楽天モバイルが「2025年内に1000万回線」の公約を果たせたワケ 次の目玉は「衛星通信」と三木谷氏(1/3 ページ)

» 2025年12月25日 21時23分 公開
[金子麟太郎ITmedia]

 楽天モバイルの契約数が2025年12月25日、1000万回線を突破した。2020年4月のサービスインから、約5年8カ月での達成となった。2025年12月25日のイベントでは、リアルタイムで契約数がカウントされる様子をモニターに表示。当初は999万9931回線だったが、その後の更新で1000万54回線と表示され、無事に1000万回線を突破した。

楽天モバイル 1000万回線 楽天モバイルは12月25日に悲願だった1000万回線の突破を発表した
楽天モバイル 1000万回線 モニターへの掲示当初は回線数が999万9931回線だったが……
楽天モバイル 1000万回線 更新後に1000万54回線と表示され、1000万回線を突破した

 1000万回線には楽天モバイルのコンシューマー向けサービスに加え、BCP(Business Continuity Plan用途のプラン)、法人向け「Rakuten最強プラン ビジネス」、モバイルWi-Fiルーター「Rakuten Turbo」、MVNOやMVNEの回線数も含む。BCPを除くと991万回線、MNOのみでは914万回線となる。

 同社はかねて、2025年内に1000万回線を達成することを目標に掲げていた。楽天モバイルの回線数は11月7日時点で950万回線に達していたが、そこから約1カ月半で50万回線を獲得した形だ。

 12月25日のイベントでは、ゲストにお笑いタレントの藤森慎吾さんを迎え、楽天の守護神とされる愛宕神社の「だるま」の右目を描き入れる演出が行われた。三木谷氏によれば、このだるまは1000万回線突破を祈願して左目を入れ、長らくオフィスに飾っていたものだという。藤森さんが見守る中、三木谷氏は自ら筆を取り、目標達成の証として空白だった右目を描き入れた。

楽天モバイル 1000万回線 楽天モバイルの三木谷浩史会長(写真=左)とお笑いタレントの藤森慎吾さん(写真=右)
楽天モバイル 1000万回線 藤森さんが横で見守る中、三木谷氏はスタッフから筆を手渡され……
楽天モバイル 1000万回線 長らくオフィスに飾っていた「だるま」の右目を描き入れた

楽天モバイルの過去5年間の歩み:完全仮想化とプラチナバンドへの挑戦

 楽天(現楽天グループ)が携帯キャリア事業への参入を表明したのは2017年12月のことだった。当時、日本の通信市場は既存3社による寡占状態にあり、高い通信料金が長年の社会課題となっていた。楽天は2014年10月に提供開始したMVNO(格安スマホ事業)での実績を土台に、2018年1月には楽天モバイルネットワーク(現楽天モバイル)を設立。自社回線を持つ第4のキャリア(MNO)として参入を決定し、市場の競争を促進する役割を担った。

 楽天モバイルが採用した戦略は、世界でも類を見ないほど「野心的」なものだった。2018年4月に総務省より4G周波数(1.7GHz帯)の割当を受けると、同社は同年12月に基地局建設を開始。「世界初のエンドツーエンドの完全仮想化クラウドネイティブネットワーク」を構築した。従来の通信ネットワークは、高価な専用ハードウェアを物理的に設置・維持する必要があり、これが多大な設備投資と運営コストの要因となっていた。しかし、楽天モバイルはこれをソフトウェア化し、クラウド上で動作させることで、ハードとソフトを完全に分離させた。

 それにより、安価な汎用(はんよう)サーバでの運用が可能となり、設備投資を大幅に抑制することに成功した。また、ソフトウェアのアップデートだけで迅速な機能拡充や障害対応ができる柔軟性を確保し、5G時代を見据えた機動的なネットワーク基盤をこの時期に確立した。2019年2月には完全仮想化ネットワークの実証実験に成功し、同年4月には5G周波数の割当も受け、次世代通信への布石を確実に打っていった。

 そして2019年10月、楽天モバイルはMNOとして歴史的な一歩を踏み出した。当初は5000人を対象とした「無料サポータープログラム」からのスタートだったが、2020年4月には本格サービス「Rakuten UN-LIMIT」を開始した。データ通信無制限、かつ専用アプリによる国内通話無料という、従来のキャリアでは考えられなかった破壊的な料金プランは市場に大きな衝撃を与え、同年6月には早くも申し込み数が100万回線を突破した。

 あわせて同社は自社端末の開発にも心血を注いだ。2020年1月には世界最小・最軽量の「Rakuten Mini」を発売。同年9月の5Gサービス開始時にはインカメラ内蔵ディスプレイを搭載した5Gスマホ「Rakuten BIG」、12月には「Rakuten Hand」など、独自の技術力を象徴する端末を次々と市場に送り出した。2020年11月には、各種手数料を無料化する「ZERO宣言」を発表。ユーザーを縛る手数料を撤廃することで、モバイル市場全体の流動化を加速させる契機となり、12月には申し込み数が200万回線を突破した。

 基地局整備のスピードも異例のものだった。当初はパートナー回線の借用を前提としていたが、全国で基地局建設を急ピッチで進め、2022年2月には楽天回線エリア人口カバー率96%を当初の予定より4年前倒しで達成した。2021年4月には「Rakuten UN-LIMIT VI」とともにiPhoneの取り扱いを開始したことも重なり、料金プランに磨きがかかるのと同時に端末ラインアップの拡充を果たした。2022年3月には実店舗数が1000店舗を超え、ユーザー接点の拡充も進んだ。

 2023年に入ると法人需要の開拓も本格化し、1月に「楽天モバイル法人プラン」の提供を開始。同年6月には、ローミングエリアでの制限を撤廃した「Rakuten最強プラン」へとサービスを刷新。これにより、自社回線か否かを意識することなく、全国どこでも無制限で高速通信が利用できる環境が整った。

 そして、楽天モバイルの過去5年間の歴史において最大の転換点となったのが、悲願であった「プラチナバンド」の獲得だ。2023年10月に700MHz帯の特定基地局開設計画が認定されると、同社は自社の強みである完全仮想化技術の知見をフルに活用。極めて短期間で商用化の準備を整え、2024年6月に商用サービスを開始した。その際に同社は、長年の課題であった屋内や地下でのつながりにくさが大幅に改善されたことをアピールしていた。この時点で契約数は700万回線に達していた。

楽天モバイル 1000万回線 2024年6月27日、楽天モバイルは700MHz帯のプラチナバンドが狭い路地や屋内でも電波が届きやすい性質を生かし、既存の1.7MHz帯を補完するバンドとして運用していくことなどを発表した。画像は同日の会見にて撮影
楽天モバイル 1000万回線 楽天モバイルは6月27日、既存の基地局に700MHz帯のアンテナを併設することで効率よくエリアを拡大していくことも明らかにした。この画像も同日の会見にて撮影

 2024年2月から5月にかけては、「最強家族プログラム」「最強青春プログラム」「最強こどもプログラム」といった幅広い世代向けの割引施策を次々と展開。同年9月には「最強シニアプログラム」も開始し、全世代を網羅する体制を整えた。これらの施策が奏功し、2024年10月には800万回線、2025年2月には850万回線を突破した。

 2025年4月、楽天モバイルは本格サービス開始から5周年という大きな節目を迎えた。参入当初、完全仮想化ネットワークの実現を疑問視する声もあったが、同社はそれを現実のものとし、日本の通信料金の大幅な引き下げに寄与する存在となった。楽天グループの多種多様なサービスと連携した「楽天エコシステム」との相乗効果は、他社が簡単にはまねできない独自の強みとして確立された。

 同年10月には、新料金プラン「Rakuten最強U-NEXT」の提供を開始。月額4378円(家族割引適用で4268円)で、無制限のデータ通信とU-NEXTの動画・電子書籍サービスをセットで利用可能にした。通信とエンタメを融合させた「エンタメバンドル」型プランであり、サブスクを多用する層にとって利便性とコストパフォーマンスを両立させた戦略的なサービスといえる。

楽天モバイル 1000万回線 「Rakuten最強U-NEXT」は無制限のデータ通信とU-NEXTの動画・電子書籍サービスをセットで利用可能にした料金プランだ。画像はサービス開始前日(9月30日)に実施の会見にて撮影
楽天モバイル 1000万回線 過去5年間の取り組みの一部は2025年12月25日のイベントで報道陣に配布された「契約数1000万回線突破の号外」(写真=左)にも記載されている
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