「U-30 (30歳以上お断り)」のロゴと共に展示されていたのが、「モバイルアドホック環境における『共通の思い出』自動検索」技術の研究だ。
同研究は、“同じ場所”にいるユーザーが持つデジタルカメラやカメラ付き携帯電話をアドホックネットワークで接続し、写真の共有をすることで、新たなコミュニケーションやエンタテイメントを生み出そうというものだ。
「例えば同じイベント会場にいる人たちが別々に撮影した写真の中から、自分の撮影していないシーンやアングルを抽出し、もらうことができます」(河野通宗・CSLインタラクションラボラトリーアソシエイトリサーチャー 工学博士)
写真共有によってコミュニケーションを図るというアプローチは、オンライン写真サービス「Flickr」に近いが、モバイルアドホック接続を前提とすることで、より“リアルな場所”に近くなる。
「GPS携帯電話ならば位置やタイムスタンプもより正確になります。(自分が撮っていない写真の)抽出条件が細かくできますね」(河野博士)
ちなみに同研究がU-30指定なのは、「写真共有の楽しさを理解して、エンタテイメントとして新たな使い方を見つけられるのは30歳以下の若い人だから。ちなみに僕は30歳を超えてしまいました(笑)」。
本稿のメインテーマから外れるが、Open House 2005では基礎研究分野の展示も数多く見られた。
例えば、白石哲也医学博士の「癌のシステム生物学」は、今後のオーダーメイド創薬にとって欠かせない技術の研究だ。また高安秀樹理学博士の「エコノフィジクス」研究は、金融工学シミュレーションという新たなアプローチであり、これまで"人間と雰囲気"で動いていた金融市場に一石を投じるものだ。先端医療と金融で分野は異なるが、どちらもコンピューターサイエンスとクロスオーバーし、その一部になりつつあるという点で共通している。
また、ソニー製品の最高峰ブランド「QUALIA」に使われた事で有名になった、茂木健一郎理学博士の「システム脳科学」研究も同会場で展示されていた。茂木博士は人間の感覚を特徴づける神経機構「クオリア」を研究している。クオリアは脳科学的な見地から重要な研究であるだけでなく、そのメカニズムがシステムとして解明されれば、コミュニケーションやメディア産業に与える波及効果も計り知れないだろう。
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