効率的なコミュニケーションが取れるようになる。「携帯電話が今どこにいるのか、これが分かることによって、携帯電話は今後、もっといろいろな使い方ができるようになる」と指摘した。
しかし、位置情報の利用を考えるとき、必ず絡んでくるのがプライバシーの問題だ。勤務時間外は本人が了承しないと位置情報を取れないようにする、などといった取り組みをしている、と話し、「位置情報をどう管理するか、どう使うかについては、プライバシーへの配慮が不可欠」とした。
もう一つ、携帯電話をビジネス面で利用することを考えると、難しいのが企業向けのアプリケーションをどのように端末に導入するかだ。JavaやBREWを導入し、業務用アプリケーションを追加できる仕組みは作ったものの「企業向けのアプリケーションを後付けで入れるのは難しい。ここを何とかしないといけない」と現状では難しいことを認めた。
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