東京の臨海副都心エリア、新橋駅から豊洲駅までを結び、各種商業施設やイベント会場への重要なアクセスを担う交通インフラである「ゆりかもめ」(東京臨海新交通臨海線)。各駅の券売機で販売している磁気乗車券について、QRコードを印字した乗車券へ切り替えている。7月15日、駅へ行った人が駅の改札機がQR切符に対応しているとの内容をSNS上で発信し、切り替わりについてさまざまな意見が飛び交った。
ゆりかもめによると、2026年5月28日の夜間から順次、各駅の自動改札機を更新する作業が進められてきた。2026年9月中旬までに全改札機をデジタル乗車券対応機へと完全に入れ替える計画だという。
この計画の一環として、2026年7月15日の始発より、各駅の券売機で発売している普通乗車券について、従来の磁気乗車券からQRコードを印字した「QR乗車券」への切り替えが実施された。今回のシステム変更により、これまでの自動改札機に切符を直接投入する方式から、乗車券のQR印字面を改札機に設置されたQRリーダーにかざして通過する方式へと、利用方法が根本的に変わる。
これに伴い、各駅の券売機における磁気乗車券の発売は完全に終了となった。ただし、発売終了前にすでに購入されている各種磁気乗車券については、それぞれの有効期限内であれば引き続き利用することが可能だ。
また、資源を有効活用するための過渡期的な取り組みとして、切り替え後もしばらくの間は、旧用紙(従来の裏面が黒い磁気乗車券用の用紙)にQRコードが印字されたQR乗車券が発行される場合があるとのことである。この場合であっても、磁気乗車券として改札機の投入口に入れることはできず、必ずQRリーダーにかざして利用する必要がある。
長年親しまれてきた磁気乗車券を廃止し、QR乗車券へとシステムを全面的に移行する目的として、明確な3つのメリットが掲げられている。
第一のメリットは「お客さまサービスの向上」だ。従来の磁気乗車券を使用する自動改札機は、切符を機械の内部に吸い込み、ローラーで搬送させて情報を読み書きするという非常に複雑な仕組みを持っていた。そのため、切符が折れ曲がっていたり、異物が混入したりすると、内部で詰まってしまう「券づまり」などの機械的なトラブルが発生しやすくなる。QR乗車券への移行によって、この切符の投入機構そのものが不要となるため、券づまり等の物理的なトラブルを大幅に低減させることができ、利用者がこれまで以上に円滑に改札を通過することが可能となる。
第二のメリットは「環境負荷の低減」だ。従来発行されていた磁気乗車券の裏面には、磁気情報を記録するためにリサイクルが極めて難しい金属成分を含む特殊な用紙が使用されていた。QR乗車券になることで、単に紙の表面にQRコードを印刷するだけで済むため、金属を含まずリサイクルが容易な用紙への切り替えが可能になる。さらに、ゆりかもめによると将来的には繰り返し利用が可能な媒体の活用も見込まれており、エコロジーの観点から環境負荷の低減を大きく図ることができる。
第三のメリットは「持続可能な設備・システムへの移行」だ。複雑な磁気券対応機構を持つ従来の改札機に比べ、QRコードを読み取るカメラやセンサーを主体としたデジタル対応機器は、内部の構造が非常にシンプルになる。こうした可動部の少ないシンプルな機器への移行を進めることで、故障のリスクを格段に下げ、将来にわたる保守・点検や部品交換、機材更新の効率化を図ることができる。事業者にとって、メンテナンスにかかる負担を軽減し、持続可能な交通インフラを構築していくことは不可欠な要素となっている。
新しいシステムが稼働したということで、筆者も実際にゆりかもめの駅に足を運び、QR乗車券を利用してみた。
まず、QR切符の購入方法自体はこれまでと全く同じで、駅に設置されている従来の券売機でスムーズに購入することができる。現金を入れて行き先を選ぶというプロセスには一切の変更がないため、買い方に戸惑うことはない。
しかし、いざ改札口へ行き、発券された紙に印刷されたQRコードを読み取り機にかざすと、SuicaやモバイルSuicaといった交通系ICカードの「タッチ&ゴー」の感覚に比べて、読み取りに若干の時間がかかると感じた。ほんのわずかなタイムラグだが、通勤やイベント時などで急いでいる状況下では、後から来た人が少しぴりついた様子を見せる場面もあった。ネット上の意見にも「QRコードの読み取り時間がどうなるか」といった懸念の声があったが、やはりICカードほどの瞬時な反応は期待できないようだ。
とはいえ、通過に数分といった長い時間がかかるわけではない。スムーズに通過するためのコツとして、QRコードが正確に読み取れる距離や角度を意識してリーダーに近づけることと、切符を持つ際に指がQRコードにかかって覆い隠してしまわないように気を付けることが重要だ。
これらの点にさえ注意すれば、問題なくゲートは開く。最初は「投入」から「かざす」という動作への変更に戸惑うかもしれないが、慣れてしまえば大きなストレスなく利用できるのではないかと感じた。
この大規模なシステム変更に対し、ネット上では期待や不安などさまざまな意見が飛び交っている。交通系インフラの変更は多くの人々の日常に直結するため、非常に高い関心が寄せられている。
発券される切符のデザインやサイズに関しては、好意的な意見が見られた。
「ゆりかもめのQR切符が、今まで通りの小さいサイズでなんだかうれしいです。QR化すると大抵大きいサイズになってしまいますからね。たくさん集めようと思います」
「磁気券の地紋にQRが印字されたエドモンソン券(従来の小さな切符)も欲しいので、週末にまたゆりかもめの全駅下車にチャレンジしようと思います」
鉄道ファンや切符を集めている方々にとっては、券売機から発券される紙のQR乗車券が、従来の小さな切符のサイズのまま提供されている点が喜ばれているようだ。
先行導入事例を思い浮かべる声も見られた。
「ゆりかもめは、今日から切符がQRコードになるのですね。まるで、那覇のゆいレールのようです」
沖縄の都市モノレール「ゆいレール」などでは早くからQR乗車券が導入されていたため、そちらを想起する利用者も一定数いるようだ。中にはゆいレールにゆりかもめがようやく追い付いたとの意見もあった。
一方で、スマートフォンのシステムやQR切符特有の使い勝手に対する懸念や不満の声も挙がっている。
「ゆりかもめのフリー切符(QR)は、毎回リロードを挟む必要があるため本当に不便です」
「個人のスマートフォンを利用するシステムは、社会的弱者が使えない切符であり、納得できないものです。購入や受け取りの段階で、個人情報を登録させられます。出かける時間は遅れますし、面倒な上に使い勝手が悪いです。傲慢なQR式から、紙などの切符へ戻してほしいです」
「駅に着いてQRで乗る際、万が一スマートフォンの電源が切れて改札を出られなくなったら大変なので、紙の切符を発券しようとしたところ、いつものやり方で発券できずに焦りました」
このように、モバイル端末を利用したサービスについては、通信状況による画面リロードの手間や、会員登録の手間、そしてバッテリー切れのリスクなど、デジタル化ならではの課題を感じている利用者がいる。
さらに、現場での混乱を懸念する意見もあった。
「当面の間は資源有効活用という意味で、磁気切符の紙にQRが印字された切符が発券される駅もありますが、QRをかざして使うのが前提ですので、絶対に投入口には入れないでくださいね」
「切符をQRコード化する方向のようで、改札の準備も進んでいるみたいですが、大丈夫でしょうか。QRコードを印刷した紙を従来の切符投入口に無理やり入れようとする方や、それを注意されて怒る方が大量に発生しそうです」
ゆりかもめの案内にもあった通り、従来の切符と同じサイズや旧用紙で発券される場合があるため、無意識のうちに改札機の投入口に切符を差し込もうとしてしまう乗客が発生することを心配する声が多く見受けられる。
ゆりかもめのQR乗車券への全面移行は、機械のメンテナンスコストの削減や環境保全といった明確なメリットを追求したものであり、多様化する乗客のニーズに応え、持続可能な交通インフラを維持するための重要な進化といえる。
筆者が実際に体験した通り、QRの読み取り速度といった細かい使い勝手の部分や、デジタル機器に依存する不安、旧様式の切符の誤投入といった課題は存在する。しかし、ゆりかもめが掲げる「お客さまサービスの向上」「環境負荷の低減」「持続可能な設備・システムへの移行」という3つの大きな目的を果たすための欠かせないステップとなる。今後は「切符を投入する」から「切符をかざす」という新しい動作が、利用者間にどれだけ早く定着していくかが成功の鍵を握るだろう。
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