第7回 KDDI 高橋誠氏──純増数でソフトバンクに抜かれ、スイッチが入った石川温・神尾寿の「モバイル業界の向かう先」(1/2 ページ)

» 2007年08月14日 19時33分 公開
[房野麻子(聞き手:石川温、神尾寿),ITmedia]

 ケータイの進化を牽引するキャリアの1つであるKDDIは、携帯電話からサービスまでを、どのように進化させていくのか。業界のキーパーソンを迎え、通信ジャーナリストの石川温氏、神尾寿氏とざっくばらんに未来を語ってもらう「モバイル業界鼎談」の第7回目は、引き続きKDDI 執行役員 コンシューマ事業統轄本部長の高橋誠氏に、auの端末プラットフォーム戦略やケータイ向けサービスの展開、モバイルコマースなどを聞いた。

PhotoPhoto 左はKDDI 執行役員 コンシューマ事業統轄本部長の高橋誠氏。右はジャーナリストの石川温氏と神尾寿氏

プラットフォーム共通化で先んじたauの強み

神尾 端末に関しては、auもソフトバンクもかなりたくさんの機種数を出しましたよね。去年からそういう大量攻勢状態が続いているんですが、これはいつまで続くんでしょうか。

高橋誠氏(以下敬称略) このままのペースで投入し続けるのは、きつくなってくると思いますよ。というのは、モバイルビジネス研究会で議論されている問題などを踏まえると、流動性が収まってくる可能性はあると思いますから、今のようにたくさん出すというのが苦しくなってくる時期がくるんじゃないかと思います。でも、我々としてはメーカーさんとWIN-WINの関係でやっていきますと言っているので、そのあたりはよく話し合いながら進めます。今までのように急激な右肩上がりの状況が続くわけではありませんので。

神尾 去年の後半くらいから数が増えて、ずっと走り続けていますからね。

高橋 そうですね。2007年夏モデルの発表会のときにも質問されましたが、プラットフォームの共通化といったことをやっていかないと、端末メーカーの負担が重くなってしまうんです。だから共通化を進めています。

 ただ、ソフトバンクの“POP-i”(Portable Open Platform Initiative)も苦しいと思いますよ。モノになるまで2〜3世代くらいかかるんじゃないでしょうか。僕らも共通プラットフォームの完成度を高めるのに、結局3世代くらいかかりました。BREWの採用から始めて、その後KCP(KDDI Common Platform)をやって、今回がKCP+。3ルーチン回して、やっとプラットフォームができつつあるわけですから。

神尾 私もPOP-iはモノになるまでの工数が多くなりそうだな、と見ています。

高橋 多くなるでしょうね。ソフトバンクはOSもチップセットも共通化されていませんよね。だからそんなに簡単にはいかないと思いますよ。Javaで作るんだろうと思いますけれど

神尾 auはQUALCOMM製のMSMチップセットを端末メーカー各社で共通して採用したメリットで、プラットフォームの共通化が他社に比べて先行していましたけれど、その優位性は出てきていますか?

高橋 かなり出ています。ワンセグ端末を7機種も一斉に出せるのは、それがあるからです。これは間違いないですね。端末価格も断然安い。たぶんソフトバンクの端末仕入れ価格よりも安いと思いますよ。

石川 圧倒的に安いみたいですね。

高橋 ただ、ホワイトプランも効いてきていますから、我々はそこにどう対応するかを考えないといけません。

ケータイをソフトウェアバージョンアップで進化させる可能性

神尾 今後、端末の機種変更サイクルは徐々に延びてくると感じています。従来は、新しいサービスや新しいコンテンツを導入する際には、同時にそのサービスやコンテンツに対応した新機種を発売して、新機種を購入してもらう形で対応していたと思いますが、今後はソフトウェアとハードウェアの進化が分離する可能性というのはないんでしょうか? つまり、PCのようにソフトウェアだけをバージョンアップする、ということはないのでしょうか。

高橋 ありえると思いますね。おっしゃるとおり、端末の流動性が落ちてくると、新規の機能が広まりにくくなります。そうすると、その上で活躍されるコンテンツプロバイダーさんの市場が小さくなってしまうんですよ。だから、こちらからボリュームゾーンをしっかり狙えるようにしないといけない。BREWはもともとそういう発想でボリュームゾーンを狙っていったのが成功したんです。だから、今後はそういう風になると思います。

神尾 KCPの考え方ですと、後から機能をアプリとして追加するというのは、不可能ではないですよね

高橋 そう、仕様上は不可能ではないですね。ただ、新機種はハードのほうも進化している場合が多いので、ソフトをバージョンアップするだけでまったく同じことを旧機種で実現するというのは、簡単にはできません。そこをうまくコントロールできればいいんですけどね。だけど、できるようにしていかないと、おっしゃる通り新規サービスの展開がすごく狭くなってしまいます。神尾さんはいいところを突かれていると思いますね。

神尾 たぶんそうしていかないと、サービスを新しく立ち上げていく上で、今後がつらくなってくるだろうな、というのはすごく感じるんです。2007年夏モデルの発表会で、私は「Touch Message」が旧機種でもサポートされるか質問しました。それは、使っているFeliCaチップが同じFaver 2.0(バージョン2.0)で、主にソフトウェアベースで実現している機能だったら、旧機種もソフトウェアのバージョンアップで対応できるはずだと考えたからです。でも、旧機種はメッセージを受けることはできるんですが、作ることはできないということで少し残念でした。

高橋 「モバプリ」は旧機種にも対応しているんですけどね。

神尾 ハードウェア的には新機能・新サービスを使える旧機種が、ソフトウェアバージョンアップで対応していくというのは、今後、必要だと思います

高橋 コンテンツプロバイダさんは、すでにそれをやっているわけですからね。幅広いターゲットでコンテンツを作っていかなくてはならないので、両面をやってらっしゃるんですよね。それはすごく大事なことだと思います。

銀行サービスは2008年上期の開始を目指す

神尾 高橋さんはインターネットの世界のトレンドをうまく携帯向けにアレンジして取り込んできていらっしゃると以前から感じていたんですが、今、ネットの世界のサービスやトレンド、ネットビジネスで注目しているところはありますか? それを取り込むというような話ではなくて、今おもしろいと思っていらっしゃるネットの動きについてお聞きしたいんですが。

高橋 やるかやらないかは全然わかりませんが、「Second Life」みたいな世界って、すごく面白いと思いますよ

神尾 なるほど。あの辺はアバターとはまた違った面白さがあるってことですか?

高橋 バーチャルな世界とリアルな世界が融合しているような世界、渡り歩くような世界じゃないですか。今後はああいう世界になるかもしれませんね

石川 例えば、ああいう世界が携帯に載ったとして、そのときに必要になってくるのは銀行系だと思うんですが……

高橋 おお、そこに持っていきますか!

石川 強引に持っていったんですが(笑) 三菱東京UFJ銀行との提携はどうですか?(2006年4月の記事参照) 結局1年間ずれてしまいましたけれど。

高橋 2008年の上期には立ち上がると思います。我々のユーザーさんにどれだけ口座を持っていただけるかということと、三菱東京UFJ銀行さんの優良ユーザーさんをどれだけ誘導してこれるかが勝負なので、そこの戦略をきちんと作っている最中です。金融庁は厳しいですから、免許が取れたら、ある程度確実なものとしてできると思います。

 冒頭の話じゃないですが、金融でできることって、もうすでにサイトの中にあるわけですよね。だけど、大事なのはUIのレイヤーをもっと(上の階層に)上げてやることなので、それが平行してできればたぶんうまく行くと思います。端末の待受画面に銀行の機能が載っている、というほうが面白いじゃないですか。そんなところまで作りこむつもりです。

石川 どこぞの銀行のアプリとは訳が違いますか(笑)

高橋 あれとは大きく違いますよ(笑)

神尾 サービス面でも携帯ならでは、というところは出てきますか。

高橋 当然出てきます。それができなかったらやる意味がないと思いますね。

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