PCの常識はケータイの非常識――「モバゲータウン」ヒットの背景(1/2 ページ)

» 2006年12月26日 12時34分 公開
[岡田有花,ITmedia]

 番号ポータビリティ開始とともに、携帯電話向けネットサービスが活況を見せ始めた。オークションサービスやSNS(ソーシャルネットワーキングサービス)にキャリアが自ら参入する一方、携帯向けロボット検索も強化され、公式サイト以外の「勝手サイト」へのアクセス経路が整備されつつある。

 「携帯ユーザーには、PCユーザーがネットを使い始めたとき味わったあの新鮮な感動が、まだ残っている」――携帯オークション「モバオク」や、200万ユーザーを突破した携帯ゲーム&SNS「モバゲータウン」などで成功を収めてきた、ディー・エヌ・エー(DeNA)モバイル事業部長の守安功さんは言う。

画像画像 モバオクとモバゲータウンのトップぺージ

 PC向けインターネットと比べると、携帯ネットは便利なサービスが少なく、画面は小さく、通信速度は遅い。PCと比べて使いやすいとは言えず、携帯のネットはほとんど使わないというPCユーザーは珍しくない。

 だが「PCと携帯を比べても意味はない」と守安さんは言う。PCでネットを使う層と、携帯でネットを使う層は重なりが少ないと見ているため。「仕事や学校で使って覚えない限り、PC操作は面倒でハードルが高い」。携帯ネットサービスは、携帯からしかネットを使わない層をターゲットにしていい、というのが持論だ。

 総務省の情報通信白書によると、携帯からネットを利用する人(6923万人)は、PCからネットを利用する人(6601万人)よりも多い(関連記事参照)。携帯からのみ使う人は1921万人、PCからのみ使う人は1585万人と、携帯の方がやはり多く、携帯ネットユーザーだけをターゲットにしても、じゅうぶんな市場規模が見込めるということになりそうだ。

 PCのネットを知らない携帯ネットユーザーにとっては、PCでは既存のサービスも新鮮に映る。例えばオークションや無料ゲーム、アバターを使ったSNSなどは、携帯ネットユーザーにとってはまだ新鮮。PCのネットユーザーが初めてオークションに出合ったり、初めてSNSを使ったり、初めて基本料金無料のオンラインゲームに触れたときのような、まっさらな感動を感じてくれるのだという。

 「例えば『モバオク』も、Yahoo!オークションを知らなかったり、知っていても使ったことがない人が使ってくれ、見知らぬ人との個人間取引ができるということに感動してもらえた。『モバゲータウン』は、無料でハイクオリティなゲームを楽しめることに驚いてもらっている」

 同社の成長の原動力は、PC向けネットでは既存のサービスを上手に組み合わせて質を高め、携帯電話のプラットフォームに載せたことだろう。この戦略にたどりつくまではPC向けネット上での苦労があった。

左を見ればヤフオク、右を見れば楽天

 同社は1999年に設立。当初はPC向けオークション&ショッピングモール「ビッダーズ」が事業の柱だった。だが個人間オークションでは先行したヤフーに大きな差を付けられ、ショッピングモールでは「楽天市場」が強い。「左を見るとヤフオク、右を見ると楽天市場という状態。どう差別化していくかが課題だった」

 そこで目を付けたのが携帯向けオークションだ。携帯のカメラ機能を使えば、商品撮影が簡単にでき、出品のハードルが下がる。ちょうどauがパケット定額制を始め、画像の多いオークションを「パケ死」の心配なく利用してもらうための環境も整った2004年3月、携帯オークション「モバオク」をスタートした。

 最初は本当に使ってもらえるのか不安だったという。実際、当初は1日100人〜200人程度のアクセスしかなかったが、1人あたりのページビューはPCよりも多く、全登録ユーザー中、出品・落札しているユーザーの割合もPCよりも高かった。

 「ユーザー数が増えればいける」――手ごたえを感じ、ユーザー増への手を打った。まずauとボーダフォン(当時)で公式サイト化。アフィリエイトネットワークに広告出稿して集客したほか、ユーザーに友人を紹介してもらう機能を追加した。ユーザー増に最も貢献したのは、この友人紹介だったという。

 「携帯サイトは、人と会っている時に紹介できる。特に若い世代では口コミが効きやすい」。1カ月で最も多く友人を紹介した人には10万円をプレゼントするなど、インセンティブにも力を入れ、ピーク時で200万会員を獲得。ユーザー数は、利用を有料化した際に30万人まで落ち込んだが、今は70万人以上にまで回復している。

 その後同社は、携帯向けアフィリエイト広告「ポケットアフィリエイト」をスタート。現在、約500社の広告を、個人サイト含めて約30万の媒体に配信しているという。今年2月、さらなる飛躍を目指して開発したサービスが、開始から9カ月で200万ユーザーを超えた。携帯向けゲーム&SNS「モバゲータウン」だ。

古いけど新しい「モバゲー」

画像 守安さん。モバゲータウンは当初「ゲーム&コミュニティー」といっていたが、今年10月ごろに「ゲーム&SNS」と改名した。「Web2.0とかSNSという言葉が嫌いで、SNSと言いたくなかった。だが『ゲーム&コミュニティー』ではどこのメディアも取り上げてくれないので、仕方なくSNSと言うことにした」。改名の効果はてきめんだったようだ

 無料の携帯ゲームサイトは、モバゲータウン以前にもなかった訳ではない。だがその多くは、ごく小規模な企業や個人が運営する不安定なサイト。ゲームの質は低く、広告を見ないとゲームができないなど、制約があるものが多かった。

 携帯ゲームは今後の伸びが期待される分野。「公式サイト並みのクオリティで無料のゲームを出せば当たる」。守安さんはこう読み、広告を収益源にしたゲームサイトの開発にとりかかった。

 ユーザーのサイト滞在時間を伸ばし、アクセス頻度を高めるため、ゲームにコミュニティーを組み合わせることにした。独自のポイント制度「モバゴールド」も導入。広告の閲覧やユーザー紹介などでポイントが付くようにし、そのポイントでアバターアイテムが買えるようにした。「広告も邪魔なものではなく、ユーザーにとって“いいもの”と思ってもらえる」

 こういったサービス構造やビジネスモデルは、真新しいものではない。ゲームコミュニティーを組み合わせるモデルは、PC向けゲームサイト「ハンゲーム」などが長く展開し、成功してきた。広告の閲覧やサイト登録、ユーザー紹介などでポイントを付与し、そのポイントに応じてデジタルアイテムをプレゼントするモデルは携帯勝手サイトでは珍しくなく、女子中高生に人気の無料着メロサービス「ゴルゴンゾーラ」などはこのモデルで急成長した。「当社独自のモデルは、実は少ない」と守安さんも言う。

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