自分で修理できるスマホ「Fairphone(6th Gen.)」を見てきた わずか10分で画面交換、2033年まで長期サポート

» 2026年03月10日 18時54分 公開
[佐藤颯,ITmedia]

 MWCで見つけたユニークななデバイスとして、オランダのFairphoneが展示していたスマートフォン「Fairphone(6th Gen.)」を紹介する。Fairphoneは欧州地域で根強い「修理する権利」に応えるメーカーで、最初の製品から一貫して「誰でも簡単に修理できること」をアピールしている。

fairphone Fairphone (6th Gen.)はホライゾンブラック、クラウドホワイト、フォレスト・グリーンの3色展開。ボディーはリサイクル素材のプラスチックを採用する

 Fairphone(6th Gen.)は2025年夏に発売した最新モデルだ。プロセッサにQualcommのSnapdragon 7s Gen 3を採用し、メモリは8GB、ストレージは256GBの構成となる。最大2TBのmicroSDメモリカードにも対応する。

 ディスプレイは6.3型のフルHD+解像度を持つ有機ELを備える。ピーク輝度は1400ニトで、120Hzのリフレッシュレートにも対応する。カメラは1/1.56型のソニー製センサーを採用した5000万画素と1300万画素の超広角で構成される。インカメラは3200万画素だ。

 本体には電源ボタンとは別にライムスイッチを備える。これを操作するとマインドフルネスモードとなり、電話やメールなどの最小限の機能で動作する。また、本体はIP55の防水・防塵(じん)に対応し、IEC 60058-2-31とMIL-810Hに準拠した耐衝撃機能も備える。バッテリーは4415mAhで30Wの急速充電に対応する。

fairphone 本体は6.3型とコンパクトで、重さは191gとなる
fairphone 背面はシンプルデザインだ

Fairphoneの真骨頂は分解のしやすさ わずか10分で画面の交換が可能

 Fairphoneは一貫して「誰でも簡単に修理できること」「製品のパーツや製造工程がフェアであること」をコンセプトに掲げている。

 その中でも、端末の分解のしやすさは世界的に見ても目を見張るものがある。最新のFairphone (6th Gen.) では原則として接着剤は使われておらず、12個のモジュールに分割された主要パーツはドライバーとピンセットのみで交換可能だという。

 説明員によると、これらのモジュール化された機構により、修理に慣れていない人でも1時間ほどで完了できるという。慣れている人なら画面交換は10分ほどで完了するという。交換手順も容易でバックパネルは背面のネジを2本回すだけで取り外しでき、ディスプレイの交換もネジを外す工程だけで簡単にアクセスできる。

fairphone 本体内部はかなりスッキリとしている
fairphone
fairphone 分解の実演では、バックパネルの展開からわずか10分で画面の交換を行ってみせた

 長期利用で交換する可能性が高いバッテリーも、通常のバッテリーパックの周囲に金属フレームを設けた専用設計となる。こちらもネジで固定されているため、特殊な工具不要で容易に交換できる。

 カメラのモジュールやUSB端子部も強固な両面テープやネジではなく、隙間のないように設計された本体にスッポリとはまっている。これらはコネクターのみの接続で、ピンセットなどで簡単に交換ができる。

fairphone バッテリーはリチウムポリマーだが、周囲に金属製のフレームが備わり、接着剤不要で本体に固定できる
fairphone カメラモジュールも簡単に取り外せる

 こだわりとして内部のカバーまで含めて固定している「ネジのサイズ」も全て同じものが使われている。これにより、修理に必要なドライバーは1本で完結する。ネジもトルクスとなっており、素人修理でもネジをなめにくく(溝がつぶれにくく)した。また、外装パーツや内部カバーのネジは黒で塗るなど、専門知識を持たない方が修理する際に分かりやすい配慮がなされている。

fairphone 内部のネジと外側パーツのネジで色を変えている

 説明員によると、これらの緻密なパーツ設計によって修理コストを最大57%抑えられるという。その例に、故障しやすいUSB端子は「端子部だけ」変えることが可能なので、他社製品のようにUSB端子のついた基板を丸々換える必要がない。このような部分でコストを抑えられるというのだ。

 また、2027年施行の欧州のバッテリー交換義務化の条項の中には、市販工具で本体の修理できない場合、修理部品には修理に必要な専用工具を同梱(こん)する必要がある。Fairphoneは市販されている工具で交換可能にしたことで、専用工具の同梱が不要。この分も修理コストを抑えられている。

 ハードウェアだけでなく、ソフトウェアのサポートも抜かりない。8年間にわたるOSアップデートを予定しており、2033年まで安心して利用できるとアピールする。他に珍しい点として、購入時にAndroid OSの他にもAndroidアプリとの互換性を持たせつつ、よりセキュアに運用できる「Murena /e/OS」も選択できる。

長く使える安心感こそ付加価値 日本では「技適の壁」が立ちはだかる

 Fairphone(6th Gen.)の価格は549ユーロ(約10万円)から。スペックを考えるとやや高価だが、長期のサポートを行ってくれていること、壊れても部品だけ変えれば長く使え、修理コストも安いことから、トータルで見ると合理的といえる。また、バックパネルを簡単に交換できることを生かし、カードケースやグリップを取り付けた正規オプションも用意する。異なる色に組み替えるのも楽しそうだ。

fairphone バックパネルそのものにカスタムを施せた背景には、従来の裏ブタ並みに簡単に交換できるという強みが生きている

 Fairphoneではスマートフォンに限らず、ワイヤレスイヤフォンの「Fairbuds」にも「修理する権利」を応用する。一般に分解、修理が困難といわれるワイヤレスイヤフォンながら、ユーザーが簡単にバッテリーや基板を交換できる例を見ないプロダクトも展開している。

fairphone
fairphone Fairbudsは、ユーザーが自らバッテリー交換などの修理が行えるイヤフォンだ

 そんなFairphoneは長く使え、簡単に修理できるという、普通のスマートフォンとは異なる付加価値で存在感を示している。日本ではiPhoneなどのスマートフォンをメーカーや認定修理事業者以外が修理してしまうと、電波法上では「無線機の改造」と見なされて技適が無効化されてしまうため、日本への投入は難しいと考えられる。

 一方で、スマートフォンを5年、6年と長く使うユーザーは日本でも決して珍しくない。本体を新しく買い替えるよりも、バッテリーや故障した部品などを必要な部分だけ修理して使いたいと思う方もいることだ。例えば、バッテリーやUSB端子、スピーカーやマイクといったものだけでも簡単に交換できれば大きな差別化になる。日本にもバッテリー交換からもう少し踏み込んだコンセプトを持つスマートフォンがあれば、長く使いたいというニーズに応えられるのではないだろうか。

著者プロフィール

佐藤颯

生まれはギリギリ平成ひと桁のスマホ世代。3度のメシよりスマホが好き。

スマートフォンやイヤフォンを中心としたコラムや記事を執筆。 個人サイト「はやぽんログ!」では、スマホやイヤフォンのレビュー、取材の現地レポート、各種コラムなどを発信中。

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