悲願の1000万回線を達成した三木谷氏だが、その表情に慢心はない。「長いような、短いような……。でも、やはりまだ通過点だと思っているので、ここで慢心せず、逆にサービスがよりよくなるように頑張っていきたいと思う」と語る言葉からは、既に次なるステージを見据えていることがうかがえる。具体的な数値目標こそ明言しなかったものの、「一人一人のお客さまに対して満足度をさらに上げていくとか、ネットワークをさらによくしていくとか、やることはまだ山のようにある」と、品質向上への意欲を燃やす。
今後のサービス展開において、三木谷氏が「次の大きな目玉」と位置付けるのが、衛星通信プロジェクト「AST SpaceMobile」との連携だ。1000万回線突破イベント前日の12月24日には新型衛星の打ち上げが成功し、将来的には衛星から直接スマートフォンへのブロードバンド通信が可能になるという。「日本においては自然災害が非常に多いので、どんな状況になってもつながるということは、国にとっても重要なプロジェクトだ」と三木谷氏は強調する。プラチナバンドを活用したこの技術は、山間部や離島を含めたエリアカバー率を100%に近づけるための切り札となる。
三木谷氏が「次の大きな目玉」と位置付けるのが、衛星通信「AST SpaceMobile」との連携だ。「Rakuten最強衛星サービス」として、2026年第4四半期の開始を予定する。画像は4月23日に実施の会見にて撮影
Rakuten最強衛星サービスの特徴。三木谷氏が4月30日、Rakuten最強衛星サービスの優位性として紹介していたのが、衛星アンテナの大きさだ。他社の約36倍となる。通話やテキストメッセージだけでなく、動画視聴も可能になるという。この画像も4月23日に実施の会見にて撮影一方で、足元のネットワーク品質における課題も認識している。三木谷氏は「KDDIのローミングサービス提供者をはじめ、多方面からの協力があったからこそ、ここまでたどり着くことができた」と振り返る一方で、楽天モバイルのユーザーはデータ使用量が非常に多く、平均で30GB近く、ヘビーユーザーでは100GBに達することもあるという。「正直言って、他社さんよりも圧倒的に多い」と三木谷氏が認める通り、トラフィックの増大はネットワークへの負荷となる。特に都心部の密集地における通信品質の維持は喫緊の課題だ。三木谷氏は「都内の地下鉄、それから山手線についてはだいぶ改善し、見えてきたかなと思っているので、それは当然やるということと、5Gの基地局の設置を急いでいく必要があると思っている」と述べ、インフラ強化への投資を継続する姿勢を示した。
完全仮想化技術による価格破壊から始まり、プラチナバンド獲得、それから1000万回線突破と、常識を覆し続けてきた楽天モバイル。その挑戦は、衛星通信による「空の産業革命」や、高密度な5Gネットワークの構築へと続いていく。1000万という数字は、単なる到達点ではなく、日本の通信インフラを支える主要キャリアとしての新たなスタートラインといえるのかもしれない。
楽天モバイルが1000万回線を突破 サービスインから5年8カ月で達成
楽天モバイルの契約数が「950万回線」に 目標の1000万回線は目前
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