ドコモの通信品質はどう改善したのか、前田社長が解説 3G停波が寄与、5G SAの拡大も

» 2026年05月08日 13時55分 公開
[金子麟太郎ITmedia]

 NTTドコモは5月8日に「2025年度決算および2026年度業績予想説明会」を開催した。その中で、前田義晃社長はドコモの通信品質がどのように向上し、これまでいかにして品質向上に取り組んできたのかを解説した。

これまでの流れ:通信品質低下の背景と初期の対策内容

 ドコモのネットワークは、2023年度頃からトラヒックの急増や都市部の再開発に伴うエリア変動、基地局の撤去などにより、局所的な4G通信速度の低下が発生し、ユーザーから「つながりにくい」という不満の声が上がっていた。これに対しドコモは、通信品質の改善を最重要課題と位置付け、対策を本格化させた。

 初期の取り組みとして、新宿や渋谷など人が集中する都内主要エリアや鉄道動線において、基地局ごとのカバーエリア調整やチューニング、設備容量の増設といった「点」と「線」に対する集中対策を実施した。並行して、SNSに投稿される不満の声やスマートフォンのアプリ利用データをAIや機械学習を用いて分析し、ユーザーの体感品質が劣化している場所を早期に検知・可視化して迅速に対策を打つ仕組みを構築してきた。

NTTドコモ 通信品質 NTTドコモのイメージ。2023年度頃からの局所的な品質低下に対しドコモはAIや機械学習を活用して体感品質が劣化している場所を早期に検知し迅速に対策を打つ仕組みを構築した

ネットワーク強靭化による具体的な品質向上の成果

 2024年度から2025年度にかけて、ドコモはネットワーク強靭化を掲げ、5G(Sub6および4G周波数帯の転用)基地局の増設と最新装置への移行を大規模かつ急速に進めた。2025年度単年で約6,800局の5G基地局を構築し、5G基地局総数は前年度の33,500局から45,500局へと大幅に拡大した。また、イベント会場やスタジアムなど一時的に人が密集する場所でも移動基地局車の配備やMU-MIMO(マルチユーザーMIMO)技術の導入を行い、局所的なトラヒック対策を強化してきた。

 2026年5月の決算説明会資料では、こうした徹底した投資と対策の結果、通信品質が劇的に向上したことが具体的な数値で示されている。

 第一に、主要都市中心部の体感品質向上だ。全国の主要都市における253カ所の測定ポイントのうち、243カ所(約96%)で下りスループット100Mbps以上を記録し、快適な通信環境を実現した。

 第二に、鉄道利用時の品質改善だ。利用者が多く品質改善ニーズが高い全国の主要59路線のうち、動画視聴などが快適に利用できる路線の数は、2023年度の18路線から2025年度には28路線へと拡大した。これら全路線の平均ダウンロードスループットは、2023年度比で約51%も向上している。特に、以前から混雑が指摘されていた山手線周辺においては、2023年度比で約77%という目覚ましいスループットの改善を達成した。これらの成果は第三者機関の調査にも表れており、顧客満足度調査において通信品質でトップ評価を獲得するに至っている。

2026年度以降の新たな品質向上戦略

 ドコモは現状に満足することなく、2026年度は5G基地局(5万2300局目標)の構築ペースをさらに加速させる計画である。また、さらなる品質向上とつながりやすさの確保に向け、以下の新たな打ち手を展開する。

3G停波とプラチナバンドのフルLTE化

 2026年3月末に予定されている3Gサービスの終了に伴い、これまで3Gで使用していた700MHz帯や800MHz帯の周波数を4Gおよび5Gへと転用する。特にプラチナバンドと呼ばれる800MHz帯においては、フルLTE化を実施することで帯域幅を従来の20MHz幅から30MHz幅へ拡張する。これにより、4G(LTE)の通信容量が1.5倍に拡大し、屋内や地下空間におけるつながりやすさと安定性が飛躍的に向上する。

NTTドコモ 基地局 2026年度以降も継続的な設備投資を行い3G停波に伴うプラチナバンドのフルLTE化や5G SAの拡大と直接衛星と通信できる新サービスを展開する予定だ

5G SAの拡大と衛星通信サービスの実用化

 4G設備の混雑の影響を受けない5G専用の独立したネットワークである5G SA(スタンドアロン)のエリアを首都圏等で順次拡大し、密集地でも快適な通信を実現する。さらに、4月27日からは、空が見えればスマートフォンが直接衛星と通信できるdocomo Starlink Directを全国でサービスを提供しており、日本最大規模の対応端末数(2300万台)を生かして、災害時やルーラルエリアを含めたあらゆる環境で途切れない通信インフラの提供を目指す。

NTTドコモ 基地局 docomo Starlink Directの対応機種数。ドコモは日本最大規模の対応端末数(2300万台)をアピールしている

エリア・品質・信頼性を一段引き上げるネットワークへ

 ドコモは、通信品質の低下という課題に対し、AIを用いたデータ主導の品質監視から始まり、基地局の大規模展開、そして3G停波を見据えた周波数の再配置へと、多角的なアプローチでネットワークの強靭化を進めてきた。2025年度末の時点で都市部や鉄道路線におけるスループットは劇的な改善を見せており、2026年度以降も継続的な設備投資と最新技術の導入によって「エリア・品質・信頼性を一段引き上げるネットワーク」の実現を目指すという決意が表れている。

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.

アクセストップ10

2026年09月21日 更新
  1. 「マイナポータルアプリ」が「マイナアプリ」へ刷新されて何が変わった? メリットや利用方法を解説 (2026年09月20日)
  2. iPhone 18 Proに保護フィルムを貼るとFace ID認証できない不具合 原因は“赤外線カメラの位置” (2026年09月19日)
  3. Androidでおサイフケータイを使いたくない理由 初期化で消えないデータと売却時の落とし穴 (2026年09月19日)
  4. フォルダブル歴5年の筆者も驚いた「iPhone Duo」の完成度 ソフトウェアの力で再定義できるか (2026年09月19日)
  5. 出そろった「iPhone 18 Pro」の価格を4キャリアで比較 ソフトバンクが衝撃の安さ、楽天モバイルが異例の施策 (2026年09月13日)
  6. 「おサイフケータイ」のリセット方法を改めてチェックする(新しめの機種限定) (2026年09月07日)
  7. 月40GBになった「ahamo」はどれだけお得? 他社中容量プランと比較、「大盛り」に意外な落とし穴も (2026年09月21日)
  8. JR東日本「分かりにくい」新幹線券売機を改善へ なぜ、スマホではなく「駅での最短1分購入」を実現? (2026年07月04日)
  9. iPhone Duo、256GBで36万4800円は妥当な価格設定なのか――アップル離れを招きかねない「既存モデルの価格改定」 (2026年09月20日)
  10. IIJに聞く“eSIMサポート”の裏側 「つながらない」「消した」なぜ起こる? 現場が打つ次の一手 (2026年09月18日)
最新トピックスPR

過去記事カレンダー