「Business au!」で挑む新たな成長市場──KDDIに聞く法人市場戦略Interview(1/2 ページ)

» 2007年03月06日 11時15分 公開
[神尾寿,ITmedia]

 携帯電話の契約数はついに1億の大台に乗った(2月7日の記事参照)。「1人1台」を目指し、1990年代半ばから続いた市場の急成長期は終息を迎えようとしている。特に個人契約のコンシューマー市場は、1999年のiモード登場以降、爆発的に契約数が伸びたこともあり、すでに飽和状態になりつつあるのは周知のとおりである。

 そのような中で、携帯電話キャリア各社の目は、これまで手つかずだった法人契約市場に向いている。これまでビジネスで利用する携帯電話は「個人契約の携帯電話を仕事で使う」、いわゆる“持ち込みケータイ”が大半であったが、これを法人契約にし、セキュリティリスクの軽減や企業の生産性を高めるソリューションサービスを普及させようという動きだ。むろんそこには、ビジネス用の「法人契約」とプライベート用の「個人契約」を分けることで、ダブルホルダー(2台持ち)による新規契約市場の上積みを狙うという背景もある。ドコモ、KDDI、ソフトバンクモバイルの3社すべてが、この春商戦から来年度にかけて、法人市場の開拓と獲得を重要なミッションに掲げている。

 そこで今日の時事日想は特別編として、KDDI ソリューション事業統括本部 モバイルソリューション事業本部 モバイルソリューション事業企画部の山本裕幸氏にインタビュー。「Business au!」のキャッチフレーズで法人市場を狙うKDDIの戦略を聞いた。

Photo KDDI ソリューション事業統括本部 モバイルソリューション事業本部 モバイルソリューション事業企画部の山本裕幸氏

法人市場には3年前から注力、ブランド力向上を図る

 KDDIはコンシューマー向けの携帯電話ブランドとして「au」を展開しており、2001年以降、第3世代携帯電話への移行で先行し、デザインや音楽に力を入れたことでドコモに迫るブランド力を得た。現在は総合的な顧客満足度の高さをアピールし、番号ポータビリティ(MNP)で好調なのは周知のとおりである。一方、KDDIの法人向け携帯電話事業は、2004年4月から本格的な取り組みが始まった。

 「2004年まではKDDIの法人向けビジネスは固定サービスが中心だったのですが、3年前にモバイルソリューション事業本部が独立したことで、この分野への取り組みが始まりました。ですから、3年前からKDDIは(携帯電話の)法人市場を重要視していたといえます」(山本氏)

 とはいえ、法人市場が一般的に注目され始めたのは昨年後半からである。現在、電気通信事業者協会(TCA)の発表値をはじめ、公式な資料に個人契約と法人契約を分けたものはないが、「(現時点では)マクロで見ても、法人契約は市場全体の契約数における10%強」(山本氏)なのが現状だ。

 「KDDIの契約数で見ても法人契約は全体の10%強という状況ですね。しかし伸び率は高く、毎年1.5倍から1.6倍のペースで契約数が増え続けています。

 これまでauはコンシューマー市場でシェアを伸ばしてきたわけですが、この市場は需要が飽和しつつあります。その中でKDDIが持続的に成長するために、法人市場には力を入れています」(山本氏)

 実際、KDDIの小野寺正会長兼社長の定例記者会見でも、最近は法人市場に言及するケースが増えている。KDDIにはこれまでのauのイメージがあり、どちらかというとコンシューマーブランドとして見られてきたが、今後はビジネス向けのサービスを強化し、ブランド力を高めていくという。

総合力で勝負する「Business au!」

 ところで昨年から、「Business au!」というフレーズを目にする機会が増えてきた。当初は一般紙や経済誌、Webメディアの広告で多く見かけたが、最近ではテレビなどマスメディアにもBusiness au!のフレーズは広がっている。

 「Business au!の広告展開は2005年9月から始めています。auというと、学生向け、エンターテインメント向けといったイメージが強く、逆に『ビジネスに使う』というイメージが欠けていました。そこで、この1年半ほど、Business au!で『ビジネスに強いau』を統一メッセージとしてPRしてきました」(山本氏)

 コンシューマーブランドとしてのauは、3Gでの先進性やエリアの広さのほかに、音楽やワンセグ、デザインなど多様な要素で成り立つが、Business au!でもその一部は共有されている。

 「例えばインフラ面ではauと同じですから、3Gのエリアが広い・充実しているといった優位性は、Business au!でも変わりません。また他社に対する優位性として挙げられるのが、法人のお客様のさまざまな要求に応えるソリューションサービスが提供できることですね。音声通話だけではない付加価値を提供できることが、我々の強みになっています。実際、現在ご契約いただいている法人顧客の約半数に、何らかのソリューションサービスを導入していただいています」(山本氏)

 コンシューマー市場と同じく、法人市場も顧客のニーズはさまざまだ。例えばウィルコムは「音声通話」というアプリケーションにまず着目し、「音声定額」をキラーサービスとすることで法人市場で地歩を固めた。一方、KDDIは「法人市場はコンシューマー市場以上に音声サービスのニーズが高いのは事実」(山本氏)と認めながらも、サービスの部分で差別化が難しい音声通話で競争するのではなく、ソリューション分野の開拓に力を入れている。

 「音声サービスが主体だとしても、(携帯電話内のデータを保護する)セキュリティ機能などを充実させた『ビジネス便利パック』を用意するなど、付加価値をつけるやり方は可能です。特にセキュリティは個人情報保護法の施行以降ニーズの高い付加価値になっている。

 また、これは基本的なところですが、エリアの充実はやはり重要ですね。ビジネスで使う携帯電話はつながってあたりまえと見られますから、料金がいくら安くてもエリアが狭いと法人顧客のニーズに応えられません」(山本氏)

 KDDIの総合力やモバイルソリューション分野での提案力の高さは、これまでの導入事例を見てもわかる。

 その中でも最も有名な例はヤマト運輸での導入で、セールスドライバー向けに2005年6月から導入を開始。現在約4万台のau端末が稼働している。auがタフネス仕様のビジネスケータイと位置づける「E03CA」も7000台の導入が決定した。

 ほかにも銀行・保険会社ではセキュリティの高さと渉外支援システムの開発力が評価されており、東京都民銀行に約600台、近畿大阪銀行に約1000台、朝日生命に約850台の導入実績があるという。

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