“LTEでも安い通話料金”は実現するか――通信キャリアが「VoLTE」を推進する理由神尾寿の時事日想(2/2 ページ)

» 2014年02月03日 08時22分 公開
[神尾寿,Business Media 誠]
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VoLTEの狙いは「LTEインフラの有効活用」と「3G終了への布石」

 しかし、通信キャリア各社はなぜ、ここにきてVoLTE推進を重視し始めているのか。理由は大きく2つある。

 1つは現在のLTEと、今後の商用化が予定されているLTE-Advanced (第4世代携帯電話・4G)の有効活用だ。LTEやLTE-Advancedはデータ通信に最適化し、電波の利用効率を飛躍的に高めたインフラ技術である。前述のとおりVoLTEは電話サービスを“データ通信の一部”としているため、LTEやLTE-Advancedによる電波利用効率向上 (= インフラコスト削減)の恩恵をフルに受けられる。他方で、従来型の回線交換方式では電波利用効率の悪い3Gネットワークしか使えない。

 むろん、LTEのインフラは目下拡大中であり、今のところ最大手のNTTドコモでも全国を広くあまねくカバーするのは従来からある3Gネットワークの方である。だが、LTEエリアが今後3Gネットワークと完全に同じになれば、LTEを使うVoLTEの方が「キャリアにとって有限の資産である電波の有効利用ができる」というビジネスメリットが出てくる。しかも、昨年後半からKDDIが先導する形で、キャリア各社のLTEエリア拡大競争が激化している。その結果、LTEエリア拡大のペースが上がり、それにあわせてLTEインフラへの投資額が積み上がっているのだ。せっかく投資したLTEインフラの有効活用をするために、VoLTE普及に力が入るのも自然な流れである。

VoLTE VoLTE(ボイスオーバーLTE)は、LTEの通信網を使ってIP電話を可能にする技術。LTE網よりも3G網のほうが広い間は、LTEエリアと3Gエリアをまたがって通話する場合「CSフォールバック」という仕組みを使ってシームレスに会話が続けられるようにする(出典:NTTドコモ テクニカル・ジャーナル VOL19)

 そして、もう1つの理由が「3Gサービス終了への布石」である。携帯電話の通信技術は進化の速度が速く、陳腐化も著しい。2000年代に主流だった第3世代 (3G)ネットワークも、いずれその役割を終える時期が来る。前述のとおり第4世代(4G)であるLTE-AdvancedではVoLTE利用が前提になり、回線交換方式の音声通話サービスはサポートされない。過渡期においては「CSフォールバック」という仕組みを用いて、LTEやLTE-Advancedから3Gネットワークに切り替えて電話サービスを提供するが、それに頼っている限りいつまでも古くなった3Gの設備を維持しなければならなくなる。通信キャリアにとって古い設備の維持は大きな負担になるため「いつ3Gをやめられるかは、とても重要な経営課題になってきている」(キャリア経営幹部)のである。

 回線交換であろうとVoLTEであろうと、電話は電話である。その使い勝手が大きく変わるわけではない。しかし、VoLTEサービスの投入と推進は、その後のインフラ技術の高度化競争と密接に関わってくる。キャリア各社がどれだけスムーズにVoLTEを導入し、回線交換からの移行を進められるか。どれだけユーザーにとって魅力的な料金やサービス体系を作れるかも含めて注目である。

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