スマホを充電、さらに子機にもなる Bluetooth+バッテリーで目指した究極の2台目PHS開発陣に聞く「ENERUS WX03S」(1/2 ページ)

» 2013年01月30日 18時19分 公開
[平賀洋一,ITmedia]

 ウィルコムが2012年12月に発売した「ENERUS WX03S」は、音声通話だけでなくモバイルバッテリーとしても利用できるセイコーインスツル(SII)製のPHS端末だ。SIIによると、バッテリーとして外部機器に電源を供給できるPHSとしては世界で初めての製品だという。PHSだけでなく、過去のフィーチャーフォンやスマートフォンを見渡してもかなりユニークな存在といえるだろう。

photophoto 「ENERUS WX03S」

 このENERUSに限らずSIIのウィルコム向け端末は、話せるWi-Fiルーターの「PORTUS WX02S」や、Bluetoothでスマホの子機になる「SOCIUS WX01S」、そして中国のPHSサービス「小霊通」にも対応していたシンプル端末「X PLATE WX30S」など、ユニークなモデルが多い。

 ENERUSの開発経緯に加え、数々のユニークな製品が生み出されるその背景・共通する製品コンセプトなどについて、ウィルコムの製品担当である島田健司氏と、SIIで企画を担当した山本美穂氏、同じくSIIでプロダクトチームを率いた武藤淳氏、ファームウェアやユーザーインタフェースなどソフト面を担当した三井謙二氏に話を聞いた。

photo 左から、ウィルコムの島田氏、SIIの三井氏、武藤氏、山本氏

「バッテリーが持たない」というスマホの不満を2台目が解決

――(聞き手:ITmedia) モバイルバッテリーとしても利用できるPHSとは、かなりユニークな製品だと思います。どういった経緯で開発がスタートしたのでしょうか。

山本氏 技術的にはPORTUSの開発経験が背景にあります。PORTUSはWi-Fiルーターとしても長時間使えるよう、1700mAhというPHSとしては非常に大きいバッテリーを搭載しました。PHSに大容量バッテリーを搭載する技術を確立したうえ、連続1200時間(約45日)という長時間待受が可能な点も高い評価を受けました。

 もう1つはスマートフォンへの不満ですね。「バッテリーが持たない」という声が非常に多く、“2台目”として大容量バッテリーを搭載するPHSがあるなら、これからスマホを充電すればいいのでは――と考えました。PORTUSはノートPCとの組み合わせを意識したモデルですが、ENERUSはスマホと組み合わせることが前提になりますので、SOCIUSからBluetooth機能を継承しています。

photophoto ENERUSの底面にあるUSB端子から、スマホなどの外部機器に電力を供給できる
photophoto もちろんUSBを電源とするガジェットも動作する

島田氏 SOCIUSもスマホと一緒に持つ最適な2台目というコンセプトで開発したモデルでした。SOCIUSはBluetoothでスマホの子機になりましたが、ENERUSはバッテリーに加えてBluetoothの親機にもなります。スマホともう1台持つなら、究極の存在ではないでしょうか。

―― 確かに自分も、1人のスマホユーザーとしてバッテリーへの不満はありますね。モバイルバッテリーが必須というユーザーも少なくないと思います。

山本氏 調査するとスマホのバッテリーで困っている方は非常に多く、中にはスマートフォンとモバイルバッテリー、そしてPHSの“3台持ち”という方も珍しくありません。さすがに毎日3つのデバイスを持ち歩くのは大変ですから、モバイルバッテリーとPHSが1つになるならかなり利便性が上がります。

―― バッテリー容量についてですが、1700mAhというのはPHSとしては非常に大きいと思います。ただ、充電先となるスマートフォンのバッテリーが大容量化していて、ちょっと物足りなさも感じます。

山本氏 そこはプロジェクトチームの中でもかなり議論がありました。

武藤氏 バッテリー容量を決める際に考えなくてはならないのが、本体の大きさです。ENERUSもPHSである以上、ケータイとしてのサイズ感を重視しないといけません。もちろんスマホにきちんと充電できる容量も必要ですから、この2点のバランスが重要になります。そこで基準にしたのがiPhoneです。iPhoneの充電が1回しっかりできて、さらにPHSとしての待受時間を残す。それに必要なサイズを突き詰めた結果、1700mAhぐらいが妥当ではと判断しました。

山本氏 本体を大きくすればバッテリー容量も増やせますが、今度は“電話機”として認識してもらえない恐れがあります。ふさわしい外観をとどめつつ、バッテリーをどこまで大きくできるのかが課題でした。今後ENERUSが市場でどう受け止められるかによりますが、本体が分厚くなっても容量を求める声が大きければ、バッテリーを強化した後継モデルもあり得ると思います。

―― モバイルバッテリーとしての仕様は5V/500mA(0.5A)ですね。昨今のスマホ用充電器では1A以上の高出力タイプも珍しくありませんが、これはPHSと一体化していて出力に制約があるためですか?

武藤氏 いえ、開発時に一般的だったモバイルバッテリーに合わせたためです。電流を増やして高出力にすることは技術的に可能ですが、開発を始めた当初は出力0.5Aというモバイルバッテリーが一般的でした。スマホ関連の製品が高出力・大容量化したのは開発が後半にさしかかったころです。その段階で出力だけをアップさせると熱の問題などが出てきてしまうので、当初の仕様のままにしています。

―― バッテリーとして使える一方で、PHSとして使いたいときに、もうバッテリーがないなんてことも考えられますが。

三井氏 外部機器にどれくらい充電するかは、10〜90%の間で1%刻みで設定できます。PHS用として10%は残すようにしました。この段階から手動で充電の操作をもう1度すれば、バッテリーをすべて外部機器向けに振り分けられます。

山本氏 バッテリーの設定は時間でも可能です。接続するたびに30分だけ充電する――という使い方もできます。

photophoto モバイルバッテリーとして使う場合、どれくらいの残量を残すのか、また何分くらい充電するのかを設定できる

―― 普通のモバイルバッテリーにはできない使い方ですね。

武藤氏 ディスプレイやダイヤルキーなどのユーザーインタフェースがあるため、より細かい設定が可能です。これはPORTUSも同様でした。普通のモバイルWi-FiルーターはPCに接続しないと細かい設定ができませんでしたが、PORTUSなら単体で可能です。ENERUSは充電機能ですが、ほかにはない付加価値だと思います。

―― ENERUSの充電機能でおやっと思ったのが、マニュアルモードとオートモードの存在です。USBケーブルをつなげたらすぐ充電でいいと思うのですが、なぜ2つのモードがあるのですか?

武藤氏 そこも議論を重ねた点です。市販されているモバイルバッテリーのほとんどには、充電をオン/オフするスイッチがある。ケーブルを着脱するだけでなく、スイッチを操作することでユーザーが明示的にオン/オフするようになっています。

 これをENERUSで再現するには、スマホとUSBケーブルでつないだあとにメニューから充電を開始する操作をしてもらう必要があります。これがマニュアルモードですね。もちろん、それが面倒という場合もありますので、ケーブルをつなげただけで充電が始まるオートモードも用意しました。

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