iPhoneよりマリオ、Googleより茶道――チームラボが考える「和製UI」(1/2 ページ)

» 2007年11月19日 12時00分 公開
[岡田有花,ITmedia]

 「iPhoneのユーザーインタフェース(UI)は確かにかっこいいが、進化の仕方があまりに西洋的。もっと日本的なアプローチがあるんじゃないか」

 11月15日、「Web2.0 Expo」の講演でこう話したのは、チームラボの猪子寿之社長だ。同社は、検索エンジン「SAGOOL」など独自サービスを展開する一方、「iza!」(産経デジタル)、「ワッチミー!TV」(フジテレビラボLLC)、サントリー公式サイトのサイト内検索機能、日立「Wooo」のトップページFlashなどを構築。UIとデザイン、検索・マッチング技術に強みを持つベンチャーだ。

 「UIは、しょうがない奴だと思ってる」と猪子社長は言う。例えば携帯電話のボタン。電話をかけたり、携帯サイトを見るには何度もボタンを押さなくてはならないが、ユーザーはボタンを押したい訳ではなく、電話で話したりサイトを見たいだけ。つまり「ボタン」というUIは「仕方ないから」押している――「しょうがない奴」なのだ。

 猪子社長が提案するのは「しょうがないものを、しょうがなくないものにするUI」。西洋的に洗練されたiPhoneのようなUIとは異なる日本的なUIを、独自の視点で提案する。ヒントは「お茶」と「マリオ」だ。

「サイトマップ」が意味を失ってきた

画像 力の抜けた語り口で会場を笑わせ続けた猪子社長

 「きょうはWeb2.0ナントカ、というイベントみたいなので、Web2.0の定義を持ち出してみました」――そう言って猪子社長は、ティム・オライリー氏が提唱したWeb2.0の7つの定義を紹介する。「この中で明らかに、1こだけおかしいのがある」

 その定義とは(1)ユーザーの手による情報の自由な整理、(2)リッチなユーザー体験、(3)貢献者としてのユーザー、(4)ロングテール、(5)ユーザ参加、(6)根本的な分類、(7)分散性――だ。「(2)だけUIの話で、すごい違和感がある」

 Web2.0の話はそれだけで終了。「ところで」と、Web上のUIに話が移る。「FlashやAjax(Asynchronous JavaScript+XML)を使った動的なUIが増えているが、『動かせる技術があるから動かしました』というものは意味がない」

 動的なUIが必要とされてきているのは、動かせる技術や環境があるからではなく、サイト構造そのものが変化してきているからだという。「Web上の情報は常に移ろい、サイト構造も動的になっているから、UIも動的にならなくてはいけない。“サイトの裏側”が動的になっていることと、動的なUIは表裏一体」

 例えば同社が開発した不動産情報検索サイト「いえーい!」。Ajaxをフル活用したUIで、Web上の不動産サイトのコンテンツをクロールしたデータベースから検索する。キーワードを入力すると、結果を地図上にアイコンで表示。アイコンをクリックすると、画面遷移なしで詳細を表示し、地図の表示範囲を変えれば、その範囲で自動的に再検索する。

 「サイトマップのようなものは、意味がなくなってくる」――サイトマップは、ページやコンテンツが固定していたからこそ構築できたもの。いえーい!のようなサイトは、クロールの結果に従ってコンテンツが刻々と変わり、リンクも自動生成されていくため、サイトマップも作れない。コンテンツが動的なら、サイトマップのような静的なUIでは対応できなくなるのだ。

 同社の検索サイト「SAGOOL」は、テキストリンクの位置すら動的にした。SAGOOLは、検索結果の一部分をドラッグすると、ドラッグした部分のキーワードで絞り込み検索。その結果を新たなリンクとして表示し、クリックすると結果サイトに飛べる。「検索とマッチングというテクノロジーが裏にあれば、UIも動的になる」


画像 動的なUIをフル活用した「いえーい!」
画像 ドラッグで絞り込み検索できる「SAGOOL」

 ――と、ここまでの考え方は、UI革新の「本流」の流れに沿ったもの。「こういった取り組みはみんなやり始めてるし、Web2.0Expoに来ている外国人の方に聞いても同じことを話すだろう。でもこれってちょっと、西洋的すぎませんか?」

「お茶」と「マリオ」に見る日本

 西洋的なUIの進化とは、目的に向かってまっすぐ進み、効率的に情報にたどりつこうというもの。iPhoneやGoogleのようなUIが最先端の例で、猪子社長はこれを「西洋的」と呼ぶ。これに対して日本的なUIの革新とは、目的ではなく、目的のための「行為」に意味を与えて楽しむというものだ。

 「これは日本人の得意分野」と猪子社長は言い、「お茶」「マリオ」という2つの例を出す。

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