UQコミュニケーションズの野坂章雄社長は5月25日、ワイヤレスジャパン2011の基調講演に登壇。WiMAXサービスの現状と2011年度以降の事業計画・戦略を説明した。
2009年7月に開始(プレサービスは2009年2月開始)したWiMAXサービスの契約者は、2010年度の目標だった80万契約を2011年3月に達成、そして2011年6月には100万契約を超える見込みとする「1つの壁を越えた。今後、月あたりの伸び率も高まると思う」(野坂社長)の段階まで来た。
ここには、2010年6月の「URoad-7000」、同12月の「AtermWM3500R」など高速通信と使い勝手のよさを追求したWiMAXルータを投入した点とともに、タブレット端末「iPad」(2010年5月)、WiMAX内蔵スマートフォン「HTC EVO WiMAX」(2011年4月)、10メーカー44機種(2011年4月現在)に増えたWiMAX内蔵PCなど、高速ブロードバンドワイヤレス通信の需要が非常に高まった2010年度に、新料金プランを含むサービス増強、新端末の投入、サービスエリア拡充などをタイミングよく投入した効果がきれいに表れたようだ。
野坂社長によると「2010年度はBWA元年だった」という。下り最大40Mbps/上り最大10MbpsとするWiMAXに対し、2010年12月3日に開始したHD-HSDPAサービスのイー・モバイル「EMOBILE G4」(および2011年2月に開始したソフトバンクモバイル「ULTRA SPEED」)、同年12月24日に開始したNTTドコモのLTEサービス「Xi」など、国内各社が新世代のデータ通信サービスを始めた。
「他社の新世代サービスが始まり“WiMAXは大丈夫なの?”と心配されることもあるが、高速サービスはやはり便利という点がより伝わりやすくなり、かつWiMAXの優位性を改めて知ってもらえるので、逆に好都合と思っている。また、エリアがまだ狭いと言われることもあるWiMAXだが、新世代サービスで比較すると圧倒的に広い。2011年3月末時点で全国実人口カバー率71%、窓際2メートルの屋内を含む東名阪エリアにおいては99%に達した。Xiは東名阪エリアで約8%、EMOBILE G4は関東・東海・関西・北海道・九州の主要都市で約40%というので、確実に優位性がある。基地局数も2010年度末で1万4000局の設置を達成しつつ、2011年度は2万局を目標にさらに密になるよう努力する」(野坂社長)
2011年度は、上記2万局の設置とともに「交通路線」と「地下街」のエリア拡充に力を入れる。先日「都営地下鉄、東京メトロでWiMAXサービスが利用できるようにする計画」の発表が話題となったのが記憶に新しく、これを含めて通勤・通学中などの移動中でより便利に利用できるようにする路線沿線のエリア拡充や、全国の主要地下街をエリア化する計画を推進する。
地下鉄の対策については、イー・モバイルも地下鉄のカバー率98%をうたうが「そちらは駅構内のみでのカバーであり、WiMAXは駅と駅の間も、つまり列車の移動中も利用できるようにする点が大きく異なる」(野坂社長)と自信を見せる。
地下鉄トンネル内のエリア化は駅の両端に指向性アンテナを設置し、両側からトンネル内にWiMAX電波を吹き込むことで実現する仕組みだ。こちらはJR東日本の総武快速線東京駅〜錦糸町駅区間ですでに運用され、かつ成田エクスプレス「E259系」車両にもWiMAXレピーターの設置により移動車内のWiMAXエリア化をすでに実現している例も強調した。
このほか2011年夏の導入を目標に、上り速度を最大15Mbps(下り速度は最大40Mbps)まで上げる「64QAM符号方式」(従来の16QAMは1シンボルあたり4ビット、対して64QAMは6ビットと、より効率よく伝送する仕組み)を導入する。これによりユーザーの実効速度も平均5Mbpsから同7.5Mbpsに向上するという。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.