メモリ価格の高騰はスマホにも影響あり? スマホを買うべきタイミングはいつか

» 2026年01月01日 10時00分 公開
[山本竜也,ITmedia]

 2025年後半から、PC向けを中心にメモリ価格が異例の急騰を見せています。日本国内の店頭価格を見ると、DDR5メモリは11月から12月にかけて一気に高騰。2025年前半には2万円台で購入できたDDR5-5600 32GB×2枚は、原稿執筆時点で10万円前後まで値上がりしています。

 あわせて、SSDの価格も高騰。既にPCメーカー各社は値上げを予告したり、BTOメーカーは一時受注を停止するなど、パニックとも呼べる状況が進行中です。

PCメーカー各社が値上げを予告

 TrendForceの報道によると、海外ではDellやLenovo、HPといった世界シェアトップクラスのメーカーが、顧客に対し15%から20%の値上げを予告しているとのことで、その影響はさらに広がっていきそうです。

 また、国内ではマウスコンピューターが2026年1月以降の価格改定を順次実施すると発表し、一部PC製品のWeb販売を一時停止する異例の措置を取っています(関連リンク)。

マウスコンピューター マウスコンピューターは注文過多により、受注を一時停止。1月以降の値上げも予告している

 マウスコンピューターだけではなく、日本のPC市場では値上げを見越した駆け込み需要により、サイコムやTSUKUMOなどのBTO各社が注文の殺到による出荷遅延を報告しています。

なぜ、価格が高騰しているのか

 メモリ価格が高騰している最大の理由は生成AIブームですが、近年のPC・スマホ需要の落ち込みも影響しているようです。

 2022年〜2023年にPC・スマホの出荷台数が世界的に落ち込み、在庫過多となったことにより各社が生産を抑制したところへ、2024年以降の生成AIブームで、AI処理に特化したHBM(高帯域幅メモリ)の需要が爆発的に増加しました。

 メモリメーカーであるSK HynixやMicronといった大手は、収益性の高いHBMの生産にリソースを集中しています(関連リンク)。これにより、PCやスマートフォンなどに使われるコンシューマー向けのDRAMが不足してきています。また、SSDに使われるNANDフラッシュメモリの生産ラインもHBM向けに割り当てられたことで、SSDも供給不足に陥り、メモリと合わせて価格高騰が発生しています。

Micron Micronは12月初め、データセンター向けのメモリとストレージに注力するため、コンシューマー授業からの撤退を発表した

 Reutersによると、DRAMのサプライヤーの平均在庫は、2024年末には13〜17週間分あったものが2025年7月には3〜8週間分に縮小し、さらに10月には2〜4週間分まで低下しているとのことです。

 メモリメーカーが新たな生産ラインを建設するには少なくとも2年かかるものの、現在の需要の逼迫(ひっぱく)が過ぎれば生産ラインが不要になる可能性もあり、新設には慎重な姿勢を示しているとも伝えられています。

スマートフォン価格への波及は避けられない

 このメモリ高騰の波は、残念ながらスマートフォン市場にも及ぶ可能性が高いです。Counterpointによると、既にスマートフォンの部材コスト(BoM:Bill of Materials)は、メモリ価格の上昇により10〜25%も上昇しているとのこと。特に影響が大きいのは、利益率が低い低価格帯のエントリーモデルで、このカテゴリーの部材コストは2025年年初から20〜30%上昇しているとしています。

 また、同社はメモリ価格が2026年第2四半期までにさらに40%上昇する可能性があるとも述べており、これに伴い部材コストは現在よりも8〜15%以上増加すると見込んでいます。

 部材コストの上昇は、当然ながら製品価格にも反映されることになりますが、低価格帯のスマートフォンは低価格であることが存在意義にもなっています。このため、製品価格に転嫁できず、低価格端末ではラインアップの縮小が始まっているとのことです。

 価格上昇だけでなく、スペックダウンの懸念も現実味を帯びてきました。CounterpointのシニアアナリストShenghao Bai氏によると「一部のモデルでは、カメラモジュールやペリスコープソリューション、ディスプレイ、オーディオコンポーネント、そしてもちろんメモリ構成といったコンポーネントのダウングレードが見られる」とのこと。また、古いコンポーネントの再利用、ポートフォリオの合理化、消費者に(利益率が高く、コストを吸収しやすい)高スペックの「Pro」モデルを推奨し、アップグレードを促すための新デザインの採用なども挙げられています。

 こうしたことを背景に、2026年のスマートフォン出荷台数は前年比で2.1%減少するとの予想もなされています。

Counterpoint Counterpointは、2026年のスマホ出荷台数は前年比で2.1%減少すると予想しています

「iPhone 18」も値上がりする?

 世界最大のスマートフォンメーカーであるAppleも、このメモリ高騰とは無縁ではありません。Appleはこれまで、Samsung、SK Hynix、Micronの3社からメモリを調達してきましたが、ここにきてSamsungへの依存度を大幅に高めているとのことです。

 韓国メディアは、Appleが「iPhone 17」シリーズに搭載されるLPDDR5Xメモリの調達において、Samsungが最大60〜70%を供給すると報じています。これは、SK HynixやMicronがHBM生産に注力したことで、年間2億台を超えるiPhoneに必要な物量を確保できるのが、Samsungしかないという事情もあるようです。Appleは複数社から調達することで、価格交渉を有利に進めていたとされています。それがSamsung1社に傾くのは、それだけ切迫した異例の事態だといえそうです。

 しかし、調達先を確保できたとしても、コストの上昇は避けられません。Appleのハイエンドモデルに搭載されるLPDDR5X(12GB)の価格は、既に2025年初めの30ドル台から70ドルまで値上がりしているとのこと。Appleは長期契約により短期的な価格変動の影響を受けにくいとされますが、この高騰が2026年も続けば、「iPhone 18」シリーズ以降の価格に何らかの影響が出ることは避けられないでしょう。

iPhone 2026年のiPhoneはさらに価格が高騰する可能性があります(写真はiPhone 17 Pro)

スマホを買うなら「今」

 メモリ価格の高騰は、PCだけでなくスマートフォン市場にも確実に波及しつつあります。そして、この状況は短期間で解決する見込みは薄いのが現状です。SamsungやMicronの新規工場稼働による供給の正常化は、早くても2027年以降と予測されており、2026年はさらなる高騰が確実視されています。

 もしスマートフォンの買い替えを検討しているのであれば、値上げ前の現行モデルや、在庫が潤沢なモデルを「今」購入するのが、最も賢明な選択肢となる可能性が高いです。特に、コスト増の影響が価格に転嫁されやすい低価格帯のモデルや、スペックダウンが懸念されるミドルレンジ以上のモデルは、早めの決断が最良の結果となる可能性が高いでしょう。

 現在利用中の端末に不満がなく、もう1〜2年は使い続けられるのなら、メモリ不足が解消するのを待ってもいいでしょう。ただし、一度上がった端末価格が、メモリ不足解消を機にすぐに値下げされる可能性は低いと考えられます。その意味では、やはり今が買い時なのかもしれません。

 残念ながら、今後1〜2年は「待てば安くなる」という従来の常識は通用しなくなりそうです。

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