ソフトバンクは5月11日、2026年3月期の決算を発表するとともに、2027年3月期から2031年3月期までの新中期経営計画を公表した。2025年度の売上高は7兆387億円と初めて7兆円を突破し、過去最高を更新。新中計では2030年度に営業利益1兆7000億円を目指す。コンシューマー事業は、新規ユーザーの獲得拡大に頼った従来の成長モデルから、長期利用とARPU向上を重視する戦略へ転換しつつある。
2025年度の業績は売上高が前年比7.6%増の7兆387億円、営業利益が5.4%増の1兆426億円、親会社の所有者に帰属する純利益が4.7%増の5508億円となった。いずれも過去最高で、3期連続で当初予想を上回って着地した。
セグメント別では、コンシューマー事業の売上高は3兆151億円(前年比2.1%増)、営業利益は5508億円(同3.8%増)と着地した。モバイル通信収入は1兆5918億円で増収となった。
法人向け通信・ソリューションを手掛けるエンタープライズ事業と、ICT機器の販売を担うディストリビューション事業は、それぞれ初めて売上1兆円を超えた。PayPayを中核とするファイナンス事業は営業利益が約2倍の863億円に伸長した。
一方、LINEヤフーを傘下に持つメディア・EC事業は、アスクルが受けたランサムウェア被害の影響で326億円の減益要因が発生し、通期で7.1%の減益となった。同要因を除けば6%の増益で、宮川潤一社長は「ビジネスとしては順調」と評価した。
配当金は5年ぶりに増配する。2025年度は8.6円で据え置いたが、2026年度は8.8円に引き上げる。新中計の期間中は継続的な増配を目指す方針で、純利益6000億円で9円、7000億円で10円を目安とする。
新たに発表した5カ年中計は「Activate AI for Society」と名付けられた。2030年度に連結営業利益1兆7000億円、純利益7000億円を目指す。営業利益の年平均成長率は10%となる。
事業構造は、通信を基盤としつつ、その上にAIインフラ、AIサービスを積み上げる構造に再定義した。新領域としてAX(AIトランスフォーメーション)、GX(グリーントランスフォーメーション)、その他の事業を据える。エンタープライズ事業を成長のけん引役と位置付け、2030年度のセグメント利益を2025年度比で倍増させる計画だ。
AIインフラの中核となる大阪・堺のAIデータセンターは、2027年度に稼働を開始する。電力容量140MWで、NVIDIAの「H200」換算で約10万枚相当のGPUを搭載する。
5カ年計画の前半3年間(2026〜2028年度)でソフトバンクは、コンシューマー・エンタープライズ事業から3.4兆円の営業キャッシュフローを稼ぐ計画だ。通信設備投資に1.5兆円、戦略投資に1兆円、株主還元に1.3兆円を充てる。
戦略投資1兆円のうち3000億円は、堺・苫小牧データセンターと革新型バッテリー「亜鉛-ハロゲン電池」の製造ライン向けで確定済み。残り7000億円はAX・GXファクトリーでの量産投資や追加電力対応、M&Aのバッファーに充てる方針だ。
コンシューマー事業は、これまでの新規ユーザー獲得から、既存ユーザーの長期利用とARPU向上へと軸足を移す。新中計ではAIエージェントを中心とするサービス進化と、グループ全体での経済圏連動を深めることで、1人あたりの収益を引き上げる方針を打ち出した。
宮川社長は、ユーザーの好みや行動を「生涯記憶」として蓄積するAIエージェントが、スマートフォンを超えてウェアラブル、スマート家電、モビリティ、ロボットといった多様なデバイスを介して生活を支える姿を描いた。経済圏との連動も深め、PayPayやヤフーなどグループサービスの利用を引き上げる。
2025年度のスマートフォン契約数は3201.5万件で、前年度比0.7%増にとどまった。モバイルARPUは前年の3740円から3720円へ低下し、年間解約率は1.44%で前期の1.31%から上昇した。ソフトバンクは2025年9月から、短期で他社に乗り換えるホッピングユーザーへの過剰なインセンティブ提供を抑制する構造改革を進めており、その影響は当面続く見通しだ。
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