イリジウム衛星電話で外洋からインターネットにアクセス勝手に連載!「海で使うIT」(2/5 ページ)

» 2005年08月15日 22時26分 公開
[長浜和也,ITmedia]

まずは揺れる船から音声通話を利用する

 インマルサットもワイドスターも通信には静止衛星を使う。これらの衛星電話は高軌道にある静止衛星と電波をやり取りするため、アンテナの向きを正確に衛星とあわせる必要がある。

 動かない陸上で運用する場合は問題にならないが、常に揺れ動く小型船でアンテナの向きを正確に合わせるのは困難を要する作業である(昨年この連載で行った耐塩害仕様TOUGHBOOKの検証航海では「ワイドスターデュオ」を調達することで近海区域の臨時航行検査をクリアしたが、強風下のクローズホールドで激しくピッチングする船上では通話を確立することが困難であった)。

 そのため、インマルサットもワイドスターも船舶向けのシステムでは自動追尾機能をもった外部アンテナを使うことを推奨している(船舶検査制度で“近海区域”以上に求められる通信設備として衛星電話を使う場合、自動追尾機能を持つアンテナが必須となる)。

 低軌道に周回する複数の人工衛星をリレーで組み合わせて使うイリジウムでは、アンテナの向きがそれほど厳密に要求されない。そのため、本体標準のアンテナだけでも外洋において動揺が激しい小型船から容易に通話を継続できると期待されている。

 KNSLが提供してくれた資料によると、地平線(水平線)から仰角8.2度(腕をまっすぐ目の前に伸ばして拳骨を作るとその大きさがおおよそ10度になる)より上の空間がクリアになっていることが衛星と受信できる条件とされている。「空が完全に見渡せる状態で使用してください」とはKNSLの資料にある文言だが、ヨットの場合、船の真ん中に背の高いマストが伸び、そこからセールが空を覆う。

 今回のテスト航海ではヘッドセールにレギュラージブ、メインセールをフルに展開したヨットのコックピットでイリジウム衛星電話を使ってみたが、それでも片舷に移動して通話を試みると常に通話が継続できる状況(アンテナ感度は4〜5。5でベスト状態)であった。

 ただし、ブームの真下にくると通話自体は可能であるが、アンテナのシグナル強度はそれまでの4〜5の状態から0〜2という状況になる。安定した通話を望むならば片舷に寄るか、(船の種類にもよるが)ブームが届かない後甲板(オーナーズチェアが設けられているならそこがベストだろう)で使用するのがよろしいようだ。

洋上実験は昨年のTOUGHBOOK検証航海にも出撃した全長8メートルの小型帆船「阿武隈」(ソレイユルボン)による「伊豆諸島北部反時計一周ノンストップ巡航」で行った。デッキに上がってイリジウムの受信感度をチェック。場所はいやな波が立つことで知られる利島と新島の間にある海域。船を停止して揺れる状態でも「シグナル4」を確保できた

 実際にイリジウム衛星電話で通話をしてみると、衛星電話特有の「会話のタイムラグ」を感じることがほとんどない。これは、低軌道の人工衛星を介して送受信をしているおかげで、高軌道のインマルサットなどと比べて電波の到達時間が短いためだ。

 しかし、ときおり音声が大変歪むときがある。私がイリジウムで通話をしたときは「発音が容易」「使い慣れていて聞き取りやすい」単語を使って会話するように努める必要があるように感じた。たとえタイムラグが短いとはいっても、できるだけゆっくり話し、相手の話し終わってからこちらから話し掛ける「無線的会話」を心がけたたほうがお互いの理解はスムーズに進んだのである。

 なお、イリジウム衛星電話サービスは国際電話扱いとなるため、日本国内で使える「110」「119」といった緊急電話番号が利用できない。プレジャーボートなどの海洋レジャーで普及した「海の110」こと、海上保安庁が提供している「118」も使えないことを、イリジウム衛星電話ユーザーは大いに注意しておかなければならない。救助を要請するときに慌てないように、出航前には航行する海域を管轄する海上保安庁の保安本部、保安部、保安署の電話番号は控えておくべきだ。

イリジウムでメールとインターネットを使う

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