東京タワー「そこから東京タワー見える?」Mobile&Movie 第153回

» 2005年03月11日 18時29分 公開
[本田亜友子,ITmedia]
作品名東京タワー
監督源孝志
制作年・製作国2004年日本作品


 恋はするものでななく、落ちるもの……。そんな人妻と大学生の禁断の恋を描いた「東京タワー」。本作品では、黒木瞳さんと岡田准一さんのカップルがお揃いで持っているINFOBARのほか、auの携帯電話が数多登場。秘密の恋には、携帯電話のかけ方にもルールがあるようです。

 初めて出会った瞬間に、恋に落ちてしまった詩史と透。母の友人として紹介された詩史は、息を呑むほど美しい女性でした。CMプランナーの夫のバックアップでセレクトショップを経営し、身のこなしや話す言葉も優雅でパーフェクト。透の熱い視線に気付いた詩史も、透の純粋さが新鮮で、年の差を越えて付き合い始めたのです。

 会うたびに詩史に惹かれていく透でしたが、透の方から連絡をすることはできません。詩史の携帯電話から連絡があるのは、たいてい平日の夕刻。その時間にちゃんと電話に出られるように、透は部屋でじっと連絡を待つだけ。詩史の好きなクラシックを聴きながら、詩史の好きな本を読んで、思いを馳せるのです。

 透の親友の耕二は、ひたすら詩史を待ち続ける透を、よく我慢できるものだと半分は呆れ、半分はその一途さに憧れていました。透に影響され、耕二は自分も年上の女性と恋がしたいと思うように。耕二にとって恋愛はゲーム。後腐れの残らない、ひとときの火遊びができればいいと思っていました。

 そこに都合よく現れたのが喜美子。アルバイト先の地下駐車場で、車庫入れに困っていた喜美子を助けたことから、2人の関係が始まってしまいます。他に彼女がいる耕二にとっては、喜美子は興味本位の年上の女──のはずでした。しかし、喜美子から滲み出る、主婦のいじらしさや、女としての激しさに、だんだん嵌っていってしまうのです。

 こうして、年上の女性との濃密な恋に落ちていった透と耕二。徐々に透は、嫉妬に苦しむようになります。会って食事をしてわずか数時間で、夫の待つ家へと帰っていく詩史。何度か引き止めようとしても、今の生活を変えることはできないと拒絶されてしまう。透はいつか詩史が自分だけのものにしたい、と強く思うようになっていました。

 そんな透の気持ちを汲んで、一度だけ2人で旅に出ることを計画した詩史。夫の出張の間だけの甘い逢瀬のはすが、2人の気持ちを引き離す皮肉な結果に。詩史には、今の仕事や住まい、友人、夫を手放してまで、透を選ぶことはできないのです。それを思い知った透は、詩史と距離を置くように。

 一方、耕二の方は、会いたい時にだけ携帯電話に連絡をしてきて、耕二の都合が悪いと逆ギレする喜美子の情熱を持て余すようになってきました。

 「明日にしようよ。連絡待ってるからさ」

 だんだん連絡を少なくしてフェイドアウトできたら──と耕二が目論んでいると、アルバイト先に喜美子が突然やって来ました。彼女がいる目の前で関係をばらされた耕ニは、何もかもを一瞬で無くしてしまったのです。透はそんな耕治を慰めつつも、詩史への想いを断ち切れずにいました。そして、初めて自分から詩史の携帯電話にかけてしまいます。

 「そこから東京タワー見える?」

 「うん。でも違う場所にいる」

 久しぶりに聞いた詩史の優しい声に、感情を吐き出す透。

 「生きてたって意味がないんだ」

 恋に溺れ、もがき苦しむ透を、詩史は救うことができるのでしょうか?

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.

最新トピックスPR

過去記事カレンダー

2024年