NTTデータと東京放送(TBS)は6月17日、携帯カメラで撮影したポスターなどの画像から特徴を検出してサーバに送信し、対応したURLを携帯に送り返す「パッとび」の技術を、アニメ映画「あらしのよるに」のプロモーションに活用すると発表した。新技術を新作映画と共同でアピールし、普及に弾みをつけたい考えだ。
パッとびは、NTTサイバースペース研究所が2000年から研究してきた、携帯カメラやWebカメラ向け画像認識技術の総称。今回採用したのは第3世代の「パッとびG byみるら」で、シーフォーテクノロジーの画像特徴量抽出技術を活用している(関連記事参照)。画像の濃淡から特徴量を検出してサーバに送信し、サーバにあらかじめ登録しておいたURLを携帯に送り返す仕組みだ。
写真や絵などを、デザインを変えずに2次元バーコード化できるのがメリット。対応URLはサーバ側で変更できるため、映画公開前はプロモーション用サイトに、公開後は上映館を紹介するサイトに接続する――といった使い方が可能だ。
NTTドコモのiアプリ対応携帯専用。利用は無料だが、http://pattobi.jp/でアプリをあらかじめインストールしておく必要がある。
パッとび普及のきっかけを模索していたNTTデータと、アニメ映画という新ジャンルで斬新なプロモーションが必要だったTBSの思惑が合致し、提携につながった。NTTデータは「かなりおトクな価格」(NTTデータ担当者)でパッとび技術を提供したという。
パッとびは、対応アプリが多くの携帯にプリインストールされているQRコードと異なり、専用アプリケーションをインストールするという“ひと手間”が必要なことが普及のネックになる。今回は接続先のサイト限定のミニゲームや出演者ブログなど独自コンテンツを用意し、“撮影するとトクする”仕組みを構築して普及につなげたい考えだ。
映画ポスターに加え、キャラクターをあしらったノートの絵柄やぬいぐるみのタグなど、関連グッズもパッとび対応にする計画。TBSの他コンテンツとも連携して対応画像を増やす。
TBSは、テレビCM以外の収入源確立の一環として、映画進出に力を入れている。TBSテレビの濱名一哉事業局プロデューサーは「『世界の中心で、愛をさけぶ』や『いま、会いに行きます』など実写映画はヒットしたが、アニメ映画は初挑戦。新技術を使った画期的プロモーションで認知を高めたい」と話した。
TBSテレビの城所賢一郎専務取締役は「通信と放送の融合が話題になっている今、コンテンツを持つ我々と、システムを持つ通信会社がどう補完し、いい関係を作っていくかが重要」とコメント。NTTデータの宇治則孝取締役常務執行役員は「パッとびのようなサービスにはコンテンツが重要な役割を果たす。TBSと協力できた意義は大きい」などと話した。
映画「あらしのよるに」は、オオカミとヒツジという天敵同士の友情物語で、12月10日から全国東宝系劇場で公開予定。原作の絵本「あらしのよるに」(木村裕一作、講談社、全6巻)は累計200万部以上を売り上げ、ストーリーの一部は小学校用の国語教科書にも採用された。
映画の声優には、オオカミ役に中村獅童さん、ヒツジ役に成宮寛貴さんを採用。会見で司会を務めたTBSの小林麻耶アナウンサーは「まだ役が残っていれば、私はいつでも空いてますのでよろしく」などとアピールしていた。
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