ソフトバンク決算は過去最高売上 「純増数にはこだわらない」宮川社長が断行するモバイル事業の“大改造”とは(1/2 ページ)

» 2026年02月10日 15時14分 公開
[小山安博ITmedia]

 ソフトバンクは2月9日、2025年度第3四半期の決算を発表した。売上高は過去最高となる5兆1954億円で対前年同期比8%増、営業利益は同8%増の8841億円で増収増益だった。

 子会社アスクルにおけるランサムウェア被害により、メディア・EC事業は減益となったものの、その他の事業はいずれも好調で落ち込みをカバー。通期予想に対する進捗(しんちょく)も順調だったことから、同社では通期予想を上方修正した。宮川潤一社長は「アスクルへのサイバー攻撃への影響は第4四半期でもう少し上積みされるが、それでも若干の上方修正になる」と話した。

宮川潤一 ソフトバンクの宮川潤一社長

モバイルは純増にこだわらず長期利用者優遇へ構造改革

 通期予想における売上高の進捗は78%で、全セグメントで増収となった。特にPayPayを含むファイナンス事業とディストリビューション事業が2桁成長と業績をけん引。営業利益も進捗率は88%で、通期1兆円の目標に対して順調に推移した。

ソフトバンク 売上高は過去最高を記録した

 セグメント別ではファイナンス事業で倍増。ディストリビューションやエンタープライズも2桁成長と好調で、アスクルの影響で収益が伸び悩んだメディア・EC事業をカバーした。

 売上高、営業利益、純利益ともに進捗率に対して順調で、セグメント別の営業利益でも進捗率は8〜9割に達した。結果として売上高で4%、営業利益で2%、純利益で1%、それぞれ上方修正した。宮川氏は、「期初に約束した過去最高の純利益の目標は十分に到達できるとみている」とした。

ソフトバンク 通期予想を若干ながら上方修正

 主力のコンシューマー事業は、売上高が3%増の2兆2532億円、営業利益が6%増の4683億円だった。モバイル事業ではスマートフォン契約数が2%増となったものの、スマホ純増数はこの第3四半期で10万件の純減となった。「恐らくソフトバンク始まって以来」と宮川氏が言うほどの減少幅。「このグラフを見せるのは恥ずかしい限りだが、意思を持って取り組んだ結果」だと宮川氏は話す。

ソフトバンク スマートフォン契約数は2%増となった
ソフトバンク ただ、純増数だと10万件のマイナスとなった

 背景には、顧客獲得の方針転換がある。これまで、特にY!mobileを中心に契約数拡大に注力し、減少するARPU(1ユーザーあたりの月間平均収入)を補うことで収益の拡大を図ってきた。ただ、積極的な顧客獲得競争によって短期にキャリアを乗り換えて特典を得る「ホッピングユーザー」が多くなったのだという。これによって短期解約が増加しており、「決して放置できない。サステナブルな経営とはいえない」(宮川氏)と判断。2025年9月から構造改革によって、長期利用者に注力する方針とした。短期解約ユーザーを抑制しながら、解約率を低減することで増収増益につなげることが狙いだ。

 宮川氏は、現行の新規ユーザー獲得に対する販促費が、ホッピングユーザーへのインセンティブに偏っていたため、歯止めをかけるために「2025年9月から、(この構造改革という)チャレンジ」(同)を開始したと説明する。結果として、短期解約して他キャリアに移動したホッピングユーザーが戻ってこなかったため、大幅な純減となった。「できれば他社も同様に(ホッピング対策に)ついてきてもらえると(そうしたユーザーが)減っていく」と宮川氏。総務省の有識者会議の議論でも問題になっていることから、規制の制度化を期待した。

 加えて宮川氏は、短期解約のユーザーではなく長期の契約者を優遇する考えを示す。かつて囲い込みとして総務省が規制した長期契約割引について、「ユーザーの目線ではプラスではないか」と指摘。新規事業者参入のタイミングで囲い込みを排除する目的での規制だったが、「事業者・政治目線オンリーだった」(同)。長期利用者を優待する仕組みは、他の業界にも存在すると宮川氏は強調し、「立ち位置を見直した方がいいのではと最近は考えている」と話した。

ソフトバンク 今までは契約数×ARPUで収益の面積を広げていたが、今後は長期利用ユーザーへの注力と、解約率の低減・販促費のコントロールを強化する

 こうしたスタンスから、宮川氏は営業幹部に対しては「純増にはこだわらないと強い意志」を示しているそうだ。獲得コストをコントロールして増収増益にはこだわりつつ、「来期はプラスマイナスゼロでもいいぐらいの感覚で、大改造でうみを出し切ってしまおうと、ちょっとチャレンジング」と意気込みを語る。

 現状の取り組みによって、ホッピングユーザーが移動し終わって、長期ユーザーが増えると解約率が低下するが、その成果が現れるのに半年程度は必要とみる。宮川氏はドコモ並みの低解約率を目指したい考えで、来期には徐々に解約率が低下してくると予想している。「ロイヤリティーの高いユーザーにはそれなりにコストをかけて還元する」と宮川氏は言う。

 ARPUも伸張しており、「Y!mobileからソフトバンクへのブランド移行がうまく機能した」とする。その要因として、PayPay連携を望むユーザーのペイトクプランへの移行や、AIサービスの利用が多くなってY!mobileではデータ容量が足りなくなったユーザーが増えていると指摘する。KDDIでもUQ mobileからauへのブランド移行がプラスに転じていたが、Y!mobileからソフトバンクブランドへの移行もプラスで推移しているという。

 その背景には、ARPUが低いユーザーの方が他社へのMNPが多くなるため、移行しないユーザーはARPUが高めの利用者が多くなってARPUが伸張するという流れになっているそうだ。

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