ソフトバンクは5月11日、2026年3月期決算説明会を開催した。この場において、同社の宮川潤一社長は、昨今の物価高騰を背景とした通信料金の改定、そしてオンライン専用ブランドである「LINEMO」の今後の戦略について言及した。特に注目が集まったのは、先行して実施された主力ブランドの値上げに関する背景と、LINEMOにおける同様の動きの有無だ。
宮川氏は、LINEMOの現状について、ユーザー数が爆発的に増加し続けているわけではないと率直に認めた。現在のソフトバンクにおける契約数の大半は、主力ブランドであるソフトバンク(SoftBank)とY!mobileの2大ブランドが占めている。LINEMOは宮川社長の就任時期にスタートし、2026年で5年という節目を迎えるが、その立ち位置については常に議論の対象となっている。
先月4月に発表された新料金プランに伴う値上げについて、宮川社長は苦渋の決断だったことを強調した。説明会において、以前に専務執行役員の寺尾洋幸氏が説明した通り、会社としてはギリギリまで値上げを回避する努力を続けてきたという。他社の動向や、料金改定がユーザーに与える影響を長期間にわたって慎重に検討し、コスト削減による吸収を模索してきた経緯がある。
しかし、世の中の物価上昇の勢いは想定を超えていた。宮川社長は「値上げしないことには会社の構造が壊れてしまう」という、極めて危機的な状況に陥ったことを明かした。企業のインフラ維持やサービス品質の確保を考慮した結果、現状のコスト削減努力だけでは限界に達したと判断した。本来であればさらなる利益確保が必要な状況だが、現時点ではやむを得ない範囲での実施にとどめた。
一方で、ユーザーが最も懸念しているLINEMOの料金改定については、宮川社長は明確な回答を示した。核心部分である「値上げをする気があるか」という点に対し、宮川社長は今のところLINEMOの値上げは予定していないと断言した。主力ブランドで値上げに踏み切る一方で、オンライン専用のLINEMOについては、現状の料金体系を維持する方針を当面は継続する考えだ。
LINEMOのプランは2種類ある。小中容量向けの「ベストプラン」は段階制で、3GBまで月額990円、10GBまで2090円となる。一方、「LINEMOベストプランV」は、月間30GBまでの大容量通信と「1回5分以内の国内通話無料」が最初からセットになった定額プランだ。月額料金は2970円(税込)で、動画などをよく見る方や、短い電話を頻繁にかける方に向いている。また、月間30GBを超過しても最大1Mbpsという中速通信が利用可能だ(45GB超過後は最大128kbps)。
ソフトバンクは過去にLINEMOベストプランVの料金改定を実施した。2024年10月31日までは、20GB超〜30GBの利用で月額3960円となる2段階制の仕組みだったが、競合他社であるNTTドコモの「ahamo」のデータ増量の動きに対抗する形で、同年11月1日に月額2970円で30GBまで利用できるように変更。さらに2025年2月1日の改定によって正式に現在の「月額2970円の定額制プラン」へと実質的な値下げ・増量を行った。
SoftBank、Y!mobile、他社が値上げに動く中、LINEMOは依然として安さを求めるユーザーの重要な選択肢となっている。
【更新:5月11日18時15分】LINEMOのプラン概要に関して追記を行いました。
今後の戦略として、宮川社長はブランドポートフォリオの再定義を示唆した。ソフトバンクとY!mobileが主力としての役割を果たす中で、LINEMOをこの先どのように進めていくかは、社内で引き続き議論を深める必要があるとしている。市場環境の変化が激しい通信業界において、コスト構造の健全化とユーザーへの価値提供をいかに両立させるかが、同社の大きな課題となっている。
決算説明会の質疑応答では、収益増を目的とした新たな仕掛けについても問われた。宮川社長は、現時点では具体的な新施策の詳細こそ明かさなかったものの、LINEMOを含めた各ブランドの持続可能性について常々議論していると述べた。物価高の影響を直接受ける通信設備投資や運営コストの増大に対し、各ブランドの役割分担を明確にすることで、経営の安定化を図る狙いが見て取れる。
通信料金を巡っては、政府の要請もあり長らく値下げ基調が続いてきた。しかし、今回宮川社長が語った「構造が壊れてしまう」という言葉は、通信キャリアが直面するコスト増の深刻さを物語っている。インフラ企業としての責任を果たすための値上げという、かつてない局面を迎えたソフトバンクが、今後LINEMOというブランドをどう活用していくのか、その手腕が試されている。
LINEMOは月額990円からの低価格なプランを武器に、若年層やオンライン完結型サービスを好む層をターゲットとしてきた。主力ブランドの値上げが実施される中で、LINEMOが価格据え置きを選択したことは、同ブランドの競争力を相対的に高める可能性がある。宮川社長は、主力2ブランドとのバランスを考慮しつつ、慎重にサービス維持のかじ取りを行っていく姿勢を示した格好だ。
ユーザーとしては、宮川社長による「LINEMOの値上げ予定なし」という発言から安堵できるところではあるが、物価高騰が今後さらに継続すれば、同社のブランド戦略が再び大きな転換を迫られる可能性も否定できないだろう。
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