「W41SH」「AQUOSケータイ W51SH」に続いて登場した、au向けでは3機種目となるシャープ製端末が「W52SH」だ。W41SHでは大人の女性をターゲットにファブリックデザインを採用し、使い勝手のよさを磨き上げた。そしてW51SHでは“AQUOSケータイ”の名を冠してワンセグやデジタルラジオなどのマルティメディア機能を前面に打ち出した。これら2機種を受けてリリースされたのが、W52SHだ。
W52SHは厚さ約17.6ミリというスリムなボディにワンセグを搭載するほか、おサイフケータイ、AF付き2Mピクセルカメラ、ステレオスピーカーを搭載するなど、ボディの小型化を図るとともに従来機から機能がブラッシュアップされている。このコンパクトなワンセグケータイW52SHは、どのような狙いで開発されたのだろうか。シャープ 通信システム事業本部 パーソナル通信第四事業部 商品企画部の中田尋経氏に話を聞いた。
“ニューコンパクト・スタンダードケータイ”──。中田氏は、W52SHのコンセプトをこう説明する。初代のW41SHや2代目のW51SHよりも幅広い年齢層をターゲットにし、男女どちらでも持てる、エレガントで上質なケータイを目指すところから開発はスタートした。
「カメラや音楽が当たり前の機能になり、次のステップとして“ワンセグ”と“FeliCa”を標準搭載することが、これからの新しいスタンダードになると考えました。さらに、ケータイを手軽に持ち歩きたいというニーズに応えるべく、“薄くて持ちやすいコンパクトなケータイ”を目指して開発を進めました」(中田氏)
スペック面で特に注力したのは約17.6ミリという厚さだ。この数字は同じく“スリムなワンセグケータイ”としてリリースされた東芝製のW53T(約18ミリ)や三洋電機製のW52SA(約18.7ミリ)よりも薄い。もちろん、この厚さは簡単に実現できたわけではなく、コンマ数ミリ単位の調整を要した。
「W52SHはボディサイズが小さくなったため、W51SHよりも小さい770mAhのバッテリーパックを採用していますが、ワンセグの視聴時間や連続通話時間などはW51SHと同等以上にすることを目標にしました(この点は、後述する省電力回路を採用することで解消している)。また、40キロの押圧でもキーが壊れないようにする必要があるなど、KDDIの厳しい安全基準を満たしつつ、その中で強度と押しやすさを両立させ、なおかつ薄型化を行うのも大きな課題でした」(中田氏)
ボディをより薄くするために、ダイヤルキーにシートキーを採用するという案も検討したが、使いやすさを考えて見送り、表面に凹凸をつけたキーを採用した。W51SHはフラットなキーを採用していたため、もう少し分かりやすいキータッチがいいという要望が多かったそうだ。そこでW52SHでは改善を図った。キーの横幅も大きくしているので、W51SHよりもはるかに押しやすくなっているという。
microSDカードスロットとイヤフォンジャックが2階建てになっているのは、ユーザーの使い勝手を考慮しての措置だ。バッテリーを外さないと外部メモリースロットにアクセスできない機種もあるが、中田氏は「メモリーカードはどんな状態でも簡単に着脱できるべき」と話した。カードスロットを内部に備えるという考えはまったくなかったようだ。
スペック面だけでなく、デザインにも数々のこだわりがある。“より大人の質感”を追求すべく、グレシャスブラックとロージーレッドの背面にはドットテクスチャーを施し、インテリジェントホワイトの背面はパール塗装を採用した。光沢感のある塗装はどうしても指紋が目立ってしまうが、このドットがあることで、指紋が目立ちにくくなっている。サブディスプレイは消灯時はハーフミラーとなり、その横のクロームプレートに刻まれたWINロゴはホログラムで虹色に輝く。ここは「薄さと高級感を感じてもらえるようなデザイン」(中田氏)に仕上げた。
「端末の中身にも、楽しさを持ってもらうべく、いろいろなコンテンツを仕掛けています」と中田氏が話すように、メニュー画面に王子様とお姫様が登場するメルヘンチックなFlash「Princess」や、ケータイアレンジデータに多数の動物が登場する「えすえいち村」をプリセットしている。えすえいち村のメニュー画面では、鯨が吹いた潮の上でアイコンが踊ったり、象が歩く振動でアイコン全体が揺れるなど、ユーモラスな動きが加えられている。
W52SHの画面サイズは、W51SHの3.0インチから2.8インチに若干小さくなっているが、ディスプレイのクオリティはW51SHよりも向上している。またW52SHでは、W51SHの約1.7倍となる500:1のハイコントラスト液晶を新たに搭載した。コントラスト比だけを見れば、他社の端末にもそれを上回るものはあるが、「微反射方式」と「6色カラーフィルタ」の採用によって、屋内だけでなく晴天の屋外でも鮮やかな表示ができる。
ディスプレイのコントラストを下げることで全方向からディスプレイののぞき見を防止する「プライベートフィルタ」はW51SHから継承しているが、のぞき見を防ぐ技術といえば、W41SHで採用されていた「ベールビュー液晶」も思い浮かぶ。ベールビュー液晶はなぜ搭載されなかったのだろうか。
「ベールビューは、ハードウェア的に視線をブロックできるので性能は高いのですが、欠点もあります。ベールビューの場合、左右からの視線はブロックできますが、上下からの視線はブロックできないのです。電車の中で座っているときなどには、立っている人からののぞき見を防ぐことはできません。また、液晶パネルの上にもう1枚ガラスの板を重ねているので、厚みが出たり、もとの液晶の画質を落としてしまうことにもなります。ワンセグを楽しんでもらう、薄くしていくという目的に反するので、今回は採用を見送りました」(中田氏)
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