こてこてのガラスマとは違う、スマホへの障壁をなくす“最高の”Android「Xperia acro」:開発陣に聞く「Xperia acro」(2/2 ページ)
「Xperia arc」と同等の機能にワンセグ、FeliCa、赤外線通信という日本向け機能を搭載し、隙のないモデルに仕上がった「Xperia acro」。arcと双璧を成すacroへのこだわりとは。日本市場、そしてスマートフォンに対するソニー・エリクソンの考えとは。
IS11SのEメール未対応は「苦汁の決断」
Xperia acroは、各社が発表した夏モデルのスマートフォンの中でも、機能とデザインのバランスがよく取れたモデルだといえる。ただ、au向けのIS11SがEメールに対応しておらず、9月下旬以降のアップデートで対応予定となっているのは気になる点だ。携帯電話の基本的なコミュニケーション機能であるEメールに対応していないことは、購入をためらう原因になりかねない。なぜこうした“不完全な状態”でacroを発売するに至ったのか。
新田氏は「苦汁の決断でした」と話す。「6月末にいち早くXperia acroをお客様に届けるタイミングを重視した結果です。お客様が受け入れてくれるところを社内で調整し、KDDIさんにもご協力いただきました。Eメールにはいち早く対応できるよう、社内一丸となって頑張っているところです」(新田氏)
シャープ製「IS03」「IS05」や富士通東芝製「REGZA Phone IS04」は発売当初からEメールに対応しているだけに、「どれだけ日本市場に向けて全精力を投入するか」(新田氏)と頭を悩ませたのは想像に難くない。今回、IS11SをEメール未対応の状態で発売できたのは、ソフトウェアアップデートで対応できることがあらかじめ分かっていたことが大きい。「Androidが登場してから、お客様に提供する形が変わってきました。Xperiaも3回アップデートしていますし、後追いでもお客様に新しい体験を提供できます」と新田氏は話す。
また、キャリアのISPにひもづくメールは日本独特のサービスでもあり、海外では電話番号でやり取りをするSMSが主流だ。7月13日からは日本でもSMSのキャリア相互接続が始まったほか、最近はTwitterやFacebookなどSNSでのコミュニケーションも活発になっており、キャリアメールが唯一の連絡手段ではなくなりつつある。「Eメール代わりにコメントを入れるなど、SNSの中で友達とのやり取りをしている人も多いでしょう。1対1のコミュニケーションのあり方が変わってきている感はありますね」(安達氏)
au向け独自アプリをダウンロードしたり、「auかんたん決済」でアプリが購入できる「au one Market」は、「オープンソースのAndroidのコアな部分に手を入れ、au one Marketに対応するインタフェースやセキュリティの仕組みを作り込まないといけない」(新田氏)ことから、こちらも9月下旬以降の対応になる。au one ナビウォークなどの独自アプリも、au one Marketに対応すれば使えるようになる見込み。LISMO関連のサービスも、確定はしていないが9月下旬以降の対応の向けて検討しているという。
スマートフォンの本質は海外も日本も同じ
グローバルで商品を展開するソニー・エリクソンにとって、今後日本市場向けにどこまでカスタマイズするかは悩ましい問題に思えるが、安達氏は「Webとの親和性やアプリによるカスタマイズなど、スマートフォンの本質は海外モデルも日本モデルも同じ」と考える。
日本では、これまでケータイ向けに提供されていたサービスをスマートフォンに移植する作業――俗に言う「ガラスマ化」が行われているが、ソニー・エリクソンのスタンスは少し異なる。「ユーザーが変えられないハードウェアについてはバリエーションを用意しますが、アプリやサービスは、端末のスペックとは別のエコシステムの中でグローバルで動いています」と安達氏が話すとおり、ソフトやアプリの過度な作り込みは行わない方針だ。「実は、ソニエリ独自のプリインアプリも少ないんですよ」(安達氏)。このあたりは、アドレス帳やメールをケータイと同様の操作性になるよう作り込み、独自アプリやウィジェットを多数用意しているシャープ製のスマートフォン(AQUOS PHONEなど)とは対照的で興味深い。
「もちろん、市場の声に応えて、スペック表で×が付くところをなくさないとは思いますが、我々はAndroidで体験できる本質的な価値に力点を置いています。スペック競争でエンジニアが疲弊することは防ぎたいですね(笑)」(安達氏)
Sony Ericsson Storeも好評
ソニー・エリクソンは2011年4月1日に「Sony Ericsson Store」をオープンし、Xperiaシリーズなどで利用できるスマートフォンの周辺機器に販売にも力を入れている。「グローバルメーカーのメリットとして多種多様な製品を海外で発売しているので、その中からユニークなものを提供し、Xperiaの良さがより引き立つようなものをコラボレートしていきたいですね」(安達氏)
Sony Ericsson Storeの反響は上々だという。メディアスピーカースタンドやLiveView MN800のほか、Bluetoothヘッドセットも人気があるそうだ。特にLiveViewは海外で発売されていた製品を購入して使っている人も多かったようで、今回、晴れて日本向け製品が発売された。6月に発表された「LiveDock」や「LiveSound」などの製品も日本で登場することが期待される。「日本の安全基準をクリアしつつ商品クオリティがキープできれば、グローバルと同時展開するといったことも十分考えられます」(安達氏)
AndroidのUIやパフォーマンスをいち早く届けたい
Xperia acroの登場で、日本人にとっては1つの「完成形」が出来上がったといえる。Xperiaシリーズは、今後どのように進化していくのだろうか。
スペック面では、夏モデルではXperia acroのライバル商品とみられる「GALAXY S II SC-02C」がデュアルコアCPUを搭載していることもあり、このあたりの進化も期待される。「業界の進化に遅れないように開発していきたいと思っています」(安達氏)
arcやacroのスペックで不満が残るのは内蔵メモリの少なさだ。ROMが1Gバイト、使用可能なストレージが300Mバイト程度というのは、microSDに移せないアプリが多いことを考えると物足りない。多数のアプリを入れてカスタマイズをするというAndroidの魅力が半減しないよう、もう少し大きな容量を確保してほしいと思う。
このほか、日本向けカスタマイズの1つに「防水」も挙げられる。海外ではバスタブに長時間浸かる習慣が日本ほどはないので、「お風呂でケータイを使いたい」という要望は日本ならではだろう(G'zOneのようにアウトドアでの利用シーンも想定されるが)。実際、Sony Ericssonが「Xperia ray」とともに6月に発表した防水対応のAndroidスマートフォン「Xperia active」は、日本での発売予定は(現時点では)ないものの、「これを日本で発売してほしい!」という声が多く見られた。acroについても防水をサポートするかは議論したそうだが、今回は見送った。ただ、「今後に向けて検討はしている」(安達氏)とのことなので期待したい。
タブレットについてはソニーが「Sony Tablet」を発表済みだが、ソニー・エリクソンとしてタブレットを出す意向はあるのだろうか。安達氏に聞いたところ「出す」「出さない」も含めて明言は避けたが、「モバイルの世界でどういった体験を与えられるか。タブレットの市場が拡大していることは分かっているので、タブレットのサイズ感など、いろいろ考えているところです」とのこと。これまでのXperiaシリーズとはまた違った体験が得られる製品の登場にも期待したい。
使い勝手を左右するUIの今後はどうか。「Android自体は進化していくので、Mediascapeなどのアプリを載せたこともありましたが、結局はバランスだと思います。日本市場に特化したようなUIも、絶対に載せないとは言えませんが、進化したAndroidのUIやパフォーマンスをいち早く届けられるよう開発していきます。もちろん、グローバルで開発をしているからといって、日本ユーザーの声や機能を諦めるわけではありません。その市場や土地に合うものを載せていきたいですね」(新田氏)
今回のXperia acroについては「安心してお買い求めいただけるものが完成しました」と安達氏は手応えを感じている。「お客様がここ2、3年、日本のケータイに対して関心を失っていた時期があったのではと思います。それに対してスマートフォンがブームを再熱させ、ソニエリがトップランナーを走っているという自負があります。製品に対していろいろな評価をいただくことで、グローバルを含む次のXperiaに昇華させていきたいですし、デザインやUI、使いやすさは継続して発展させたいです。今後も信頼いただけるブランドを作っていきたいと思います」(安達氏)
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