海外eSIMのトリファ、日本語でESTAを申請できる「入国手続きサポート」開始 通信から“旅のインフラ”へ(1/2 ページ)

» 2026年06月30日 14時40分 公開
[山本竜也,ITmedia]

 海外eSIMアプリ「トリファ」を提供するトリファが6月30日、事業戦略発表会を開き、米国の電子渡航認証(ESTA)の申請をサポートする新サービス「入国手続きサポート」を同日提供開始したと発表した。あわせて、7月1日から放映する新テレビCMも公開した。eSIMによる「通信」から、渡航手続きを含む「旅のインフラ」へと事業領域を広げる動きだ。

トリファ 左からエルフ荒川さん、トリファ代表取締役 嘉名雅俊氏、上白石萌音さん)

海外旅行の「旅マエ」に生まれた新たな障壁

 発表会ではまず、代表取締役の嘉名雅俊氏が海外旅行市場の現状を説明した。日本政府観光局(JNTO)によると、2025年の日本人出国者数は1473万人で、コロナ前の2019年比で73%まで回復した。ただ、円安が回復の重荷になっており、渡航先の顔ぶれも変わっている。JTB総合研究所の資料では、2025年の渡航先トップは韓国の365.3万人で、米国の196.7万人を抜いた。近距離・コスパ重視のアジア圏が伸びているという。

トリファ 出国者数はコロナ前の73%まで回復。渡航先は韓国がトップになり、近距離・コスパ重視になってきている

 旅行プランについても、団体ツアー中心から個人手配へと移りつつある。従来のパッケージツアーが減少し、地図アプリや翻訳、SNS、AI検索などを使い、自分で旅行を設計する人が増えているとのことだ。トリファの利用データでも、データ大容量プラン(10GB以上)を選ぶ人の比率が2024年の31%から2025年には60%へと拡大しており、通信量の多い使い方が一般化しつつある。

トリファ 従来のパッケージツアーの利用が減少し、個人手配による旅行が増えている。これに伴い、トリファでも大容量プランの比率が増加しているという

 制度面でも変化がある。7月1日から、パスポートの取得費用が引き下げられる。外務省によると、18歳以上が有効期間10年のパスポートをオンライン申請する場合、手数料はこれまでの1万5900円から8900円へと、約44%安くなる(窓口申請は9300円)。2025年5月にはオンライン申請も始まっており、パスポート取得のハードルは下がっている。

トリファ 7月1日からパスポートの取得料金が引き下げられる

 一方で、各国の入国手続きはデジタル化と厳格化が進む。米国のESTA、台湾のTWAC、韓国のe-Arrival Card、EUのETIASなど、事前のオンライン手続きを求める国が増えている。嘉名氏は、通信環境に続く新たな課題は渡航手続きだとし、旅行の準備段階=「旅マエ」が新たな障壁になりつつあると指摘した。

トリファ 各国で入国手続きのデジタル化が進んでいる

 トリファが過去2年以内に海外旅行でESTA申請を経験した353人に実施した調査では、申請時に不安や困りごとが「よくある」「たまにある」と答えた人が合計56.4%、申請に「手間がかかる」と感じた人が合計70.3%に上った。具体的には「英語の設問が多く正しく回答できているか不安だった」(47.7%)、「申請手数料以外に高額な手数料を請求された/されそうになった」(49.2%)といった声があったという。

トリファ ESTA申請時に不安や困りごとを感じた人は約56%、申請が手間を感じている人は約70%だった

「入国手続きサポート」とは パスポート撮影と日本語入力で申請

 こうした課題を受けて提供を始めたのが「入国手続きサポート」だ。米国渡航に必要なESTAの申請を、日本語で進められるサポートサービスとなる。

 特徴は大きく3つある。1つ目は入力の手軽さだ。パスポートをスマホのカメラで読み取ると、氏名や国籍、生年月日などの基本情報が申請フォームに自動反映される。住所や勤務先も日本語で入力でき、英語への変換はアプリが行う。トリファによると、入力は最短約10分で完了するとのことだ(米国税関・国境警備局の審査時間は含まない)。

 2つ目は、入力ミスを防ぐ自動チェック機能だ。ESTA申請では、回答の誤りが即時の却下につながることがある。本サービスでは送信前に、パスポートの有効期限、適格性質問への回答、住所・電話番号などの入力形式、必須項目の漏れを自動で確認する。

 3つ目は、家族や同行者の分をまとめて申請できる機能だ。代表者がグループ全員分を購入し、各メンバーが自分のスマホでパスポートの読み取りと情報入力を行える。ただし、この機能はサービス開始時点では未搭載で、近日中の対応を予定しているという。

トリファ 「入国手続きサポート」では、ESTAの申請を日本語で進められる

料金は2プラン ESTA公式料金が別途必要な点に注意

 料金プランは「シンプルプラン」と「あんしんプラン」の2種類だ。eSIMを購入する人の場合、シンプルプランは「eSIM料金に含む」形で追加負担なく利用でき、あんしんプランは1980円。eSIMを購入しない人向けには、シンプルプランが2980円、あんしんプランが3980円となる。

 なお、いずれのプランでも、米国政府へのESTA公式申請料金40.27ドルは別途必要になる。サポート料金とは別建てであり、利用者が負担する総額は「サポート料金+40.27ドル」となる。

トリファ 入国手続きサポートの料金プラン。トリファのeSIMを購入していれば、シンプルプランでは追加料金不要で利用できる

 両プランの違いは、申請のスピードとサポートの手厚さにある。米国当局への申請は、シンプルプランが72時間以内、あんしんプランが24時間以内(いずれも土日を含む)。あんしんプランには担当者による申請内容の確認と、不承認だった場合の全額返金補償が付く。一方、シンプルプランにはこの補償がなく、ESTA公式申請料金は返金の対象外となる。手厚さを求めるならあんしんプラン、コストを抑えたいならシンプルプラン、というすみ分けになる。

 申請先はあくまで米国税関・国境警備局(CBP)の公式システムであり、本サービスを使っても審査自体は通常と同じだ。つまり、このサービスは申請の手間と入力ミスのリスクを減らすものであって、承認を早めたり保証したりするものではない。

「通信」から「トリップインフラ」へ

 トリファは今回の新サービスを、事業全体の中に位置付けている。同社は2020年に創業し、2021年にeSIMアプリ「トリファ」を提供開始した。累計ダウンロード数は200万件を超え、国内の旅行用eSIMアプリでダウンロード数ナンバー1としている。約2年で売上高は15倍に伸び、2026年6月には約50億円を調達して累計調達額は63億円に達した。

トリファ トリファは累計200万ダウンロードを突破。約2年で売上高は15倍に成長したという

 同社はeSIMを起点に、海外旅行保険やVPN、空港ラウンジパスといった機能を順次追加してきた。今回のESTA対応もその一環で、「パスポートとトリファだけで旅をする未来」を掲げ、旅にまつわる手続きを1つのアプリで完結させる「トリップインフラ」の構築を目指すとしている。嘉名氏は、旅行のデジタル化がこれまでの予約・検索中心(旅ナカ)から、渡航手続きを含む準備段階(旅マエ)へ広がっていると説明した。

トリファ トリファ代表取締役の嘉名雅俊氏

 入国手続きサポートは今後、ESTAを皮切りに韓国のe-Arrival Card、台湾のTWAC、EUのETIASなどへ対象を広げる予定だという。海外展開も進めており、2024年に進出した台湾を含め、海外が売り上げ全体の約1割を占める。東アジアでのシェア1位を目指すとした。

       1|2 次のページへ

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.

アクセストップ10

2026年09月30日 更新
  1. 「iPhoneのアプリが起動しない」報告相次ぐ 端末再起動やアプリ削除で解決しない理由 (2026年09月29日)
  2. 免許証画像が漏れると何が“ヤバい”のか タイムズカーで最大約660万件の個人情報漏えいで考えられる「3つのリスク」 (2026年09月29日)
  3. 20万円超のXperiaを「買い」に変えた3週間 ソニーが「モニタープログラム」を実施した理由 (2026年09月26日)
  4. Nothingは経営危機なのか 黒住氏は日本撤退を否定、値上げは「モデルチェンジのタイミング」で (2026年09月29日)
  5. 「SuicaでJR東海エリアをまたげない」問題、ついに解消か JR東海社長「勉強している」【訂正】 (2026年09月27日)
  6. KDDI、楽天モバイルへのローミング状況を公開 9月末から大幅減 10月から新たな枠組み (2026年09月30日)
  7. 高校生の半数が感じる「SNSストレス」の要因とは? 高校生が実践する“3つの自衛術”と脱スマホのコツ (2026年09月29日)
  8. JR東日本「分かりにくい」新幹線券売機を改善へ なぜ、スマホではなく「駅での最短1分購入」を実現? (2026年07月04日)
  9. なぜドコモはahamoの大幅値上げを避けたのか? 段階制で安くなるケースと「アップセル戦略」の狙い (2026年09月26日)
  10. ソフトバンクとLINEヤフーが「Yahoo!スマホ買取」を始めた理由 スマホ高騰時代に目指す「中古の循環」 (2026年09月28日)
最新トピックスPR

過去記事カレンダー