PCの常識はケータイの非常識――「モバゲータウン」ヒットの背景(2/2 ページ)

» 2006年12月26日 12時34分 公開
[岡田有花,ITmedia]
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 新しかったのは、無料ゲームとコミュニティーを組み合わせたサイトを、携帯電話の上にハイクオリティーに再現したこと。さらにこれを、DeNAという上場企業が、ビジネスモデルを練った上で大規模に投資をし、安定運用している点だ。

 「モバゲーもごくごくたまに落ちることがあるが、落ちてもクレームが来ない。ユーザーさんは、無料サイトが落ちることに慣れているようで」――守安さんは冗談めかしてこんなふうに言う。それまで「質が低い」「落ちて当たり前」「急になくなっても驚かない」という無料のゲームサイトの“常識”を、モバゲータウンの質の高さと安定性が覆したようだ。

無料サイト支える広告の今後

 携帯サービスを無料で運営する場合、収入は広告に頼ることがほとんどだ。携帯広告市場も、順調に成長しているという。「以前、携帯広告のクライアントは金融や出会い系が多かったが、最近は、飲料メーカーやアルバイト紹介など、若者をターゲットにした業界が動き始めた」

 携帯広告ではこれまで、メール広告やバナー広告、広告と連動したポイント制度などが普及してきた。今後はPC並みに多様化していく見込みで、モバゲータウンでもすでに、企業がスポンサーしたゲームの提供や、アバターを使った広告、地図連動コンテンツ「タウン」上での地域広告などを試している。

30%の限界

 モバゲータウンは順調に成長してきたが、焦りもあるという。「携帯サイトは、その世代の人口のうち30%を取り込むと成長が止まる」――モバゲータウンはすでに、日本の全女子高生の30%を取り込んでいるといい、この層での成長は見込めない、と考えている。

 今後も成長を続けるには、ユーザー層の拡大、特に20代以上のユーザー層獲得が急務だ。20代以上に人気の本格RPGなどを投入していくほか、ニュースや鉄道乗り換え案内など実用コンテンツも充実させていく計画。また、自作の楽曲や小説などをアップロード出来る仕組みを追加するなど、自己表現の場としても存在感を高めていき、ユーザー層の拡大と利用頻度増につなげる。

 ちなみに、開発スタッフは30代男性が中心。「絵文字を書けるスタッフはほとんどいない」と守安さんは笑う。モバゲータウンも当初は、20代以上の利用を見込んで開発したといい、女子高生に受けたのはむしろ想定外だったようだ。

勝手サイト全盛時代――公式サイトはどうなる

 携帯サイトは今後、勝手サイトが勢いを増し、公式サイトを圧倒していくという見方がある。番号ポータビリティでキャリアを変えるユーザーが増え、キャリアにひもづいている公式サイトは続けて利用してもらうのが難しくなる上、Googleの参入やヤフーの本格展開でロボット検索が精度を増し、検索から目的のサービスにたどりつく人が増え、その分公式サイトのポータルからサービスを探す人が減るため──というのがその根拠。モバゲータウンを勝手サイトとして始めたのには、そういった背景もある。

 「公式サイト化してキャリアポータルに掲載されるだけでは、ユーザーを集めるのは難しくなるだろう」――守安さんはこう言いつつも、「公式サイトは今後も伸びる」と見る。公式サイトの集客力は落ちるが、勝手サイトにはない優秀な課金モデルがあり、その優位性は崩れないと見ているためだ。

 公式サイトは、キャリアの利用料金と一緒に利用料を精算でき、手軽に安心して料金を払ってもらえる。一方、勝手サイトは、課金の際にクレジットカードを登録してもらったり、プリペイドの電子マネーを利用してもらうなど面倒な手続きが必要で、これが支払いの障害になり得る。

 結局、最強のビジネスモデルは、公式サイトの仕組みで課金ができつつ、キャリアをまたいで利用・集客できるサービス、ということになりそうだ。「モバゲータウンもできれば公式サイト化したい」という。

 ただ公式サイト化には多くの制約があり、特にコミュニティーサービスの公式サイト化は難しいという。例えばEZwebの規約では、掲示板は基本的に、事前に内容をチェックしてから掲載する仕組みでなくてはならないとあり、掲示板機能のあるコミュニティーサイトの公式化は難しそうだ。

 だが、掲示板を備えたSNS「EZ GREE」は公式サイトになり、iモード公式サイトの規約にも、コミュニティーに関する記述が最近になって追加された。NTTドコモもオークション&SNS「楽オク」をスタートするなど、自社サービスのフルラインアップ化を進めているキャリアがコミュニティーサービスにも積極的な姿勢を示し始めている。勝手サイトの隆盛とともに、公式サイトの形も変わっていきそうだ。

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