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なぜ? Suicaが使えない「クレカ乗車・QR専用改札機」設置の意図 東京メトロに疑問をぶつけてみた

» 2026年08月30日 06時00分 公開
[金子麟太郎ITmedia]

 東京メトロが上野駅と銀座駅に期間限定で導入した「クレカ乗車・QR専用改札機」が、SNS上で大きな話題を呼んでいる。これらはクレジットカードのタッチ決済やQRコードに対応する最新の機器だ。

東京メトロ 改札機 上野駅の改札口に設置された明るい木目調デザインの専用改札機。既存機とは一線を画す落ち着いた外観が目を引く構造となっている

 観光地を控える両駅での試みは、SNS上で非常に高い関心を集めている。実際に上野駅の改札を見てきたところ、特に海外の観光客が興味を示していた。この取り組みは、自動券売機のパイオニア、高見沢サイバネティックスと共同で進める実証実験だが、従来のICカードとは仕組みが異なる決済手段を都市部の過密な改札口へ導入する試みだけに、実際の使い勝手や通過スピード、設置された通路数などについて、SNS上で戸惑いや不満の声が上がっている。

東京メトロ 改札機 上野駅改札機の手前の床に貼り付けられた掲示物。クレジットカードのタッチ決済やQRコードに対応する改札機であることを案内している

 今回の実証実験における実施駅や機器の仕様, 利用条件などの概要は次の通りだ。

実施日・駅名・改札口名

  • 銀座駅(銀座四丁目交差点改札口):7月22日始発〜
  • 上野駅(JR上野駅方面改札口):7月31日始発〜

通路数

  • 銀座駅:9通路のうち1通路
  • 上野駅:11通路のうち1通路

機器タイプとデザイン・仕様

  • 銀座駅前段(7月22日〜11月頃):白と黒基調、全長既設と同等、2枚扉
  • 銀座駅後段(2026年12月頃〜2027年2月頃):銀色系金属色、全長既設より短い「入退館ゲートタイプ」、2枚扉
  • 上野駅(7月31日〜2027年2月頃):明るい木目調、4枚扉

利用条件・制限

  • クレカタッチ決済・事前購入QRコードのみ対応
  • 「Suica」・「PASMO」等の交通系ICカードや紙のきっぷは利用不可
東京メトロ 改札機 上野駅改札機の中央に配置されたクレジットカードのタッチ決済エリア。VISAやJCBなどの主要な国際ブランドに対応している
東京メトロ 改札機 改札機の手前下部に配置されたQRコード読み取り用センサー部。スマホに表示させたデジタルチケットをかざして使用する

「交通系ICカードが一切使えない」――利用者の間で大きな疑問

 特に利用者の間で大きな疑問となっているのが、普段の生活で定着している交通系ICカードが一切使えない点だ。SuicaやPASMOをタッチしても改札扉が開かない専用通路となっており、従来型の紙のきっぷも利用できない。なぜ誰もが毎日当たり前に使う便利なICカードをあえて完全に排除した不便な仕様にしたのか、疑問に思う乗客は非常に多く、SNS上でも誤進入への心配などを含めて不満の声が根強く挙がっている。

東京メトロ 改札機 改札機の上に設置された案内スタンド。「ICカード きっぷ 使えません」と大きな文字で明確に注意喚起がなされている
東京メトロ 改札機 頭上に掲示された案内表示

 もう1つの不満は、QRコードを用いた乗車券の購入手順だ。利用客は乗車前にスマートフォンで専用サイトにアクセスし、クレジットカードなどを用いてデジタルチケットを事前購入しておく必要がある。駅の券売機で急にQRきっぷを買うことができない仕様になっているため、改札の手前でいちいちスマホを操作して決済を行うのは非常に面倒で、急いでいるときに全く役に立たないと不便さを感じる声は少なくない。

スマートフォンでQR乗車券を事前購入させる狙い

 こうしたSNS上の疑問や懸念、戸惑いの声を、東京地下鉄(東京メトロ)広報に直接ぶつけてみた。特に多くの声が寄せられたのが、QR乗車券をスマートフォンによる事前購入に限定している点についてだ。

 この点に関して、同社は「QRコードを活用した乗車サービスは、主に国内外からの観光を目的としたお客さまをターゲット層としています。券売機に立ち寄ることなく、お持ちのスマートフォンで完結する快適な移動を体験いただけるよう、QR乗車券の事前購入をお勧めしております。磁気のお得な乗車券も券売機で購入いただけます」と語り、券売機に並ぶ手間のない移動の実現が狙いだと説明した。

 次に、多くの乗客が疑問視する「あえてSuicaやPASMOを排除した専用改札にした理由」についてだ。これについて同社は、「処理速度の異なるサービスごと(具体的にはICと磁気、クレカとQR)に通路を分けることで、改札口全体でお客さまがスムーズに各改札機を通過できるかを確認するためです」と回答した。

 専用の通路を物理的に分けることで、不慣れな乗客が立ち止まっても全体の流れを阻害せず、それぞれが混乱することなくスムーズに通過できるかを検証する。同時に、既存のICカード客の混入を防ぎ、各決済方法の正確な利用データを純粋に取得する目的もある。全体の人の流れを安全かつ円滑に保ちながら実証実験を行うための設計だ。

木目調や白黒……異なる見た目の改札機 デザイン意図は

 上野駅の明るい木目調で4枚扉を備えたタイプや、銀座駅の白黒を基調とした2枚扉のタイプなど、駅ごとに大きく異なる外観デザインの仕様についても聞いた。同社によると、通常の改札機とは全く異なる専用機であることが、乗客にどの程度視覚的に認識されるか、そのデザインによる誤進入防止の視認効果を検証する狙いがあるという。

東京メトロ 改札機 既存の交通系ICカード専用改札機と並んで設置された専用改札機。色やデザインの違いで識別できるよう配慮されている
東京メトロ 改札機 従来の改札機通路(写真=左)と新設された専用改札機通路(写真=右)の全景。通路ごとの役割の違いが視覚的にも分かるように配置されている

 また、銀座駅の2枚扉と上野駅の4枚扉という構造の違いについても明確な技術的意図がある。構造がシンプルな2枚扉は、内部の可動部品が少なく故障しにくいため、保守性が極めて高いという仮説のもとで設計された。今回の実証実験では、双方向通行時の扉の動作制御や、実際の故障率、さらには日々のメンテナンス効率を、既存の4枚扉のタイプと詳細に比較して多角的に検証していく方針だ。

 銀座駅では、12月頃から「入退館ゲートタイプ」と呼ばれる全く新しい形状の改札機へ入れ替える予定だ。これは全長が既設機より短く、銀色系金属色を採用したよりコンパクトな設計だ。これにより、設置スペースが限られる改札口での人の流れをどう制御できるか、ハードウェアの観点からも本格的な検証が行われる。

東京メトロ 改札機 改札機の種類。上野駅は木目調のものだ。一方、銀座駅は上野駅に設置の改札とは異なる他、仕様の違う2種類のタイプを採用し設置している

 SNS上では読み取り速度の遅さや混雑時の渋滞を懸念する厳しい不満の声もある。確かに実際に試してみると、QRと読み取り部との間に一定の距離(目安としては数センチ程度)ができるよう調整しなければならず、Suicaと同じ感覚でかざすと読み取ってもらえない。QRの場合は向きや方向は気にしなくてもいいが、あくまで読み取り部から一定の距離でQRを読みに行かなければならず、例えばスマートフォンの画面が汚れていたり、指がQR全体をおおってしまっていたりすると、当然読み取れない。

 東京地下鉄広報は、「クレカ乗車、QR乗車券について、読み取り時の反応や混雑を懸念される声があることは承知しております。今回の取り組みは実際の駅環境におけるお客さまのご利用状況や改札機の導線を改めて確認する機会でもあると考え、改札口全体でお客さまがスムーズに各改札機を通過できるように検証をしていきます」と答えた。

東京メトロ 改札機 スマートフォンを読取部にかざして改札を通過する様子。実際の利用シーンを想定した読み取り感度の検証が進められている

「運用上のあらゆる課題を洗い出す」――実証実験は2027年2月頃まで継続

 実証実験は2027年2月頃まで継続され、運用上のあらゆる課題を洗い出す。スマホ事前購入限定の専用改札は一見不便に感じられるかもしれない。しかし、この丁寧な検証こそが、将来の改札口をより使いやすく、誰にとっても快適な空間にするための不可欠なステップだ。将来的な本格導入やサービス拡充へつながるか、今後の決済インフラの進化に期待したい。

おことわり

  • ネット上の意見は、文脈が変わらない範囲で体裁を整えています
  • 改札機および駅構内掲示物に関する画像は、東京地下鉄の許可を得た上で広報立ち会いのもと撮影しております

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