新たな10年で変わるモバイルビジネス──NTTドコモ 辻村氏に聞く(後編):新春インタビュー(2/2 ページ)
iモードの誕生から10年が経過し、“次の10年”へ向けた戦略が問われる2010年。NTTドコモの代表取締役副社長 辻村清行氏に、2010年以降の鍵となる技術や取り組み、そしてドコモの方向性を聞いた。
次の10年は「LTE」「リアル連携」「グローバル」が鍵
ITmedia いよいよ2010年になり、新たな10年期が始まります。これまでの10年は1999年のiモード開始を受けた「iモードの時代」だったわけですが、次の10年はどのような時代になるとお考えですか。またモバイルIT業界はどのような姿勢で、この新たな時代を迎えるのでしょうか。
辻村氏 いくつか重要な視点があります。
まず、1つは“ネットワークを流れる情報量が爆発的に増えている”ことです。コンテンツやコミュニケーションのリッチ化が進んでおり、トラフィックの指数関数的な伸びは止められません。ですから、この爆発的に増えるデータ通信量をしっかりと受け止めるネットワークや周波数管理が必要で、それを実現するのがLTEです。LTEによるモバイル通信インフラの強化は不可避で、ドコモはこれを確実に行います。そして、LTEの立ち上げによって、クラウド型サービスやコンテンツサービスの世界観が大きく変わり、(モバイルインターネットのビジネスやサービスは)一歩先に行くことになるでしょう。
2つめは“リアルとの連携”です。おサイフケータイやiコンシェルはまさに代表的なものですが、今後(のモバイルビジネス)はリアルの事業者との連携が重要になっていきます。それにより広義のAR分野が開拓され、実空間とネットの世界が密接に結合していきます。これは2010年以降のモバイルビジネスにおける大きな特長になるでしょう。
そして3つめが“グローバリゼーション”ですね。例えばドコモでは、フランスやインドでiチャネルを提供したり、欧州で電子コミックの事業に取り組むなど、海外との連動を重視した施策をとっています。これからは日本で培ったモバイルビジネスの要素を、グローバルに展開できるチャンスなのです。
そこではiチャネルのようなシンプルなものもあれば、将来的にはおサイフケータイやiコンシェルといったものも考えられます。海外のスマートフォンやモバイルフォンの市場構造は、日本市場に近づいてきているのです。ですから、今まで日本でやってきた取り組みを、先行優位性を捉えて、その上で構築したビジネスやサービスの「どれを海外で展開していくか」という考え方が重要になってきます。
ITmedia 日本の先行性を海外市場とどのように連動させるのか。その手綱を取ることが重要になりそうですね。
辻村氏 そうです。そこで重要なのは、日本のモバイル業界はこの10年で(独自の発展という)先行優位性を持っているということです。そのノウハウを、中国やインド、台湾をはじめとするアジア諸国や、欧米市場で、現地のパイプ(通信インフラや端末)を使って現地のビジネスとして提供する。コンテンツやアプリケーションの海外展開は十分に可能性がありますし、ドコモとしてもそれをサポートしていきたいと考えています。
コンテンツやモバイルサービスの先行性や優位性は明らかなので、日本のモバイルIT業界は海外市場と向き合う姿勢が大切です。この(海外進出の)動きをドコモも支援していきます。
(完)
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