端末の高機能化の裏で繰り広げられる、キャリアのコンテンツ争奪戦:韓国携帯事情

» 2006年10月20日 23時17分 公開
[佐々木朋美,ITmedia]

 最近、携帯電話キャリアや端末メーカーの関連会社によるコンテンツ確保競争が世界的に激しさを増している。韓国でも状況は同じで、とくにSK TelecomやKTFなどが音楽や映画、芸能事務所などとの提携や買収を通じ、大量のコンテンツを確保しようとしている。キャリアやメーカーによるコンテンツ確保はどこまで進んでいるのだろうか。

端末とセットのコンテンツ

 Sony Ericssonの音楽配信サービス「M-BUZZ」やフィンランドのNokiaによるLoudeye買収(2004年8月10日の記事参照)、米MotorolaのiTunes対応携帯「ROKR」など、近年携帯端末メーカーが、端末だけでなくコンテンツまでをまとめて提供しようとする動きを見せている。それに伴うコンテンツ確保の動きも活発で、とくにNokiaは米Warner Brothersや米Electronic Artsなどと契約し、映像やキャラクター、ゲームなども確保しようとしている。

 日本でも人気の高い米Apple ComputerのiPodは、「iTunes Store」という音楽や映像を配信するサービスとオーディオプレーヤーをセットにすることで、より多くのユーザーを引きつけているようだが、最近はこうしたコンテンツとセットというのが1つのトレンドとなっているようだ。

 HSDPAなどのインフラが充実すれば、それを活かすためのコンテンツが必要となってくるのは当然の流れ。ただしコンテンツは制作側の協力が不可欠であるため、提供側が自ら制作できないものは、提携や買収を進めて確保するしかない。

 韓国では、端末メーカーよりもキャリアによるコンテンツ確保の動きが目立っている。中でもとくに大きな動きを見せているのは、SK Telecom(以下、SKT)とKTFだ。

SK TelecomとKTFのコンテンツ争奪戦

 SKTは同社のグループ会社である、コンテンツプロバイダのSK Communicationsや衛星DMB(日本で言うモバイル放送)事業者のTU Mediaはもとより、豊富な資金力でさまざまな企業と提携したり、あるいは買収したりすることで、ユーザーに提供するコンテンツの拡充を図っている。

 一方KTFは、親会社で通信会社のKTと行動を共にし、携帯電話と固定電話を組み合わせた総合的なサービスを行おうとしている姿勢が垣間見える。関連会社としては、コンテンツプロバイダのKTH、衛星デジタル放送事業者でKTの子会社のSkyLifeなどがあり、このほか映像系のコンテンツプロバイダを多く確保しようとする動きが目立つ。

Photo KTFおよびSKTによる、コンテンツ確保の状況

 こうして傘下に入った企業が、次々とほかのコンテンツ関連会社の株を持つなどして、携帯キャリアの直接・間接的なコンテンツ確保が行われている。そして確保されたコンテンツは、両社が提供している音楽・映像関連の様々なサービスで活かされることとなる。

 SKTでは2006年7月から、YBM Seoul Recordsとの共同企画「MeiOnルーキー」を実施している。これは毎月1〜3組の優れた新人歌手を選抜し、彼らにアルバム制作費を支援するというもので、音楽市場および同社の音楽配信サービス「MelOn」の活性化などの狙いがある。

 SKTは2007年上半期、KTFは2007年3月頃までに、現時点では一部主要地域のみしか対応していないHSDPAの全国網を構築することを明言しているので、コンテンツ確保やそれを利用したサービス開発も、来年までに1つの山場を迎える。

その他の企業ではサービス内容に工夫

 SKTやKTFのような大規模な投資は行っていないものの、LG Telecom(以下、LGT)はKBS/MBC/SBSの放送局と提携し「TVモア」サービスを開始した。

 これは現在放送中の番組の再放送や予告編の視聴、および番組中の芸能人の写真を待受画面用に提供するサービスだ。番組のハイライトのみの視聴も可能のほか、放送では見られないNG場面をVODや写真で提供するなど、携帯電話向けに特化した内容となっている。

 端末メーカーの中では、Samsung電子が健闘している。同社は「Anycall Land」というコンテンツサイトを立ち上げており、ここで待受画面や着メロ、音楽などの多様なコンテンツを配信している。

 コンテンツプロバイダと協力して提供される多様なコンテンツや、豊富な自社端末の情報などの総合力が魅力で、このサイトは2005年12月に韓国内の利用者が500万人を突破した。ちなみに2006年4月には世界各国で展開している「Samsung Fun Club」の会員が3000万人を突破するなど、端末だけでなくWebサイトもなかなかの人気だ。

Photo LGTの「TVモア」の利用料は月額4000ウォン(約496円)
Photo Samsung電子の「Anycall Land」

 韓国で人気の動画ポータルサイト「Pandora TV」のコンテンツの収集先はユーザーだ。同サイトはユーザー自らが撮影した動画を公開および閲覧できる場として有名で、サービスをPCから携帯電話にも拡大している。これまでにもセクシーなダンスを披露して大人気となった一般人の3姉妹の写真集を、SKTの携帯電話向けに配信するなど、話題性のあるサービスを提供している。

 韓国では現在、ユーザー自らが直接撮影・編集した動画コンテンツが流行だ。デジタルカメラの普及でユーザーが作ったコンテンツが集まりやすくなる一方、ユーザーからの投稿映像のためコンテンツは安くかつ無限に提供できる。Pandora TVでは最近1日の訪問者数が100万人を突破したほか、米国のシリコンバレーにあるベンチャーキャピタルからの投資を受け入れるなど上り調子だ。

 ただしこうしたサービスの場合、まだ広告以外に特別な収益モデルがなかったり、肖像権などの問題が完全にクリアされていないのが不安要素で、解決策の用意が急がれてる。

 飽和気味の市場に新風を吹き込み、新しいインフラを活かせるよう、キャリアやメーカーはキラーコンテンツを探している。コンテンツは通信企業と一帯となっていくことで、多メディア化の時代を迎えているようだ。

佐々木朋美

 プログラマーを経た後、雑誌、ネットなどでITを中心に執筆するライターに転身。現在、韓国はソウルにて活動中で、韓国に関する記事も多々。IT以外にも経済や女性誌関連記事も執筆するほか翻訳も行っている。


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