世界を変える5G

なぜドコモは「値上げ」に踏み切れないのか? 背景にある通信品質、5G設備投資の遅れが足かせに石野純也のMobile Eye(1/3 ページ)

» 2026年05月09日 11時00分 公開
[石野純也ITmedia]

 NTTが5月8日、2025年度決算を発表し、ドコモの苦境が明らかになった。特に業績が落ち込んでいるのが、同社の土台となるモバイル通信。2025年に導入した新料金プラン「ドコモMAX」の拡大などで、ARPU(1ユーザーあたりの平均収入)は回復傾向にある一方、コストがかさんで営業利益は減少した。その根底にあるのが、2023年ごろから続くネットワークの品質低下問題だ。

 一方で、3月31日の3G停波に伴い、品質改善の“武器”が増えたのも事実だ。4月27日には、3Gで停波した2GHz帯を使って米SpaceXのダイレクト通信サービス「docomo Starlink Direct」を開始。800MHz帯の4Gにも5MHz幅を追加しており、都市部の奥まったエリアなどでの品質改善につなげる構えだ。ただ、他社のようにネットワーク維持を理由にした既存プランの値上げには踏み込めていない。その背景を解説する。

ドコモ ドコモの25年度決算。販促費やネットワーク強靭化費用がかさみ、営業利益は前年度比でマイナスになった

課題だったネットワーク品質にも改善の兆し? 基地局新設や周波数転用を加速

 「課題であったネットワークと顧客基盤に改善の手応えを感じている」――ドコモの代表取締役社長 前田義晃氏は、5月8日に開催された決算説明会でこのように語った。同氏が社長に就任したのは、2024年のこと。そこから約2年、ドコモの土台ともいえるユーザー獲得やネットワーク改善に精力的に取り組んできた。その成果は、300万契約を超えた大容量プランの「ドコモMAX」や、ARPUの反転などに現れつつある。

ドコモ ドコモの前田氏は、社長就任以来、顧客基盤強化とネットワーク品質の改善を重点課題として取り組んできた

 ネットワーク品質の低下は、コロナ禍が明けた2023年ごろから顕在化してきた課題だ。街中に人が戻った結果、ドコモの予想を大きく上回るトラフィックが発生。Sub6の5G整備が追い付いていなかったこともあり、都市部などの混雑したエリアを中心に“パケ詰まり”が発生した。当初は基地局のチューニングなどの対症療法で改善を図ったドコモだが、前田氏が社長就任以降、基地局への投資を根本的に見直し、容量拡大に注力している。

 その成果として、ドコモは2025年度に約6800局の基地局を新設。「26年度についても、25年度下期に実現した高い構築ペースをさらに継続して、強固な通信インフラ基盤を築いていく」という。また、700MHz帯を中心に4Gから5Gへの転用も加速させ、“点”ではなく、“面”での5Gエリアを拡大し、安定化も図っている。

ドコモ
ドコモ Sub6の基地局を約6800局新設。700MHz帯の5G転用も進めて通信の安定化を図っている

 基地局の新設と周波数転用を進めた成果として、2025年度の5G基地局数は5万2300に達している。さらに、電波の届きやすい4Gのプラチナバンドの帯域幅を、10MHzから15MHz幅(上り下りの合計で20MHzから30MHz幅)に拡大している。これは、2025年度末に3Gを停波し、周波数に空きが出たためだ。都市部などでは屋内のパケ詰まり改善に効果を発揮するという。

ドコモ 3Gの停波に伴い、4Gの800MHz帯を強化。帯域幅を5MHz幅拡大している

 鉄道動線に沿った体感品質の改善も進めており、動線全区間の最も混雑する時間帯にHD動画のストリーミングが可能な品質を維持できている路線は、28にまで拡大した。ドコモのネットワーク品質低下を訴える声が出始めていた2023年度は18路線だったため、そこから10路線改善している。また、全路線の平均スループットも、25年度は51%向上した。

ドコモ 鉄道動線での体感品質も向上した

 5Gのみで通信を行う、5G SAのエリアも拡大している。決算説明会では、首都圏のエリアマップを公開。もともと住所をリスト化しているだけだったが、徐々に面展開が進んでいることがうかがえる。前田氏によると、「重要なのは人口集中地域での対応。首都圏や大阪府、愛知県あたりから、まずしっかり進めていく」という。今年(2026年)度はさらにエリアを拡大し、「他社になるべく追い付きたい」(同)方針だ。

ドコモ 5G SAは、トラフィックが混み合うエリアを中心に拡大している
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