通信業界は、移動体と固定を融合した「FMC」(Fixed Mobile Convergence)の方向に進むと言われている。ただこれを実現するには、システム事業部の苦労も多いようだ。
3月3日、「Oracle OpenWorld Tokyo 2006」の講演にKDDI執行役員で情報システム本部長の繁野高仁氏が登場。FMC戦略を支える情報システムをテーマに、現場レベルの実態を話した。
繁野氏は、異なる事業部を1つに融合する際に重要なのはまず「ものの見方を統一すること」だと話す。同氏はだまし絵を例に挙げながら、世の中には同じ「データ」を見ていても違う「意味」を見出すことがあり得ると説明。移動体事業部と固定事業部を統合する際にも、“情報を見るテンプレートを一緒にする”ことが必要だという。
「それぞれ違う世界を見ている。共通の世界を見るようにしないといけない」
その場合、両者の業務プロセスをどうするかという調整をすべきなのだが、それをせずにいきなりコンピュータシステムを統合せよ、という話に飛んでしまうことが問題だと繁野氏。「いきなり、個別の部署からシステムでなんとかしよう」という発想になりがちだという。
具体例として、繁野氏はKDDIが取り組んだ「固定と移動体での請求書の一本化」でのケースを紹介する。移動体と固定では、請求書の督促ひとつとっても違うという。「auは固定よりもARPUが高くユーザーの流動性が高いので、なるべく早く料金を回収したい。すぐに回収しようとするから、督促状もすぐ出して、料金を払わないとすぐ(通信を)止める。ところが、固定の場合は状況が違う」
固定通信の場合は、ARPUが比較的低いためいちいち督促状を送っていてはコストアップにつながる。また、「だいたいほっといても払ってくれる」(同氏)ため、次月に“先月の分が未納ですよ”と案内を出し、それでもだめなら“次月に止めますよ”とアナウンスするといった具合で、何カ月もかけて督促を行うのだという。
このあたりの仕様をどう合わせるか、という議論をしなければならないのに、ユーザーからはシステムトラブルで怒られ、社長からは矢の催促を受け……という具合で大変だと繁野氏。「人間の組織、事業のやり方を統一して、それをサポートするのがシステムであるべき」なのだと強調した。
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